047 卵
更新が遅くなってすみません!
47話です。よろしくお願いします。
改めて読み返した所、どこの領かを入れ忘れており、こんな狭い国あって堪るか!となりました。「俺がホルストフ王国に入国した場所〜」→「俺がホルストフ王国のブルネット領に侵入した場所〜」に修正しました。(2015/11/04)
「急げ、もうすぐ日が沈む」
「はい」
俺は近くに生えているアリエッタの花を摘んで一纏めにした。
「結構集まりましたね」
「普段は冒険者なんかがクエストでよく摘んでいってないことが殆どなんだけどな。魔物が増えてるから態々危険を犯してまで摘みに来る奴はいないんだろ」
確かに、たかだか花を摘みに魔物が蔓延っている森に来る方が馬鹿だ。
俺は摘んだアリエッタの花を布袋に入れ、紐で締める。
「今から帰ればなんとか間に合うか。アオイ、また頼む」
「はい」
行きと同じように俺はレオナルドさんに能力を使ってスラムへと向かった。
ーーーーーーーーーーーー
「ここまでで良い。俺はギルドに報告と換金が済んだら帰る」
レオナルドさんは国に入る高い城壁の少し前の茂みで言われた。
「魔法石渡しとくぞ」
「ありがとうございます!」
俺はレオナルドさんから白い石を受け取る。
渡されたのは光属性の魔法石だ。
魔法石とは一般的に属性付与されている石の事を指す。主に付与されている属性に適性がなかったり、苦手だったりする人のサポートをする為に使われる。しかし消耗品の為、基本的に長くは使えないな。保って1日かそこらだ。
他にも転移石などがあるが此方は使い捨てである。そこそこ値は張るがとても便利なので買う人が後をたたず、品を仕入れる度に数時間後には完売しているという大人気商品だ。
あまりにも売れるので量産しまくった結果、最近では庶民でも買える値段になってきている。
少しだけ魔力を流し、魔法石が光るのを確認し、その光を体に纏わせるように、目を閉じてそのまま魔力を移動させるように念じる。
数秒経ち、目を開けた。
試しに前髪を少し指でつまみ目の前に持ってくる。
黒かった前髪は俺の瞳の色と同じ青になっていた。
光属性の魔石は基本的には魔法支援の為だが使い方次第ではこんな事も出来る。
しかしこれはただ光の屈折を利用しているだけなので、今自分が身につけている色にしか変化出来ない。
初級の水魔法でウォーターボールを作り出し、今度は目の色を確認してみる。
(変わってないな)
今回は目の色は変わらなかったようだ。
流す魔力の量で色の影響が出る場所をある程度調節出来るが、今日は少量しか流さなかったので色が変わったのは髪だけのようだ。
俺は魔法を解き、茂みを出て衛兵がいる城壁の前まで歩いていく。
「止まれ、身分が証明出来るものを提示せよ」
2人いる衛兵の内の1人に呼び止められ、ギルドカードを提示する。
他国から来た場合はもっと面倒くさい手続きが必要だが、自分の国であればギルドカードを見せるだけで大抵は国に入れてくれる。因みに何処の国から来たのかはギルドカードの色で判断しているそうだ。国によって違うらしい。
「協力感謝する」
衛兵からギルドカードを返され、道を国に入る許可をもらった。
しかしもうちょっと入国の手続きを厳しくしたほうが良いんじゃないかと思うのは俺だけだろうか?
…まぁ今のままの方が俺は助かるから良いが。
俺がホルストフ王国のブルネット領に侵入した場所はスラム街の近い西部の門からだ。
門はちゃんと東西南北にあり、それぞれ衛兵が見張りをしている。
もちろん、他領に攻め込まれる時も各門からであるため、その為の対策もちゃんと練られているから安心だ。
門をくぐればすぐそこは寂れたスラム街。地下街へはかなりの数の階段があるから不自由はしなかった。
少し歩いてから物陰に隠れ、未だに青い髪の毛を元に戻す為、全身に魔力を巡らせる。大体こうすれば、いつもの姿に戻るのだ。
「……よし」
記憶している1番近い地下街への階段へと向かい、地下街に降りる。
「あら、アオイ君じゃない。いつもお仕事大変ねぇ。今日は何処か怪我したところある?安くしとくよ?」
「……いえ、大丈夫です」
(誰だこいつ…)
階段を降りていきなり話しかけててきたのは見知らぬ女性。
「ほら、そんな事言わないでさぁ…本当は痛いの我慢してるんでしょ?お姉さんに見せてみなさい!」
しかも結構な美人なので益々困る。
ストレートの金髪の長い髪を低い位置で括り、翡翠の双眸で見つめてくる女性は、何故か胸が残念だった。
「おいあんた、今失礼な事考えただろ」
「何も考えてません」
ドスの効いた声で言われ、背中に寒気が走り俺は反射的にそう答えていた。
「アオイ君、手、出してみて」
笑顔でそう言われ、右手を出す。
というか何でこの人は俺の名前を知っているのだろうか。この人に会った事はないはずだ。
出した手を掴まれて何かを握らされる。
「……?何ですかこれ?」
見てみると、それは鶏の卵より一回り大きい位の、サイズだった。食用にしては少し大きい気がするのでもしかしなくても違うのだろう。
「卵」
「いやそれは分かりますけど……何の卵なんですか?」
色は白い。
動物の卵だとは思うが何せここは異世界。普通の卵ではない事は想像できる。
「え?聞いちゃう?それ聞いちゃうの?」
はっきり言ってウザい。
なんなんだこの人は。
「この卵、お返しします。名前も知らない人からこんな怪しいもの受け取るわけにはいきませんから」
俺は嫌そうな顔押して皮肉っぽく言ってやったが、目の前の女性は未だ笑顔が崩れない。通じてないようだ。
「アリサ」
「はい?」
「だから私の名前だよ な・ま・え!
私アリサっていうの、よろしく。はい、これでもう私達は知り合いになったよね。」
じゃね、と手を軽くあげてアリサは素早くその場から立ち去った。
金をせびりに来たかと思えば得体の知れぬ卵を俺に渡して逃走。
何がしたいのか分からない。
いや、何もしたくはないのか?
引き止めようと伸ばした俺の手はアリサに触れることなく中を彷徨った。
「……俺にどうしろと」
結局意味が分からないまま、俺はアリサから一方的に押し付けられた卵と一緒に帰宅ーーーー
するわけなかった。
「こんないかにも訳ありっぽそうな卵、誰が好き好んで持ち帰るか」
アリサは俺がそのまま持って帰ると思って卵を押し付けたんだと思うが、世間はそんなに甘くはない。
自分の思い通りになると思ったら大間違いだ。
俺は少し考え、一回地上に戻って卵を適当に地面に置いた。
これなら誰かが拾うか壊すか、はたまた食べるかをするだろう。
落として割っても良かったが、折角だしスラムの飢えている人達の糧になるのが良いと思ったのだ。
そうした方がきっと卵も喜ぶ。
少し良い事をした気分になり地べたを這いずっていたテンションが少しだけ上がる。
(早く帰って夕食食べて寝よ。あ、マント洗わなきゃ)
地下街を歩きながら今夜の夕食は何かな、と考えた。
今日は能力も体力も沢山使ったのでエネルギーを摂取して早く回復して寝たい。
俺はこの時現在の事しか考えていなかった。
もう少し先を見ていれば何か違ったかもしれない。
ーーいや、先の事を考えていてもあの事態は予想出来なかった筈だ。
結局何をしても避ける事など出来なかったのだろう
読んで頂きありがとうございました。ご意見、評価などおまちしております。




