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073 ④

73話です。

よろしくお願いします。

 

 夕暮れ時、王都の中心にある王城に向かう3つの影があった。

 彼等は全員、黒くて長いローブを身に纏っている。


「今日は良いことしましたねー良かった良かった」


 と、少し長い金髪を下の方で一つに纏めて笑っている青年。


「いや、僕達実際何もしてないですよね。子供を保護しようとしただけなのにあの女性に警戒されて結局追い返されましたし」


 と、金の短髪に眼鏡をかけている利発そうな顔つきの青年。


「……おい、もうすぐで城に着くからといって気を緩めるな」


 と、端整な顔を顰めて他の2人に呆れながらも注意を促す緑の髪の青年。


「とゆーか、態々王城まで歩く必要なかったんじゃないですか?学園からかなり遠いじゃないですかー」


「僕もそう思います。いくら鍛錬という名目とはいえ……馬車の御者を追い返すのは些か軽率かつ短絡過ぎだったのでは?」


 金髪の二人は言葉の節々に不満をこぼしながら緑の髪の青年に言う。

 それもその筈、3人ーー正確には1人が日頃の鍛錬と市井の視察という名目で、王都の隅に位置している学園から王城までの距離を徒歩で移動するために迎えに来た馬車の御者を追い返してしまったのである。

 眼鏡をかけた金髪の青年が懐から懐中時計を取り出す。短い針はあともう少しでⅤの文字を指そうとしているところを確認すると疲れたように溜息をつく。

 彼等が学園を出発したのが朝の10時頃。

 実質彼等は昼食の時間帯を除けば6時間以上も歩き続けていたということになる。


「武術のラジット先生も仰っていただろう、体力づくりは基本だ、と。それに街中で襲われた時の実戦を経験してみたかったのだが……ふむ、流石王都といったところか。身なりの良い服装をしていても襲ってくることはなかったな。所詮憶病者共か、非常につまらん」


「本音はそちらで視察が建前だったのですね……それに、明らかに貴族然としているような人間を白昼堂々と襲うような命知らずはいないと思いますが?」


「だからこそこのローブだろう?」


「胸元のブローチを見たら誰だって分かると思いますよ?」


「……そうなのか?」


 緑の髪の青年はどうやら市井の事について疎いようである。王国中で限られた者しか持つ事ができないこの光り輝く貴重な宝石は、彼にとって見飽きた路傍の石と同じなのだ。


「そうなんですよ……それにしても、勇者凱旋パレードの為だけに早く帰還命令を出すとは…休暇に入ってからでも良かったのでは?」


「そんなパレードよりも学業を優先した方が有意義だと思いますよー。本当、時間の無駄無駄」


「最もだな」


 "学生の本分は勉強である"と、3人はそこまで考えてはいなかったが、学園を卒業すればもう自由な時間はない。残された貴重な学園生活を思う存分楽しむことが今の彼等の目的であり、決して勇者に会うことではないのだ。

 そういう境遇の子供達が多いからこそ"生徒の自主性を重んじる"ことが学園の方針なのだろう。


 彼等が通っている学園は全寮制で在学している3年間は同室者と過ごすことになっている。基本、貴族と市民の差別はされていないがそもそも学園に通う為に多額の授業料がかかる。到底市民が払える金額ではないが、市民の為に設けられた特待生制度や魔術や武術に素養のある者は要人にスカウトされて弟子になり、その紹介で通えることが出来る場合もあるので学園に通っているのだ市民は少なからず存在しているのだ。

 勿論長期休暇も存在しており、生徒が希望を出せば故郷に帰省することも出来る。が、王城への呼び出しを受けた為、 学園の長期休暇より一週間早く帰還したのだ。


「あ、見えてきましたよー。やぁっと着きましたー」


 遠くからでも見える入城の為の巨大な門を見て嬉しそうに金髪の青年が言う。


「本当にやっとですね…」


「夏に帰らなかったから約1年ぶりの帰省だな」


 ホルストフ王国の王城は、襲撃を防ぐ為に絶対に超えることのできない高い壁が周りを囲っている。この壁を超えずに入城することが許されるのは南北に位置する巨大な門の二つだけだ。門番に正式な書類を見せなければ通ることは許されず、実際にこの巨大な門は週に数回しか開閉されない。また、門番は兵士の中でもより優れた者が選ばれており常に目を光らせている。門番は交代制であるが無闇に門を開けない為に門番用の宿舎が設置されているという徹底ぶりである。

 以前、一般市民の子供が門に近づいて斬り殺された事件があった為、賑やかな王都でも門の周りは誰も近づこうとせず、そこだけ空間が切り取られたようなら静けさがあった。


 頑丈な鉄で出来ている門の前には2人の屈強な門番が侵入者を拒むよう槍を交差させて立っている。門は閉ざされ、鼠一匹入る隙間もない。

 王城の見張り台の上にいる魔術師は門に近づいてくる3人の魔力を感知した直後、門番2人の脳に魔力を信号とした言葉を送る。

 門番はその信号を正確に受け取り、3人の青年を前にして槍の交差をといて彼等に深く礼をした。


 門が鈍い音を立てて開く。

 中では伝令役の兵士が見張り台で鐘を鳴らして叫んでいた。




「開門!開門!ライモンド王子、ディルク王子、クリストフ王子のご到着である!開門!開門!」




いつからアルマが第1王子だと錯覚していた…?

すみません、冗談です。

本当は殿下呼びにしたかったのですが、分かりやすいように王子呼びにしました。

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