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075 勇者クライシス① 〜勇者陣営〜

床に散乱している食事。

何故か彼方此方に飛んでいる椅子


「ほら、もう一度言ってみてくださいよ」


「ご、ごごごめんさいもう言いません」


知らない男達3人に何故か床に這いつくばっている宮下。そして宮下に寄り添うハーレム達。それ以外の生徒は食堂の隅へと避難している。


「「「「「「………………」」」」」」


和秋達が食堂の扉を開ければ、そこにはカオスな世界が広がっていた。


この惨事をみて一瞬食堂に入るのを躊躇ったものの、他の生徒が手招きしているのを見て和秋達はそちらに向かう。


「おい……何の騒ぎだこれは」


「いや、俺達にも何が何だかさっぱりでさ…10分くらい前にあの3人組が急に食堂に乗り込んできてーー


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ーーーーバァン


凄い音を立てて開いた扉に食堂にいた生徒達は注目する。


「食事中に訪れた事を詫びよう。この中に勇者カケル=ミヤシタという者がいると聞いた!」


堂々と食堂に入ってきたのは緑の髪の青年だった。


「いや、本当に食事中にすみません」


「少し時間をとるだけですので」


その後ろに矢鱈と低姿勢の金髪の青年が2人後に続く。


「もう一度聞く、カケル=ミヤシタは誰だ」


あまりの急な事に生徒達が固まっていたが、早く行け、とでも言うように段々と生徒達の視線が宮下に集まった。


「…俺がカケル=ミヤシタです」


その視線に居た堪れなくなった宮下は食事を中断して席を立ち、男達の下へ歩く。


「か、かける!」


「ちょっと待ちなさいよ!」


「……、………!!」


ハーレム達が声をかけたが普段と違って全く意に返さない宮下に生徒達は訝しんだものの、今はただ静かに成り行きを見守っていた。


「……何でしょうか?」


宮下が緊張した面持ちで3人組に問いかける。彼等はジッとカケルを見つめていたが、金の短髪の青年が溜息をついて頭を横に振る。


「…全くを以って駄目ですね。話になりません」


「そうか……俺も同意見だが、クリストフはどうだ?」


緑の髪の青年がもう1人の金髪の青年に問いかけると、彼は宮下の全身を眉を顰めながら隈なく観察して唸り出した。


「うぅ〜ん……ほぉほぉ。ウムムム……ム?」


顎に指を添えながら首を傾げる状態で彼は停止した。

そして何を思ったのか少し驚いた顔をした後、宮下に向けて意味深な笑顔を向ける。


「確かに魔力量は一級品ですが他がてんで駄目ですね、身体がまるでついていっていませんわ〜。もっと身体も鍛えないと!」


「やはりそう見えるか」


「………でも」


3人の酷評に宮下は硬直する。

今迄散々王宮の人間に「吞み込みが速い」「筋が良い」とは褒め称えられてきたので愕然とする。目の前にいる青年の笑顔が直視出来なくて宮下は思わず俯向く。


「でも、俺は案外良いと思いますよ?」


その声に宮下は顔を勢いよく上げる。他の2人も意外そうな面持ちで彼を見た。


「彼はそのうち大きく大成する器だと思いますけどね。本質自体はとても良いんですよ……けれど数ヶ月間、王宮の一流の方々に指導して貰っていたのにその伸びしろが良くない……カケル=ミヤシタ、あんた何故だか分かる?」


「え……?」


至近距離で見つめられ、宮下は言葉に詰まる。彼の眼がギラギラと輝き宮下だけをまっすぐ見つめる。


「わ、分からなーー」


「嘘ですね」


全てを見透かされそうな青年の眼に気圧されながらも宮下は自分の本心を告げるが、途中でそれは質問者本人に遮られてしまった。


「一つ、あんたに助言しときます。偽ったものじゃぁ所詮偽りの力しか手に入りませんよ」


驚いたような、ショックした顔を見ると青年は漸く宮下から離れて悪びれもなく、出過ぎた真似をしました、と言って下がる。


「……まぁお前が言うのなら大丈夫だろう」


「確かに…まぁとても心配で頼りないことには変わりないですけどね」


「うわぁ僕ってば凄く信用されてるんですねー」


放置され未だに固まっている宮下は談笑し始めた3人に段々と怒りが込み上げてくるのが分かった。いきなり呼びつけられたと思えばダメ出しを喰らい、言いたいだけ言って放置された事に対し決して表には出さない宮下の尊大なプライドがミシミシと音を立てる。

更に助言の内容が宮下をより一層苛立たせたこともあり、彼はとてもじゃないが冷静ではいられなかった。


「人のことよく知らないくせによくそんな事が言えますね。というか、貴方達誰ですか?いくらなんでも非常識ですよ」


「あ"?」


ドスの効いた声とともに宮下の顔面スレスレを椅子が勢い良く舞った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……要するにあの3人組が宮下に喧嘩うってきたってことだな?」


和秋は久しぶりに宮下に同情する。

宮下が珍しくまともな事を言った、と驚きさえもした。


「あ〜、第三者からしてみるとそうだなぁ……お陰でこの有様だよ」


和秋達が入ってくるまでの出来事を話し、ハハハ…、と乾いた笑いを零すのはクラスを代表する馬鹿その1の小川である。


「で、どうすんだよ」


和秋が宮下達を指差して言う。

宮下の情けない顔を見るのも面白いが逆に哀れに思えてきて仕方がない。


「いや、どうするって言われてもなぁ…つかあの間に入って矛先がこっちに向けられると思うと誰も止めに行こうと思わないんだよ」


被害の集中砲火を受けている宮下を見て無理無理、と小川は首を振る。


「ん?どうなんだ?」


「いやだから…」


「僕は本当の事しかいってないですよー?」


「話しを聞いてーー」


「漸く話して下さるのですか。なら早く話してください、時間の無駄です」


「え、いや……」


和秋の耳にこんなやり取りが聞こえ、思わず震え上がった。


「……確かにあれは関わりたくないな」


「な?そうだろ?」


何だか見ていて居た堪れなくなるような光景に生徒達は何も言えなくなる。誰か助けてやれよ、と互いに視線を交わし合うもあの口振りからしてあの3人組はかなりの実力者。交戦する事になったら勝てる保証等どこにもない。


「良い加減にしろ!」


「!!」


声の聞こえてきた宮下達の方に目を向けると生徒会長の設楽が宮下を庇うようにして3人組と対峙していた。


「翔に寄ってたかって……恥ずかしくはないのか?!」


「そうは言われても……僕達は唯カケル=ミヤシタと一緒に話をしているだけですので、部外者には手を出さないでいただきたい」


「……?!っこの!!」


金の短髪の青年がそう言い返すと部外者と言われて頭にきたのか設楽が青年に向かって手を振り上げた。


「おいおいおいおいっ!」


和秋はそれを止めようと思うが、走っても設楽まで距離が間に合わず青年の頬にその鋭い平手が触れる方が先だろう。

青年は平手打ちされると分かっていても何故か無表情のままそこから動かない。

そのことも和秋をまた焦らせた。


ーいくら手を出してきたのはあっちだからって、今反撃したら余計煽るだけだ!


設楽の手が青年の頬に炸裂しようとするーーが、その手は届くことは叶わず寸でのところで宮下の手によって止められていた。


「……え?翔?」


「…………」


困惑する設楽に宮下は何も言わない。

青年達3人は唯無表情で宮下を見ている。


ーーバン


その時、食堂の扉が勢いよく開けられた。

側にリベルを控えさせて息を切らしながら入ってきたローラは、食堂の惨状を見て一瞬無表情になるものの、段々と般若の形相になりそれが青年3人組に向けられる。


「何をなさっているのですか兄様!!」


ローラはそう思い切り叫んだ。


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