表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すみませんが、誰か助けてくれませんか?え?そんな余裕はない?ではさようなら  作者: 南瓜
序章 始まりは計画的に、終わりは唐突に
55/84

054 忠義

54話です。

よろしくお願いします。


18話で出てきた受付嬢のキアラとパールは別人ですので、それを証明する文を追加しました→そう言って黄金色の長い髪を揺らしながら

「……ぅん?何だ?」


気がつけば朝、何やら外がやけに騒がしく目が覚めてしまった。


どうやら一階から聞こえてくるようだ。


鳴き声を上げながら部屋の真ん中でグルグルと回っているオコジョ擬きに手早く餌をやり、自分も朝食を取ろうと部屋を出て一階に降りていく。


「おはようございます」


眠そうにそう声をかければ、食堂にいる人たちも「おはよう」と答えてくれた。

食堂の人から朝食を受けとった俺はロミオが1人で食べているのを見つけ、近づく。


「おはよう。隣、いいか?」


「あぁ、アオイさん。おはようございます。全然構いませんよ」


俺はロミオの前の椅子に座り皿に用意されているパンを千切って口に運んだ。

いつも騒がしい朝食の時間だが今日はやけに静かだ。


「なんか今日は不自然な程に静かだな…なにかあったのか?」


そういえばロミオが1人で食べているのも珍しい。いつもならコラードと一緒に食事をとっている筈なのに。


「町で働いている地下街出身の方がいらしているようですよ」


「へぇ…そうなのか。ロミオは会わなくても良いのか?」


ロミオの口ぶりからして知り合いじゃなさそうだが一応聞いてみる。


「はい。知らない方なので僕が行っても意味がないかな、と」


やはり面識はなかったようだ。


「でも地下街では有名な方なんですよ?レオナルドさんと同期で凄く美人らしいです」


(とゆーか、女だったのか)


地下街で皆なに騒がれる位だからどんな屈強な男かと思ったら…

成る程、 違う意味で騒いでいたのか。


(騒ぐのは別に構わないけど…

朝なんだからもう少し静かにしてくれたら良いのに)


パンを皿に戻し、サラダをフォークでつつきながらそんな事を考えていた時だった。


ーーバンッ



「アオイ、ロミオ!ちょっとこっち来い!!」


ドアを壊しそうな勢いでレオナルドさんが寮へと入り周りを見渡した後、俺達の方へと歩いて来る。


「……」


「?どうしたんですかレオナルドさん?」


あまりの勢いに若干引いているロミオの代わりに俺がレオナルドさんに尋ねる。


「パールに最近入った後輩を紹介して欲しいって頼まれたんだ。ちょっくら外に出て挨拶してくれねーか?」


「それなら別に構いませんけど…」

「僕も大丈夫です」


さっきのロミオの話から察するに、どうやら美人さんの名前はパールという名前らしい。


俺達2人はレオナルドさんについて行き、外に出る。

寮の前には誰か1人を中心にして人が集まっており、中の様子が全く分からない。


「お前ら少し道を開けろ。パール、連れてきたぞ」


レオナルドさんがそう声をかけるとモーゼの様に人が左右にわかれる。

そして騒ぎの中心であろう、数m先にいる人物が此方を振り向いた。


その姿を目にした途端、俺は反射的に足を止めてしまう。


( …………嘘だろ)


「アオイどうした?早く来いよ」


レオナルドさんが立ち止まった俺を不思議そうに見た。


「あ、はい」


俺は人々の視線を感じながら自然体を装いつつ、3人のところまで歩いていく。


「この2人が最近入った後輩だ。お前ら自己紹しろ」


「ではまずは僕から先に」


ロミオは一歩前に出てパールと向かい合う。


「初めまして、僕はロミオといいます。3年位前から地下街でお世話になっています」


自己紹介したロミオにパールさんは笑顔で答える。


「3年前……という事は私とすれ違いで入ったようね。よろしく」


「よろしくお願いします」


そう言って2人は握手を交わす。


「次はアオイ、お前だ」


レオナルドさんに促され、渋々俺は話し始める。


ここには地下街の人が集まっている以上、俺は嘘をつくことができない。


「……始めまして、アオイ=ムラカミと言います。地下街に来たのはつい数ヶ月でまだまだ新人ですが、よろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします……思えば、私自身の紹介もまだだったわね」


うっかり、といった風にパールさんは上品に手を口に当てて小さく微笑む。


「私の名前はパール=ゴルフィルマー。3年前までこの地下街で暮らしていたから貴方達の先輩、ということになるわね。これからよろしく」


そう言って黄金色の長い髪を揺らしながら俺たちに笑いかける女性は、やはり数ヶ月前、ギルドを訪れたときに見かけたギルド職員のうちの一人だった。

パールさんは俺の顔を見ても何でもない事のように自然に話す。

一瞬俺はギルドまで強制連行されるんじゃないかと思ったがここは地下街、パールさんも地下街出身者だったのならきっと黙って見逃してくれると思うが警戒するに越した事はない。


「3年のうちに地下街も変わったのね、知らない建物があちこちにできてる……ねぇロミオ君、あれは何?」


パールさんは興味津々といった風に少し遠くにある建物を指差した。

いきなり指名で聞かれたロミオは少し慌てながらも答える。


「え?えっとあれは確か……ダリアさんの家だと思います」


「家?!あれが?!」


ロミオの返答に思わず俺は声を上げた。明らかにあれは家、というような姿形もしていないし明らかに大き過ぎる。


「あぁ、そういえば最近来たばかりのアオイさんも知らないですよね。ダリアさんは去年地下街に来たばかりの女性で魔法科学の研究をしているんですよ。そっちの業界ではちょっとした有名人みたいで…既に何人か弟子入りをしにも来てる位なんですよ」


随分とお偉い人がこの地下街にはいるようだ。

…というか、何でそんな人が地下街なんかにいるんだ?


「何でダリアさんは地下街なんかに来たのかしら?」


どうやら俺と同じ事をパールさんも考えていたようだ。

その質問にロミオではなくレオナルドさんが答える。


「一人で研究に没頭したかったんだと。こっちはダリアを訪ねてくる奴らが来る度地下街に不法侵入されるんだから(たま)ったもんじゃねぇ…」


「科学者の研究意欲は凄いですものね…」


ロミオは近くで見た事があるのか、若干遠い目をしながら言う。

科学者は何やら凄いらしい。

覚えておこう。


「そ、そうなのね……中には入らせてもらえるのかしら?」


ロミオの反応を見て若干引き気味にパールさんがきく。


「はい、助手さんの許可が得られれば当日でも見学は自由ですよ。今から行ってみますか?」


「ええ!行ってみたいわ!行きましょう!!」


やけに興奮した様にパールさんはレオナルドさんに言う。


「俺、アイツかなり苦手なんだけど………分かったよ、一緒に行く」


どうやらレオナルドさんも一緒に行くことになったみたいだ。

……だが、今日の仕事はどうするのだろう。他の人と組めばいいのか、それとも仕事自体が無しになるのか。


「アオイ君!」


「……はい、何でしょう?」


俺が色々考えているとパールさんに名前を呼ばれ、彼女に向き直る。

思った以上に近くにパールさんの顔があったので少し驚いた。

パールさんは顔を仄かに赤く染め、上目遣いで俺を見上げ口を開く。


「よ、良かったら一緒にダリアさんのお家………行かない?」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



(シリウス様、もう少し待っていて下さいね)


私は隣を歩くアオイ=ムラカミを気付かれないように一瞥する。


(……ギルド登録をするのに偽名を使うなんて、なんて卑劣な(やから))


偽名を使う事自体はそれ程珍しくないが散々ギルドを荒らされた挙句、私の敬愛するシリウスさんの手を煩わせることまでした。

万死に値する行為だ。


(……でも、これからどうしましょう)


色仕掛けで一緒に行動させるまでは良いけど私達の他にレオもいる。


問題はどうやってアオイ=ムラカミと二人きりになることである。

レオにダリアとかいう研究者の家まで案内してもらって、その後は帰るよう促してみるしかなさそうだ。


早くアオイ=ムラカミをギルドへ連れ帰って水浴びをしたい。

そもそも私は本来地下街に来たくはなかったのだ。

シリウスさんの為にしょうがなく、だ。こんな不潔な所、誰がすき好んで来るか。

この場所は私に相応しくない。


(私はもう……あの頃の惨めな私はじゃないのよ)


親にスラムに捨てられ、地面に汚く這いつくばって一日一日を死に物狂いで生きていたあの頃を思い出す。

地下街に来てすぐ知り合いに声を掛けられたが、彼らは自分達と私が既に住む世界が違うと分かっているのだろうか?

彼らは負け組で私は勝ち組。

気安く話しかけないで欲しい。


そんな事を考えていると、私達の前を歩いていたレオの足が止まる。

どうやらダリアの家に着いたみたいだ。


「おら、ここがダリアの家だ」


レオの言葉に私は改めてダリアの家を見る。

ヴァンダスキン町支部のギルドの3倍はあるんじゃないかと思えるような大きさに4〜5階はあるだろうと思える高さ。一回の部分はレンガでできているがその他は灰色の何かよく分からない素材でできている。

遠くから見てもかなり目立つが分かる家だが、近くで見ると迫力が凄まじかった。

建物を見上げて思わず呆然としてしまった。



「パール、悪ぃーが俺はカルロさんに頼まれている事があるから今日はここで退散するわ」


「え?」


突然掛けられた言葉に私は一瞬理解できなかった。


「レオナルドさん、行っちゃうんですか?!」


アオイ=ムラカミもこれは予想していなかったのであろう、驚いた声を上げる。


「中に入って声を掛ければダリアの助手が出てくると思うから。アオイ、パールの事を頼んだぞ。帰ってくる時は来た道戻れば良いから」


「……分かりました」


アオイ=ムラカミが不服そうな表情で答えた。


「パール、待たな」


「ええ」


去っていくレオに私は手を振り彼が見えなくなったのを確認して静かに手を下ろす。


「………」


「………」


私とアオイ=ムラカミの間に沈黙が流れた。


「……あの、パールさーー」


「気安く呼ばないで、不快だわ」


私はそう吐き捨て、アオイ=ムラカミには見えない反対側の手で太腿に仕込んでおいた短刀を静かに引き抜く。


(まさかいきなり捕まえる機会に恵まれるなんて……ついてるわ)



「私は地下街(ここ)で貴方に会うなんて微塵にも思ってなかったんだから。レオが最近可愛い後輩が出来たって言うからどんな子か見てみたかっただけで……予想外もいい所よ」


「………俺を捕まえたりとかはー」


「しないわよ……というか一ギルド職員でしかも女な私に貴方を捕まえられる実力がある思う?無謀にも程があるわ」


言葉を使い、私をひ弱な女であると思い込ませる。


私の得意属性は風、スピードには自信がある。

推測するにこの男の能力(アビリティ)は風を利用するものだろう。逃げられても私なら確実に追いつける。



「……そうですか、流石に此処まで追ってきたのかと思いましたよ」


アオイ=ムラカミは安堵した表情を浮かべて苦笑する。


「地下街と表側では違いに不干渉を貫いてるの。今ここでは手出ししないけ……町に出たら背後に気をつけることね」


「ご忠告ありがとうございます」


そう言って私に笑顔を向けてくるアオイ=ムラカミに少し罪悪感が芽生えたが、元々はこの男が悪いのだ。

私は悪くない。


「そろそろこのド派手な家の中に入る事にしまーー」


そう言って私達の前にそびえ立つ建物にアオイ=ムラカミが歩き出したところで私は勢いよく体を半回転させ後ろからアオイの首をめがけて短刀を振るう。


「ーー?!」


しかしそこにアオイ=ムラカミの姿はなかった。


体を回転させてあの男の姿を視認しなかったのは1秒にも満たない間だ。


(……そんな、一体何処にーー)


直後、背後から頭を思い切り鷲掴みされ、顔面を勢いよく地面に叩きつけられた。


「ぐぁっ!」


あまりの衝撃に頭が混乱する。




ゆっくりと頭を持ち上げられ、また硬い地面に叩きつけられる。


ーゴンッ


何度も何度も叩きつけられる。


ーーゴン


ーーゴン


何度も

何度も

何度も

何度も


ーーゴン


ーーゴン


ーーゴン


ーーゴン


ーーゴン


ーーゴン


ーーゴン


最早抵抗する気力も起きない。


(…………意識が)


段々と意識が朦朧としてきた。

もう何がなんだか分からない。

何故こんな事になっているのだろう、私が一体何故こんな仕打ちを受けなければならないのだろう。


(いや、それよりも…………私、何やってんだろう)


敵の思うがままにされ、結局は何もしていない。

何も成し遂げていない。


(……そんなのは……嫌)


このままでは死ねない。

そう思ったら一気にこの男への憎悪が湧いてきた。

何がなんでもこの男に一矢報いてやりたい。

本当は殺してやりたい位だけどそれが叶わぬ今、この男に一つだけでも良いから傷をつけてやりたい。


「ふぅ……人の頭って案外重いんだな」


私の顔面今まで地面に叩きつけていた男が私の頭を地面に落とし、疲れたように言う。


「…………空に舞い、丘を越え…」


せめて一発だけでも。


「……この女、まだ生きてるのか?」



ーーゴン


再び地面に顔面を叩きつけられ始める。


「森を、穿ち駆け抜ける……風よ」



ーーゴン



「新緑……の、芽吹きを讃え……世界の怒りをあら、し……に……変え」


ーーゴン


「あらゆる……生物と、共存し………繁栄と安寧……の契り、を交わす、風………よ」


ーーゴン


「我……風の、神……オーギアに、宣言………す……英傑、なる思いを……風に…のせ…忠誠を誓い……敵を……討ち滅ぼさん」


ーーゴン


「ヴァン クリーブ」


主人公は結構敵に容赦ないです。

次話で序章が終わる……予定です。

というか終わらせたいと思います(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ