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すみませんが、誰か助けてくれませんか?え?そんな余裕はない?ではさようなら  作者: 南瓜
序章 始まりは計画的に、終わりは唐突に
56/84

055 ではさようなら

55話です。

よろしくお願いします。

「ヴァン クリーブ」


俺の耳には確かにそう聞こえた。




ーズガガガガガガ


ドォオオォン




( ………………oh )



何が起こったのかを説明しよう。

いきなりパールの右手が光始め、そこから巨大な緑の刃が飛ばされた。

地面にうつ伏せになり放り投げ出された手から魔法が放たれたのでパールの後ろから頭を掴んでいる俺に全く害がなかったのは良かった事なのだが…

地面を削りながら進んでいった刃はそのまま近くにあった二階建ての木造建築に、当たり一階部分を破壊。

数秒後、倒壊した。


「誰か、誰か助けて!」


不幸な事に、中には人がいたようだ。声がする方へ顔を向けると1人の女性が此方に向かって叫んでいる。

どうやら瓦礫に足がはさまっているようで抜け出せないらしい。

取り敢えずパールの事は一旦放置し、女性へと駆け寄る。


「大丈夫ですか?」


女性が泣き腫らした顔でいかにも助かった、といったような笑顔を向けてきた。


「あ、ありがとうござーー」


「いえ、お礼はいりません」


お礼を言う女性の頭に俺は笑顔で愛刀を突き刺す。

女性は泡を吹いて痙攣し、すぐに動かなくなった。


(……まぁ中にいたのが悪いってことで)


パールにしていた事が見られていないかもしれないが……

疑わしきは排除するべし、だ。

騒ぎを聞きつけて誰かが来る前に早くパールを殺さなければならない。

俺は動かないパールのところに戻り、首に手をあてて脈を確認する。

まだ微かにだが脈があるあたり生きているようだ。


(……ゴキブリ並にしぶといな)


死ぬのをのんびり待っている程時間はない。


「アイス」


ーーキィン


少し考え魔法で少し大きな氷の塊を地面に作る。


「よし、これで……」


俺はパールの頭を掴んで持ち上げると渾身の力で氷に向かって叩きつけた。



ーーグシャ



地面に叩きつけた時とは違い、明らかに鈍い音したのは気のせいではないはずだ。

もう一度脈をとり、確実に死んでいることを確認する。


(あとはこの死体を隠すだけでーー)


不意に殺気を感じ俺は咄嗟にパールの死体から離れと数瞬後そこに水魔法が着弾した。

魔法が放たれた方向へと目を向ける。


「……レオナルドさん」


そこには目に怒りを燃やしているレオナルドさんがいた。

何故、と一瞬思ったがレオナルドさんとは数分前に別れたばかりなのだ。距離的にも近かっただろうし速さ的にも納得した。きっとパールが放った魔法で倒壊した建物の音を聞き駆けつけてきたのだろう。


(……本当、厄介な事してくれたな)


よりにもよって一番最初に駆けつけたのがレオナルドさんとか、ついてないにも程がある。

近隣住民だったらすぐに殺す事も出来たのに。


「アオイ……何でこんな事した」


レオナルドさんは俺に敵意を向けつつもパールの死体に近づき抱きかかえようとする。

が、ゴロン、とパールの死体が仰向けになり顔が露わになったところで硬直した。


(ま、そうなるわな)


あれだけ地面に顔面を叩きつけ、そして最後の氷が効いたのだろう。

本当の意味での顔面崩壊。


「レオナルドさん、パールさんは俺を殺そうと襲い掛かってきたんです。

俺の敵だったんです。

なら殺しても構わないでしょう?」


()られる前に()れ、とは(まさ)しくこの事なのだろう。


「……何で」


レオナルドさんが呟いた。


「……?殺される前に殺しただけの事です。レオナルドさんの知り合いなので流石に悪かったと思っていますがーー」


「何で、何でだ?!」


俺の弁解の途中でレオナルドさんが叫び始める。


「何でここまでする必要があった?!殺さなくても他に方法があった筈だ!!」


(……あー、なんか冷めてきた)


そうだった。

レオナルドさんは見た目に似合わず情が熱い人だという事を忘れていた。


「…パールはお前を殺そうとなんかしていない!ただ捕まえようとしていただけだ!!」


捕まえようとしていただけなら何故首という急所を狙ってきたのか。


「いえ、確実に殺そうとしてきましたよ?レオナルドさん、もしかしてパールさんのこと好きでしたか?」


「……っ!!」


俺の言った言葉にレオナルドさんが目に見えて動揺した。

マジか、当てずっぽうに言ってみただけなのに。


「レオナルドさん、きっとパールさんに騙されてたんでーー」


「ァァアアアアっ!!」


俺の挑発に面白いくらい乗ってくれたレオナルドさんが叫びながら両手でナイフを握りしめ、襲い掛かって来る。

俺は愛刀でそれを迎え討つだけだ。


ーーギンッ


金属特有の刃物同士がぶつかり合う音が鳴り、鍔迫り合いになる。


「お前、それっ……!」


俺の愛刀を見てレオナルドさんが驚愕したような声を上げた。


「あぁ、レオナルドさんがこれを見るのは初めてですよね」


何か恐怖を感じたような表情をしたレオナルドさんは逃げるようにして俺と距離をとる。


初めて見るのも無理はない。いつも俺が仕事に使っているのはサバイバルナイフか短剣のどちらかだ。愛刀だけは肌身離さず腰に差して持ち歩いているが、誰の前でも俺は自分の愛刀を抜いたことはなかった。

レオナルドさんが驚いているのは恐らく色だろう。


「黒い刀身…。使っているのは奴は少なからずいるが、お前の剣は少し違うな」


俺の予想はどうやら大外れだったらしい……というか他にも黒い剣を使っている奴がいるのか。

しかし、魔法に疎いレオナルドさんがこの剣の違和感に気がついたのは少し予想外だ。


「あ、分かります?」


「………俺は仮にも剣士だ」


静かな声でレオナルドさんは答える。

そりゃそうだ。

確かに気づくわ。


「この刀自体、俺の魔力で出来てるんですよ」


「かたな?」


まずそこからか。

まぁ異世界に刀がない事はテンプレだから仕方ない事としよう。


「これ以上は言えません。企業秘密です」


俺はそう簡単に自分の手の内を相手にベラベラ喋る方ではないのだ。

俺の返答にレオナルドさんは沈黙する。

しかしレオナルドさんは一体俺に何をしたいのだろう?

この戦いパールの敵討ちのつもりなのだろうか?

……それとも時間稼ぎか?


「レオナルドさん、聞きますけど……この戦いに意味はありますか?」


「……?」


レオナルドさんは俺の質問の意味が分からないような顔をする。


「……質問を変えます。レオナルドさんは俺を殺したいんですか?」


「……あぁ」


その答えに俺は氷魔法の唱えかけたが、次に続く言葉に詠唱を破棄する。


「だけどっ!!……だけど俺はお前を殺さない」


「……どうしてですか?」


「どうしてって……仲間を、家族を殺す奴がいるか?」


俺はレオナルドさんの発言に何か言おうと思ったが、上手く言葉が出なかった。何を言えば良いのか分からなかった。

さらにレオナルドさんは言葉を続ける。


「アオイ、俺はお前を殺したくない。

だから……大人しく処罰を受けてくれ、頼む」


口の中がカラカラに乾く。

レオナルドさんの顔が見られない。


「きっと誰もお前のことを殺そうなんて考えてないからさ」


その言葉に俺は顔を上げ、レオナルドさんに向かって苦笑する。


「レオナルドさん…」


俺の表情にレオナルドさんは安心したのか、構えていた剣を下げた。


「エシーラ カージェ」


俺がその言葉を言うと同時にレオナルドさんの左右前後に氷の分厚い板が現れ同速度で接近。ドン、という音と共にレオナルドさんを囲い込む。そして最後上空に現れた氷の板で蓋をする。

完全に密閉された空間、まぁ運が良ければ死なないだろう。


「笑えるくらいにウザいので、そこでちょっと黙ってて下さい」


レオナルドさんには聞こえていないと思うが苛ついていたので敢えて声に出して言い、俺は能力(アビリティ)の最速速度で寮へと向かう。


レオナルドさんがカルロさんに報告する事はなんとか防げたがもしかしたら誰かが見て報告しているかもしれない。

内心冷や汗をかきながらも走っていたら、いつの間にか寮を通り越していたら見たいで急いで能力(アビリティ)を解き、寮に走る。

どうやらかなり焦っていたようだ。


寮の入り口のドアノブを掴もうとするといきなり中から扉が開き、顔面を強打しそうになるがなんとか回避する。


「あ、アオイさん」


「ロミオ……それにコラード」


「よう」


中から出てきたのはロミオだった。

後ろにはコラードもいる。


「あれ?確かアオイさんってパールさんと一緒にダリアさんの家に行ったんじゃ…」


ロミオが不思議そうな香りをして俺に言ってきた。


「あぁ,なんかパールさんは長くなりそうだから先に帰ってて良いよ、って言われて帰ってきた」


ここで下手にレオナルドさんの名前は出さない。


「そうなんですか…まぁレオナルドさんが一緒なら大丈夫でしょう」


「あぁ、俺が行く必要はなかったよ」


少しおどけたように言うと二人とも笑ってくれた。

どうやら上手く誤魔化せたみたいだ。


「これから僕達、ちょっと調べ物をしに書庫に行くんですけど……一緒にどうですか?」


「いや、申し訳ないけど部屋でやる事があるんだ。ごめん、また今度誘ってくれ」


「無理じゃないから別に謝らなくても大丈夫です、では」


「アオイ、今夜俺と手合わせしようぜ!」


「カルロさんに許可取れたらな!」


俺はそうコラードに返し、今度こそ寮に入って自分の部屋へと向かう。

部屋に入るとベッドの上でオコジョ擬きが気持ちよく寝ていた。

俺はそれを起こさないようにしてして元々少ない荷物を纏めていく。


「 ディオブ ムール」


そう唱えると俺の前に円形の闇ができ、その闇に向かって荷物を放り投げた。


この魔法は闇魔法を応用した、所謂(いわゆる)空間魔法の一種だ。

闇魔法が使える人間は魔法を練習すればきっと高確率で使えるようになるだろう。此方の方が遥かにアイテムボックスより使い勝手が良いと思われる。

この魔法が広まっていないのは闇魔法の使い手が少ない事と使用者が独占しているかのどちらか、或いは両方だろう。


全部荷物を闇の中に詰め込みおわり、術を解除すると闇は消える。


これで荷物整理は終了した。


上から薄いコートを羽織り、部屋のドアノブに手を掛けると何やら俺の足を伝って身体を登ってくるものがいる。

それは俺の肩まで来ると動きを止めてキュー、と鳴く。


(…………まぁいいか)


何をしても刷り込みで母親と認識した俺につい来ると思うし、こいつの事に関しては完全に諦める事としよう。

誰かにオコジョ擬きの事を突っ込まれると嫌なので保険として魔石を使って俺以外にオコジョ擬きの姿を見えなくさせる。


(……それにしてもこいつの名前を決めなきゃな)


寮を出て地上に向かう一番近い階段に向かいながらそんな事を考える。


「そもそも……こいつは雌なのか、雄なのか」


キュー


俺の独り言にオコジョ擬きは一声なく。


「メスに見えなくもないし…いや、オスか?」


キュー!


(……ん?今なんか泣き方のニュアンスがいつもと違ったような……)


「オス……なのか?」


キュー!


「いやそれとも……メス?」


……


「……オス」


キュー!


「メス」


……


「メス」


……


「オス」


キュー!



どうやらこいつはオスらしい。


「何て名前にするか…オコジョ、つぶらな瞳……つぶらな、つぶら……ラナ?いやメスっぽいな……白、ホワイト……ハク?でも良いけどなんかしっくりこない」


中々良い案が思い浮かばない。

そういえばさっきから周りが騒がしくなってきているのは気の所為か?

みんな何処かへと向かって走っている。何かあったんだろうか?

少し気になったが、今は名前に集中する。


(こいつオスだしな……オスか、オス……オスカー………は駄目だ却下…オス、スオ……蘇芳(スオウ)?あ、なんか良いかも)




蘇芳(スオウ)




自分でもちょっと痛いと思うがこれに決定しよう。


「今からお前の名前はスオウだ。スオウ、これからよろしくな」


キュー!


俺の言葉にスオウは鳴いて答える。


(……こいつ、人語理解してんじゃないか?)


俺がそう思ったのは無理もないと思う。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




ある夜、

馬車が一台危険な森の中を駆け抜けていた。


「もっと速度を出せい!」


「も、申し訳ありません……」


いかにも貴族と言った風体の男が馬車の小窓から顔を出して馬を引いている御者に怒鳴る。


「わしは貴様なんぞの謝罪が聞きたいのではないのだ!もっと速度を出せ、と言っておる!」


「し、しかしこの馬ですとこれ以上の速度は……」


「ええいっ!どいつもこいつも…役立たずしか居らんのか!!」


「ひぃっ」


男の怒鳴り声に御者は身を縮ませた。

これ以上速度が出ない事が分かると男は乗り出していた身体を戻し、乱暴に座る。


男は焦っていた。


(このままでは間に合わん……どうしたらーー)


明日の昼には大事な商談があるのだ。なんとしてでも間に合わせなければならない。

だから敢えて正規の道ではなく近道とも言えるこの森を夜通しで馬車を跳ばしてはしっている。


(明日の朝には次の街に着くだろう、そこで足の速い馬に変えて王都までーー)


ーーガタンッ


考えに耽っていた男は急に止まった馬車の衝撃に耐え切れず、無様に前の座席に身体ごと突っ込む。


ーヒヒィイン


馬車の外から馬の甲高い鳴き声が聞こえたのを男は何か問題が発生したと予測し身体を起こして馬車の外に出る。


「おい、一体何がーー」


「お願いです!助けて下さい!お願いします!」


「何なんだ貴様は!」


馬車を降りてきた男に見知らぬ青年が縋り付く。


魔物(モンスター)に追われてるんです!僕も一緒に連れて行って下さい!お願いします!」


「君、旦那様から離れなさいっ!」


御者が男に頼みこんでいた青年を引き剥がそうとする。が、今度は御者に向かって叫び始める。


「お願いです、死ぬのは嫌なんですっ!助けて下さい!」


「は、離しなさいっ」


いきなり青年の矛先が此方に向かったことで御者は戸惑いのあまり、反射的に青年を突き飛ばしてしまった。


「おい、早く馬を出せ!これ以上遅らせるわけにはいかん!」


「はい、畏まりました」


主人に命じられた通りに御者はもう一度馬車を走らせようと地面に座っている2頭を立ち上がらせようとする。


「ほら、立て」


しかし2頭とも小さく鳴くだけで立ち上がろうとしない。


「?どうした?」


御者は訳が分からず、ふと馬の足に目をやり、硬直した。


無いのだ。

馬が走るのに一番大事な部分である蹄が、2頭とも切り落とされていたのである。


「なぜーー」


そう口を開いた瞬間、御者の視界がいきなり変わり、転がる。

身体が全くいう事を聞かずなんとか状況を把握しようと暗闇に必死に目を凝らした。

凝らした事を後悔した。

自分の身体が近くにある。

御者はその意味を理解した瞬間、死んだ。


「ヒィイイッ!」


それを傍で見ていた男は腰が抜け、御者の身体の近くにで刀を握っている青年に恐怖の眼差しを向け、怯える。

青年は男に向き直り刀を振り上げた。


「金ならいくらでもやる!このわしの地位だってくれー」


「ではさようなら」


青年は男の言葉にも動じずに刀を振り下ろす。



ーグヂュ


このお話で序章は終わりになります。

因みにずっと前から題名を序章の一番最後で使う事を決めてました。上手く入ったのかは不明ですが(笑)

これまでストーリーはのんびり進行でしたが1章からはかなり飛ばしていくと思います。

そうです(笑)まだ1章入ってないんです(笑)

それと序章と違い、3人称形式での投稿とさせていただきます。勇者sideの方もバンバンストーリーを進ませるのでそのつもりでいて下さい!

よろしければご感想、評価をよろしくお願いします。

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