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すみませんが、誰か助けてくれませんか?え?そんな余裕はない?ではさようなら  作者: 南瓜
幕間 訪れるかもしれない未来のお話
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058 可能性のお話です。



「『集団神隠し事件』、捜査継続への署名をお願いします!」


赤いジャンパーを着て私は暑い中必死に街行く人に呼びかけるが、中々足を止めてくれる人はいない。誰か一人が署名してくれると日本人の特性上、署名が増えるのだが生憎今は夏。

街での活動より駅中でやった方が良いのではないか、と疑問に思う。


「沙穂、ちゃんと水分補給しなきゃ駄目だよ」


いつの間にか側に来てペットボトルボトルを渡してくれたのは私の彼氏だ。


「 ありがとう 」


近くのコンビニで買ってきたのだろう、某有名な紅茶メーカーのレモンティーを私は受け取ってゴクゴクと豪快に飲む。


「 ふぅ、生き返った……。そっちはどう?結構署名集まった?」


私がそう聞くと彼は苦い顔をした。


「 いや……ぶっちゃけ(かんば)しくない」


「だろうねぇ……」


(もうちょっと涼しくなってくれればなぁ……)


そう言って空を見上げた。

夏の太陽が眩しすぎて目を細める。


「もうすぐお昼だしさ、そろそろ休憩にしないか?交代の人ももうすぐ来るだろうし」


「そだね、休憩にしよっか」


私は彼と一緒に代表の人のところまで行って休憩だと伝える。


赤ジャンパーを脱いでバッグにしまい、彼と近くの喫茶店に入った。


「 ……ねぇ、」


「んー?何?」


メニューを見る彼に話しかける。


「態々、手伝ってくれてありがとね」


「いんや?沙穂の為でもあるし、これくらいの事はするよ」


何でもないような風に答える彼に苦笑する。

私はこの人のこういうお人好しなところが結構好きなのだ。


「つか沙穂の方が凄いと思うよ。殆ど覚えてないんでしょ?お姉さんの事」


「………うん。あ、私これにする」


「了解」


彼が「すみませーん」と店員さんを呼んで注文をする。

そして10分も経たない内に料理が運ばれてきた。

私が頼んだのはきのこの和風スパゲッティ。きのこの良い香りを楽しみながらそれを口に運んでいく。




私には年の離れた姉がいた、らしい。


何故断定ではないのかと言うと、私には姉と過ごした記憶が一切ないから。

姉が行方不明になったのは私が2歳の時で、覚えていないのも当然だと思う。


両親の話によると、姉は歳の離れた私を猫可愛がりしていたらしい。

どうやら友達が大家族で兄弟がいることをずっと羨んでいたとか。

そのせいか、私が妊娠したと発覚した時それはもう大喜びしたそうで、私の名前も姉が決めたと言っていた。

私が一番最初に発した言葉も「ねーね」らしい。


「誰よりも私が産まれてくる事を喜んでくれた、ってお父さんとお母さんが言ってた」


今、私は姉が行方不明になった時と同じ高校2年。

写真の中だけで笑う姉と私は瓜二つで、友達に見せたら驚かれた後爆笑されたのは記憶には新しい。


お父さんとお母さんは私の顔を見ると時々懐かしそうな、それでいて悲しそうな顔をする……でもそれは一瞬で、すぐ元の表情に戻るけど。

そして私に「昔はお姉ちゃんの後をいつもついて回ってたのに」と言うのだ。


「ちゃんと〝お姉ちゃん〟って、呼んであげたかったなぁ…」


何で覚えてないんだろう、小さくと呟く。


「……かなり小さかったんだから覚えてなくても仕方ないだろ。それに沙穂みたいな妹がいて、お姉さんも、きっと浮かばれる…と思うぞ」


彼はハンバーグを口にしながら私には言った。


「え、どうして?」


彼は口の中の物を飲み込むと、ニヤリと口角を上げた。


「妹が重度のシスコンになってるから」


「違うから!シスコンじゃない!」


私の反論にも彼は笑う。


「もう……」


( 姉の話をすると皆が私のことをシスコンって言う……何で?)


スパゲッティを食べながらそんな事を考える。


「ご馳走様」


前に座っている彼がそう言った。


「えっ?!もう食べ終わったの?」


「おう」


スマホで携帯を時間を確認してみれば思っていた以上に時間がかかっていた。

私は急いで残りのスパゲッティをかきこむようにして食べる。


「ご、ご馳走様…」


「急ぎすぎだって…ほら水飲め」


食道の途中でスパゲッティが引っかかって胸が苦しいのを、水で胃に流し込んだ。


「早く行かなくちゃ」


支払いを終えて蒸し暑い外に出た。

数週間後には夏の暑さが終わりを告げ、秋がやってくる。


隣で彼が赤いジャンパーを用意するのを見て、私もバッグからそれを取り出して羽織り腕捲りをした。







『集団神隠し事件』の時効まであと一年。


遺された者たちの戦いも終わりに近づこうとしていた。


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