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すみませんが、誰か助けてくれませんか?え?そんな余裕はない?ではさようなら  作者: 南瓜
序章 始まりは計画的に、終わりは唐突に
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05 渦




 どこかで、水の音を聞いた気がした。



 (……ん?)



 目の前は真っ暗だ。



 (……あれ?どうなったんだっけ?)



 身体の感覚は感じられない。



 (確か、和秋が引きずり込まれそうになって……あれ?結局俺どうなったんだ?)




 俺は、うーむ、と唸ってみる。

 意識的にだけど。むしろ意識しかない。




 (……取り敢えず、俺の身体どこい)ったつぁああああ!!!!」





 今まで意識しかなく、感覚さえも感じられなかった筈なのにいつの間にか考えている事が声に出ていた。





 バッ、バッ と、自分の身体を確認する。



 「…あ、ある。ちゃんと俺の身体がある」



 自分の手を握ったり、開いたりして感覚を確かめる。大丈夫、問題無し。

 こういうシチュエーションって全裸がテンプレだけど、俺はちゃんと制服を着ていた。



 「…さて、これからどうすっかな」



 辺りを見渡せば黒、黒、黒で空間さえも全く掴めない。



 (…立ってる感覚はあるから、ここはどこかの部屋か?)



 考えてみたが、どうしてもここが部屋の中だとは思えなかった。

 ずっと立ってるのも辛いので、ドスンと腰を下ろす。



 「……」



















 「……」



 時計がないから時間がどれだけ経過したか分からない。

 この真っ暗な空間は退屈にも程がある。



 「…なんか鬱になりそう、あぁもうチェンジで!」



 衝動的にそう言った。

 その瞬間、真っ暗な空間がいきなり真っ白空間に変わった。



 「グァァア!!目が、目がぁああああ!!」



 あまりのショックに、某大佐の言葉が出る。

 リアルにこのセリフを言うことになるとは…人生何が起こるか分からん。


 まだ目の前がチカチカしている。大丈夫だよね?目の細胞死滅してないよね?

 若干涙目になりながら心の中で悪態をつき、改めて真っ白に変わった空間に視線を移した。

 うん、確かにチェンジでって言ったけど…



 「これはないわな」


  俺の理解の範疇を超えた。もう何でもいいや。 しかし、白は白で眩しい。

 むっちゃ眩しい。

 それもあるが、



 「……白の中に俺は

  ………………白が、白が俺を責めているっ‼︎」



 心が痛くなった。

 まさか精神的に苦しくなるとは予想外だ。


 「ゴメンナサイゴメンナサイ、白はもういいから黒にチェンジしろぉ!!」



 するとまた真っ暗な空間に戻った……チェンジという言葉は簡単には使わないようにしよう。

 


 (でも何でこの空間は俺の言葉に反応するんだ?)



 真っ黒な空間を見渡し、考えてみる。

 …俺の心情で左右されるのか?空間が白に変わった時だってあのままじゃ気分が沈みそうだったからだ し……じゃぁあれか?色とか指定できるのか?俺の心情と色が合っていれば、その通りにきっと色が変わるんだ……多分。


 うん、ここはhappyな気持ちでいこう。


 

 「……ピンクにチェンジィィイイイイ?!」



 全部言い終わる前に視界が逆さまになり、只今絶賛落下中だ。しかもピンクに変わってないし、真っ暗だし、何故だ。

 取り敢えず誰かに助けてほしい、切実に。


 

 (……しかし、これはどこまで落ちるんだ?)

 


 落下し始めてから大分立っている気がするが、一向に止まる気配がない。空間も真っ暗なままだ。

 ふと、身体に何かの抵抗を受けているような気がした。



 「……ん?これは…………風か?」



 風の感触が懐かしく感じた。どこからか、風が入ってきているようだ。

 後ろ向きに落ちていた身体を反転し、前向きになる。

 最初は弱かった風も、落下していくにつれ強くなっていく。

 黒い空間の中には一点だけ激しく白い渦を巻いているところがあった。その渦に近づくにつれて風の音が強くなり、それは風で出来た半径50mはあるであろう巨大な渦であることが分かる。




 ービュオォォオオオオオオォオオオオ




 風が激しい音をたて、巨大な渦はもう目の前まで迫ってた。

 あの中に何があるのかは正直全く分からないが、どう足掻いても落下は止まってはくれない。

 このまま流れに身をまかせることしか俺に手段は残されていなかった。



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