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すみませんが、誰か助けてくれませんか?え?そんな余裕はない?ではさようなら  作者: 南瓜
序章 始まりは計画的に、終わりは唐突に
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048 ②

48話、卵②です。よろしくお願いします。


「…………」


朝起きたら卵が何故かベッドの中に入っていた。

俺はベッドから出て無言で着替え、卵を持って部屋を出る。


「あ、アオイさんおはようございます」

「…………」


まだ朝のかなり早い時間帯、多分5時位だろう。誰も起きていないと思っていたが、違ったようだ。

廊下を歩いているときにロミオとすれ違い何やら挨拶をされたと思うが生憎今そんな余裕はない。


「 ? 」


無言で足早に歩く俺をロミオが不思議そうに見たが無視だ。

地上に向かう階段を上がりスラム街に出る。辺りを見渡すと路地の所にボロボロの服を纏った人達がいるのを見つけた。


その中に1人だけ立っている奴がいるので声を掛けようと警戒しながら近づいていく。


「すみません」


俺に背を向けて立っていた人は俺の声に少しだけ肩を揺らし、ゆっくりと振り向いた。


「……なんだアンタ」



ボサボサの短い髪に所々骨が浮き出ているのが見える体。背は低く、まだ小さい子供だということがわかる。目は据わり棘のある声で返事をされた。

髪型からして男の子だと思っていたが声で女の子だという事が分かった。


「ちょっと頼みたい事があるんだけど」

「…………あたしはもうまともに動く事さえ出来ない。期待したって無駄だ。誰からの紹介かは分からないけど人殺しなら他をあたってくれ」


(一体この子は何を言っているんだ……)


明らかに普通の仕事をしていない人の話だがそこはスルーだ。


「いや、身体を動かす仕事ではないから安心して下さい。俺はただ貴方にこれを貰ってほしいだけなんです」


そう言って俺は少女に卵を見せる。


「……卵?」


(……きた)


俺が持っている卵を目にした瞬間、今にもそれを奪わんとしようと隙を伺っているのが分かった。


「見た通り普通の卵です。今からこの卵は貴方の物だ。売るなり食べるなり、好きにして構わないですよ」


俺はなるべく怪しまれないように笑顔でそう言い少女にそれを手渡そうとした。

が、少女はパシッ、と無理矢理俺の手から卵を奪い、そのまま走って逃げてしまった。


「……ま、いいか」


さて、朝食を食べるために地下に降りるとしよう。


(さっきはロミオに申し訳ない事をしたな、謝なければーー)


俺は今日1日の事を考えながら寮に戻った。


ーーーーーーーーーーーーー


〜翌日〜


「あ〜、ねむ。」


少し寝ぼけながら起き上がる。


(……支度しねぇと)


今日もレオナルドさんと一緒に魔物を討伐しに行く。今回はアスターの森の洞窟に潜るのでいつもより早い出発の予定だった。


昨晩机の上に予め用意しておいた服に手を伸ばそうとした。


「………………」


服のすぐ側に卵が置いてあった。


まだ寝ぼけているのかと思い、強く目を擦って机を再確認する。


ある。

卵がある。


(何がどうなってんだ……)


確かに俺は昨日、スラムに居た少女に卵をあげたはずだ。

というか、昨日俺が寝るまで卵はこの部屋になかった。


可能性としては俺が寝ている間に少女が部屋に入って卵を置いていった事が考えられる。

しかし俺は自分の名前も住んでいる場所も教えていない。

ここで1つの仮定をあげるとしたらーー

(…………つけられていた、か)


もうそれしか考えられない。

きっとあの少女は逃げたフリをして実はあの後俺をつけていたのだろう。

もう動く事も出来ない、というのも勿論嘘で、俺の金品などを狙っていた。


俺はすぐに自分の部屋の中の物を確認する。

討伐の時に使うナイフや回復薬を盗まれたら大変だ。


(盗まれてたら殺しても奪い返してやる)


















「………おかしい」


あれから自分の部屋を隅々まで確認したが何も盗まれてはいないし物色された形跡もない。


(バレることを想像して怖気づいたのか?それとも本当に卵す為だけに……いや、それはないな)


スラムにいる奴らはなんでもする。

そんな良心的なものは持ち合わせてはいない。


ーーコンコン


「アオイいるか?時間になっても来ないから呼びにきたんだが」


扉の向こう側からレオナルドさんの声が聞こえてハッ、とする。

何か盗まれていないか探すのに夢中になって時間が経っていることをスッカリ忘れていた。


「す、すすすみません!いま行きます!」

「なんだいるのか、早くしろよ」


俺は急いでサバイバルナイフやギルドカードなどを腰のポーチに入れて昨日の内に洗って干していたマントを羽織る。


「お待たせしました」

「おう。あぁそうだ、仕事は変更になった。今日はアスターの森で狩猟するぞ」

「魔物の討伐じゃないんですね」


俺は確かに強くなるために一つでも多く魔物の討伐依頼をこなしたいと思っていたが、最近は楽しむようにしている。その所為か一歩間違えれば自分の死に繋がるあのスリルが癖になりつつあった。俺が魔法を使えばそこからは一方的な虐殺になってしまう。

それでは面白くない。

やはり武器を使い身体を酷使して魔物を殺した方が達成感も増す。


しかし動物を狩る狩猟になるといまいちそれに欠けてしまうのだ。


「そうあからさまに落ち込むな」

「……すみません」


(そんなに分かりやすかったか?)


ポーカーフェイスが得意な俺としては由々しき問題だ。


「あ!」

「 ? 何だ、どうした?」


未だ俺の部屋の前でレオナルドさんと話していたが、1つだけ大切な事を忘れていたことに気がつく。


「すみません、部屋に大事な物を忘れてきました!取ってきます」

「ここで待ってるから慌てるな」


急いで部屋に戻り、机の上に目的の物を確認した。


(……あった)


俺は腰につけているポーチを開き、その中に例の卵を入れた。


読んで頂きありがとうございます。

ご意見、ご感想、評価をお待ちしております!

ちなみに今日は南瓜にとって特別な日で、1つ年をとりました。ヤッホーイ!

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