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067 哀れな村人達 ①


「誰か、誰か助けて……っ!!」





その叫び声を、アオイは華麗にスルーした。





「お、お願い!お願いします!なんでもするから助けてっ!!」


「………」


必死で叫び続ける少女にも構わず、アオイは歩き続ける。


「ねぇっ聞こえてるんでしょっ?!助けてっ!助けてよぉっ!」


「…………」


それでも尚アオイは歩みを緩めることはない。

少女の声は遠ざかり、やがて聞こえなくなった。


「おかしいな、ここら辺に村があるって聞いてたんだけど…」


草根を掻き分けながらアオイは森の中を進んでいた

肩に乗っているスオウがキュウ、と小さく鳴く。


「スオウ、腹が減ったのは分かるけどもうちょっと我慢してくれ」


前回寄った村を出る時に聞いた村人の話だと、隣村は森を抜けてすぐだという話だった。

時間的には一時間もかからないだろうと言われたがアオイはもう二時間以上は歩いている。しかし一向に森は抜けられず、村らしきものも見えてこない。

アオイがあの村の住人は(スーパー)な村人だったのかと考え始めた時、少し遠くの方から何やら誰かが叫んでいるような声が聞こえてきた。


(……しょうがない、道を聞くか)


渋々、声のする方へ近づいていったが、その声の主が見えた時足をピタリと止める。


「イヤァッ!離してよっ!!」


そこにはさっきとは別の少女がオークらしき魔物に抱えられて連れて行かれている真っ最中だった。


「離してよっ、離せこの…っ!!」


少女は長い髪が乱れるほど暴れて抵抗するが魔物には全く通じていないようだ。

魔物は素早く森の何処かを目指してアオイとは反対の方向に進んでいく。

そこでアオイはある疑問が浮かび上がった。


(なんでそんなに早く動けるんだ?)


俺はこんなに苦労してるのに…、と眉を寄せる。

もう少し近づいて見てみれば、魔物か歩いているのはギリギリ人一人くらい入れるであろう小さな小道だった。

きっと村人達はこの道を使っていたのだろう。道の存在を教えてくれなかった村人を恨めしく思い、アオイは小さく舌打ちをした。


(でもこれでやっと村につけるな…)


アオイは魔物と少し距離をとりながら小道に出る。


「っ?!お願いします助けて下さい!!」


道は一本なので少女からは誰がいるのか当然のように確認出来る。森の中からいきなり現れたアオイに少女は驚きつつも叫んだ。

アオイは少女の声に後ろを振り向いた。

此方を向いてくれたことが嬉しかったのか、少女の顔が喜色に染まる。


少女とアオイの偽装した目が合うが、アオイは素知らぬフリをして前に向き直り、村へと続く道を歩き始めた。


「なっ?!」


そのアオイの態度に少女は驚愕を隠せず思わず魔物への反抗の手が止まった。

しかしそれも一瞬のことで、次には怒りに顔を染める。


「止まって!止まって下さい!行かないで下さい!!」


しかしアオイは止まらず、少女からどんどん離れていく。


「……許さないっ!絶対に許さないんだからっ!!……いつか絶対に殺してやるっ!!」


アオイに向かって少女は呪いの言葉を吐き続ける。

それでもアオイは止まらなかった。


「死ねっ!死ね死ね死ねぇ!!」


(…捕まったお前が悪いってことで)


逆恨みとも取れる言葉にアオイは辟易とした。


(つかもし俺が普通の村人だったらどうすんだよ)


基本、村人は魔物に太刀打ち出来ないものとされている。何故なら魔物を倒せる村人は殆ど冒険者にジョブチェンジしているからだ。金を稼ぐために村を出て冒険者になる若者も多い。村人でも多少は戦えるものはいるだろうが、少女が襲われているのは仮にもランクCのオーク。助けを求めたのならそれはもう死ね、と言っているようなものだ。

アオイは唯でさえ歩き疲れているのに、これ以上体力を無駄にしたくはなかった。それに可愛いペットのスオウがお腹を空かせているのだ。


知らない少女とスオウ。


アオイの中では比べるまでもなかった。





少女の叫び声が聞こえなくなる頃には遠くの方に村が見えていた。

アオイの顔も思わず綻ぶ。


「よかったなスオウ、あともう少しだ」


アオイの言葉にスオウは嬉しそうに鳴いた。





数分後、村に到着したアオイはその騒然さに首を傾げた。女性達は怯え、男性達は鍬や斧を持って何やら言い合いをしている。

村人達はアオイがこの村に来たことさえ気づいていない。

取り敢えず近くにいた老人にアオイは話しかけた。


「あの、すみません…旅の者でさっきこの村に来たんですけど…何かあったんですか?」


森の中の出来事から一応事情察してはいるものの、敢えて知らないフリをする。


「あんたぁ!あの森を抜けてきたのけぇな?!」


その老人の言葉は思った以上に周りに響いた。

水を打ったかのように騒がしかった村人達は静かになる。

アオイは一気に大勢の視線に晒され、困惑しているようなフリをした。


(まぁこうなることは分かってたから良いけど)


「あの、何か……」


「そこのお人」


急に後ろから声をかけられ、アオイは振り返る。


そこには木の杖をつきながら歩く白髪の老婆が立っていた。後ろに強そうな男性二人が控えている。

老婆がアオイに向かって口を開いた。


「名前を聞いてもいいかえ?」


「……ムラカミです」


「そうかい。ではムラカミさん、アンタは何しにこの村へ?」


「旅をしています。隣村からこの村を教えてもらいました」


「なるほどなるほど…私はここ、レチ村の村長ベレーという者…少しお話しお聞かせ願えますかな?」


「……はい」


有無を言わせないようなもの言いにアオイは短く返事をした。

ベレーはアオイの返事に頷きを返し、くるりと背を向け歩き始める。

ついて来いと言わんばかりのその行動にアオイは溜息をつきつつもベレーの背中を追った。



フラグなんて初めからありませんでした、なアオイが書きたかったんです。


感想、ご指摘などお待ちしております。

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