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064 上級魔法① 〜勇者side〜

64話です。よろしくお願いします。

「えっと、今日の魔法実技は上級魔法です。練習すれば誰でも扱える初級・中級魔法と比べて上級魔法は個人の魔力量と質に関わり、その…使えない人も出てくる……と思います」


城内に併設されている騎士専用の魔技訓練場。生徒達の魔法実技の授業は毎回貸し切りでここを使用していた。整列している生徒達の前でやけにオドオドとした口調で話している人物の名はマリン=フィルムルク。

ホルストフ王国屈指の名門貴族フィルムルク家の長女であり、魔技工学の永遠の課題とも言われた魔武器の魔素変換を8歳にして解き明かした天才。そして14歳という異例の若さで宮廷魔導師となったホルストフ王国史上最年少宮廷魔導師、その人である。


「なので……えっと、えっと…あれ?何言おうとしてたんだっけ?」


「なので、向き不向きがあります。まずは使いこなせるかどうかを判断する事が重要です。そうですよねマリン様?」


「う、うんっ!そうなの」


マリンの言葉を引き継いだのは彼女の側に控えていた優しそうな面立ちの好青年。彼の名はサーキス=コルネ、マリンの助手である。魔技専門の学者でもあり他の宮廷魔導師と比べてまだまだ幼いマリンの全面的な手助けをしている。


マリンの気性の所為か、この授業は最早サーキスが仕切っていると言ってもいいだろう。マリンは上がり症らしく人前で話すのを苦手としていた。そんな彼女にいきなり自分より年上の人間に魔法を教えろ、というのは少し無理がある。

最初はマリンも頑張って授業をしていたが言っている言葉が専門用語だらけで生徒達の理解を全く得られなかった。その後も色々あり、

サーキスが生徒達に魔法の指南、

マリンは専ら実演という役割が定着しつつある。


「それでは基礎中の基礎からいきます。神の名に於いて宣言し力をお借りする魔法は神代魔法ですよね?まずは自分が最も得意とする中級の神代魔法を行使してみて下さい。あ、勿論人には向けないで下さいね?」


人の良さそうな微笑みを浮かべてサーキスはそう言った。生徒達はその言葉に少し戸惑いはしたものの各々がそれぞれ得意とする魔法を行使する。

取り敢えず全員が魔法を行使したが何が目的なのか全く分からず生徒達は皆一様にサーキスに目を向けた。


「そう!まずは自分の得意属性が分かっていないといけません。私の言葉に従ったという事は皆様、ちゃんと自分自身の事をお分かりになっているのですね」


サーキスは感心したように笑顔で言いながら言葉を続ける。


「まずは自分の得意属性の上級魔法を使えるようにしましょう。皆様、少し離れていて下さい。マリン様、お願いします」


「わ、分かった…!」


サーキスはそう言うと生徒達を訓練場の端に避難させて丁度中心辺りにいるマリンと引き離す。

マリンの翡翠の美しい瞳が不安そうに揺れながらもサーキスに頼まれて嬉しそうな声を上げ、詠唱を始める。


「彼方より出でし天の御遣い(みつかい)よ 道を切り拓くは我 数多(あまた)(せい)を生み出し 数多の物語を見届ける者なり この世は偽り (まこと)のものは無し 全てのモノは()を抱え 気づく事なく生を終えるモノ多し 故に(せい)そのものは罪 この世の全ては罪なり 我 それを許さざる者 怒りに震え射止めんとする者 我 (いかづち)の神ノタヴに宣言す 」


どこからともなく吹く風がマリンの金髪を揺らす。

彼女が言葉を紡ぐ度に足元から浮かび上がる魔法陣が増えていく。そして五つ目に一際大きい魔法陣が浮かび上がるとまるで電流が流れているかのようにバリバリと音を立てながら淡く光りだす。

この場にいる誰もが息を飲みながらマリンを見ていた。

普段気弱な態度を見せている彼女は魔法を行使する時もそれを崩さなかったし生徒達に注目され恥ずかしさに耐えられなくて魔法を失敗する事もしばしばあった。

しかし今の彼女にいつもの雰囲気は一切ない。いつも忙しなく動いていた瞳は力強いものに変わり、唯々魔法に集中している。


「 生きとして生きるモノ全てに断罪の刃を 処刑台(ラル・イジェクト)


マリンがそう詠唱すると彼女をとり囲むように紫の稲妻が発生し後に強い閃光。あまりにも強いその光に生徒達は反射的に目を塞ごうとするが一瞬の出来事にそれすらも叶わなかった。訓練場に轟音が響き、次に目にしたものはマリンの数十m先に出来た大きな地面の焼け焦げた跡だった。よく見ればそこだけ少し地面が割れているように見える。


「流石ですねマリン様、今日も完璧です」


「あ、ありがとうサーキス」


未だに固まっている生徒達を余所にサーキスはマリンに声を掛け、生徒達に向き直る。


「マリン様が実演して下さったように今から得意属性の上級魔法を練習していきます。上級魔法からは取得できるかどうかは個人差となってきますので適性がないと判断された方は申し訳ありませんが、マリン様の授業から外れさせて頂きます」


サーキスの言葉に一気に生徒達が騒がしくなる。不安に顔を歪めている者が大半だ。


「皆様落ち着いて下さい。外れた方はマリン様とは別の方に御指導させて頂く事になっておりますので安心して下さい。そうですね…適性有の確率は8人に一人と言われております。適性がない(かた)が多いですよ」


それを聞いて生徒達は明らかにホッとしたように肩を落とす。


「それでは早速初めましょう。私の話をよく聞いていて下さいね」


人の良さそうな笑みをしてサーキスがそう笑顔で言い放った。


新キャラ登場ですのでキャラ紹介します。


マリン=フィルムルク

貴族フィルムルク家の長女。天才中の天才。

ホルストフ国史上最年少宮廷魔導師。金髪に翡翠の瞳をもつ上がり症な女の子。


サーキス=コルネ

魔技専門の学者。銀髪に銀の瞳の好青年。いつも優しそうな目で皆を見守っている。が、笑顔に威圧感が混ざる事もしばしば。皆に好かれている。


魔技

魔法技術の略。魔技の中にも色々な部門があり、開発部門・武器部門・身体部門・言語部門・召喚部門など他にも沢山ある。因みにサーキスは開発部門です。


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