063 王都へ
63話です。よろしくお願いしします。
「確認終了だ。クリード伯爵領にまた来てくれ」
「はい、ありがとうございます」
アオイは門兵にそう言って門を出る。
アオイが盗賊達を殺してから30分にも満たない時間でこの土地を出られたのは偏に門の近くに宿をとっていたからだろう。
サルト町はクリード伯爵領の南門の一番近くにある町であり他の町に行かなくて良かった、とアオイは安堵した。クリード伯爵領には明日の朝まで滞在する予定だったが当初の目的である魔石と食料の調達は果たせたので結果オーライだと判断する。
目指すのは北、
ホルストフ王国の中心、王都タコージ。
今の現在地は王都の南南西に位置しているクリード伯爵領である。ここから王都まではまだまだ遠く、距離的に例えるとすれば東京から北海道を目指すような感じだ。
盗賊という予想外のアクシデントでアオイの計画は狂ったが早く王都に到着する分には問題ない。
アオイは以前寄った町で手に入れた地図を開いた。
現代日本では飛行機や船、新幹線などを使って数時間から1日かけて行ける距離だが残念な事にこの異世界は中世のヨーロッパあたりにしか文明は発展していない。馬車を使えば少しは早く着くが金は常にギリギリしかなく選択肢はもはや徒歩一択だ。
アオイは一昔前の武士のような状態で王都に向かわなければならなく、日本男子にはキツイ事この上ない。
(あぁ帰りたい……でも榎本さん異世界移動はかなり疲れるって言ってたしなぁ)
アオイはまだ地球に居た時に聞いた榎本の言葉を思い出す。榎本は一緒に瞬間移動する人の記憶を読み取って移動することも出来る為、勇者召喚された人と異世界に行った事があるのだ。だが、次元を超える事は榎本自身の負担も当然大きい。1回の異世界移動だけで2日は筋肉痛で動く事が出来なかったと嘆いていたのを覚えていた。
(能力をフルに活用しても着くのは2〜3ヶ月先になりそうだな)
兎に角今すぐ帰れる事だけでも和秋達に伝えなければ、とアオイは意気込む。勇者として召喚されたからといって態々従う必要はない。本来ならロナエンデの事はロナエンデの住民が対処しなければならないのだ。そんな他力本願な世界の言う事を信用出来るわけがない。
(堀や広瀬達が和秋を気にかけてくれている……筈だ)
アオイはあの2人には前から和秋の事をいざとなったら助けてやってくれ、と頼んでいた。他にも数人、クラスにはアオイの息がかかった人間がいる。そいつらが和秋に手を貸してくれている筈だ。
今のところ勇者達が魔族のいるメラニア大陸へ侵攻したという情報ないのでまだ王城で修行か何かやっているのだろう、と予測した。
アオイ達生徒がロナエンデに召喚されて約半年。いくら勇者とはいえまだまだ魔王には力及ばないだろう。
アオイは王都に向かって歩きながら考える。
(それにしても、勇者とその御一行の情報……こんなに広まってて良いのか?)
以前の町で、勇者達の情報収集の為に酒屋に寄ったら「ギルドの依頼を見事達成された」「すでにレベルは熟練の冒険者を超えているらしい」などと噂の真偽は兎も角、多すぎる位の情報が集まった。そこまで勇者達の行動が明るみになっていて良いのかと逆に不安にすらなる。
(見せびらかしているみたいだ…)
誰に、なんて分かりきっている。
ホルストフ王国は勇者の活躍を利用して迂闊に周辺国家に侵攻されぬよう牽制しているのだ。他国も勇者召喚の儀式を行っているので先手を取ったのである。
今朝、宿を出る時に朝食をとっている宿泊客から近々勇者御一行のパレードが行われるというのを耳にした。このまま和秋達がパレードに参加したら途中で抜けます、なんて言い訳は出来なくなるのだ。パレード開催予定日は年明け。ロナエンデでは〝ニルヴァーナの夜明け〟、日本では〝正月〟と呼ぶ時期にあたる。ニルヴァーナの夜明けまであと半年以上ある。それまでに和秋達に日本に帰還出来ると報せれば良いのだ。寧ろ時間が余る位であろう。
(まだ時間がある……とはいえ、ゆっくりしてはいられないな)
まず、王都に着いても和秋達と会わせてもらえない出来ない可能性が大きい。その時は城内の歯向かう人間を殺せばいっか、とアオイは考え、能力を発動させた。
時期につきましては、初回投稿の日付を参考に設定してます。(小説削除前、初回投稿は2014年11月頃でした)そこから半年で5月中旬としています。なのでロナエンデ側であと半年以上、の表記です。次は勇者sideにしようと思います。




