049 ③
卵③です。
よろしくお願いします。
ーガァアア
「フッ!」
俺は高く跳躍し、からだを捻って獲物の首にタガーを刺した。
ーーォオン
獲物ー全長2m程の熊ーは最後に小さく唸り、そのまま後ろへと倒れる。
「………ふぅ」
俺はそれを見届けると熊の首に刺したタガーを抜いた。
それと同時に物陰に隠れていたレオナルドさんが弓を片手にこちらを伺う。
「やったか?!」
それなんてフラグ…、と思ったが熊が起き上がる気配はない。
確実に死んでいる。
「大丈夫です。生きてませんよ」
レオナルドさんは見た目に似合わずビビリだ。
以前、寮に幽霊が出る部屋があるという事を面白半分に話した次の日から、必ず誰かと一緒に寮に入っているのを知った時は笑えた。
弱味を握った気分だ。
「お前、今凄いゲス顔してるぞ」
おっと、気を抜いていたようだ。次からは注意しなければ。
「ははは、してませんよ」
俺は瞬時に笑顔を作って誤魔化した。
「……………」
「それよりもですね、この熊の解体。手伝ってくれませんか?」
敢えて無理矢理話題を変える。
隣でレオナルドさんは芋虫を苦み潰したような顔をしながらも無言で解体を手伝ってくれた。
「……皮が依頼なんだから綺麗に剥がせよ」
「いや、もう首にナイフ刺しちゃったんで傷物なんですけど」
「ちょっと位ナイフの痕があったって気にしないと思うぞ。なるべく丁寧にな」
「はい」
俺が腹に筋を入れて皮を慎重に剥がしていくのをレオナルドさんは見ながら剥ぎ方を教えてくれている。
地球では一般人(?)だった俺だ。
1人で動物の皮なんて剥がせるわけがない。
俺はレオナルドさんの言う通りに黙々と皮を剥がしていった。
「おし、終わったな」
「…………………」
たかが一匹の皮ん剥ぐのに思った以上に神経を使った。
俺はもう限界なのに対し、レオナルドさんは元気でムカつく。
「始めはかなり疲れるがその内慣れる」
「……」
疲れ過ぎて俺は何も言えない。
「最初にしては良い出来だな。ま、これからも頑張ってくれ」
俺が剥いだ毛皮を見て満足そうに言われた。
少し嬉しかったのは言うつもりはない。
「……レオナルドさん、目的も達成しましたし帰りましょう」
「そうだな。お前も疲れてるし時間もまだまだある。今日は能力は使わなくて良いから歩いて帰るぞ」
「ありがとうございます!流石レオナルドさん!」
俺を気遣ってくれたのか、レオナルドさんが歩いて帰る事にしてくれた。
「それにしても熊がすぐ見つかってよかった。依頼主は毛皮だけ必要であって他はいらないそうだ。今日は熊肉祭りだな」
「それは楽しみですけど……。どうやって持って帰るんですか?俺運べませんよ?」
問題はそこだった。
森で切り分けて運ぶのにも限界がある。地下街の仲間にも分けてあげたいのに、と日本人の勿体無い精神が働いた。
「いや、アオイは運ばなくて良い。俺が全部持つ」
「えっと、それは嬉しいんですけど…だからどうやって運ぶんですか?」
「それはな、これでだ」
「 ? 袋、ですか?」
そう言ってレオナルドさんは一見普通の布袋を取り出した。
しかも可愛らしく本人の名前の刺繍も入っている。
「ただの袋じゃぁない。そう、あれは今から1年前の話だ…」
何故か、聞いてもいないのにいきなりレオナルドさんは語り始めた。
「……そして俺はそいつに聞いたんだ、それじゃあお前はどうなるんだって。でもおれがその返事を
〜以下略〜
「……という出来事があった後、偶々売れ残りで値引きしていたアイテムボックスを見つけてな」
(一言ですむじゃねーか)
果たしてその出来事を話す必要があったのか俺には分かりかねる。
話したかったのはまぁ良いけど長すぎるのがいけない。
もっと簡潔に纏めて欲しかった。
「俺、アイテムボックスなんて初めて見ました」
「まぁ普通は貴族クラスが行く店で売ってるような品だからな」
シンプルなやつもあれば小細工があしらわれているような綺麗なやつもあるぞ、と色々教えてくれる。
俺達はアイテムボックスーいや、アイテム袋と言うべきかーに毛皮やら肉やらを入れた後、雑談しながら歩いた。
森を歩いている途中でレオナルドさんに気づかれないように卵をさり気なく落とす。
(熊鍋ってうまいのか…?)
そんな事を考えながら俺は熊肉のシチューが食べたいです、とレオナルドさんに言った。
読んで頂きありがとうございます。
ぶっちゃけこのエピソードがこんなに続くと思いませんでした(笑)
きっと次で卵は終わる……はず。
ご意見、ご感想などお待ちしてます。




