044 俺+α inアリア大森林 ①
更新がおくれて誠に申し訳ありません。44話です。よろしくお願いします。
レオナルドさんの台詞でおかしいところがあるのですが修正しました「かなりに魔物が〜」→「少し遠くに魔物が〜」(2015/3/17)
「レオナルドさん、一つ気になることがことがあー」
「言うな」
「いや、せめて聞くだけでもー」
「黙れ」
「………」
俺は今、この世界に来たことをとてつもなく後悔していた。
その理由は、俺達の数メートル先で蠢いている物体にある。
俺の能力で2時間程かけてついたアリア大森林の入り口付近で、俺とレオナルドさんはかれこれ10分以上立ち往生している。むしろ、動けないと言っても過言ではない。
アリア大森林とは、普段は緑がとても美しい至って普通の森だ。
勿論、魔物もいるが、高ランクの魔物は滅多に出ないし、どちらかというと獰猛な動物に気を受けろ、と言われる位に穏やかな森だ。道は商人達が馬車で通行出来るように、ある程度広く、整えられている。この森林は隣国ワーノイド王国との国境線にあたり、今のところどちらの領地に入るのかは検討されておらず、その事柄については互いに不可侵ともなっている。
と、言うのも、数百年前にどちらの領地になるか言い争いが絶えず、挙句には戦争にまで発展しそうになったので当時の両国の王同士が話し合い、互いに所有権を放棄した結果である。
冒険者ギルドの依頼での花や薬草を摘んで持ってこい、だとか動物の毛皮や肉を持ってこい、だとかは大抵がアリア大森林によって行われる。
極偶に、ここを通る商人達の魔物の討伐依頼がある位である。
俺とレオナルドさんか受注したオークの討伐依頼も報酬は商人達からだった筈だ。
しかし非常に残念なことに、今俺達の目の前にいるのはオークではない。
整えられた道のど真ん中には一本の黒い木。
炭のように真っ黒で幹の部分には人のリアルな顔があり、ウォォォ、と奇声をあげながらザワザワと木を揺らして動いている。
(……凄く近づきなくない)
これはもはや弱いとか強いとかの問題じゃない。よく言いば不気味、悪く言えば生理的嫌悪。どちらの表現も対して変わらないと思うが的確な表現だと思う。
「アオイ、ここは少し遠回りしようと思うんだが……」
「遠回りしましょう」
俺はその言葉にすぐさま即答した。
あんな魔物は図鑑でも見た事はないし、間近で戦うなんて考えられない。
「幸い、ヤツに気付かれてはいねぇ…。ぜってー音たてんなよ」
「……レオナルドさんこそ、お願いしますよ」
「行くぞ、ついてこい」
俺達はコソコソと話しながら迂回した。
暫く走った後、入れそうな隙間を見つけ、森に入っていく。
「レオナルドさん、どうしますか?
正規の道から大分逸れていますし、索敵は使えそうですか?」
残念ながら俺はまだ索敵のスキルは獲得していないので必然的にレオナルドさんに頼る事になる。
索敵のスキルが得られれば1人でも討伐依頼を受ける事が許可されるが、それまでは必ず兄貴分が付き添う。
スラムのボスの配下に置かれるということは家族になる事を指す。
勿論ボスによって方針は違うが、少なくともカルロさんはそうだった。
現代でいうマフィアみたいなものだが血の掟みたいなものはなく、働き口が見つかれば独り立ちする人も少なくはない。
「少し遠くにに魔物がいるな…あまり強い反応はしてねぇからオークかもしれねぇ」
「当たりだといいですね」
「そう上手くはいかねぇだろ」
討伐依頼を受注した場合、まず一発で目的の魔物と当たるという事は奇跡でも起きない限りないと言っていい。
そこら中にありふれている魔物なら可能だが、オークは目撃情報がなければまず見つからない。
「確か……森の中枢部で見かけたと言っていましたね」
依頼主である商人達の発言を思い出した。森の中枢には泉があり、そこで休憩しようと立ち寄ったところ、オークに襲われたと言っていた。
「索敵で、この距離と方向なら間違いなく森の中心だ。今回は早く終わりそうだな」
少し嬉しそうにレオナルドさんが言った。早く依頼を終わらせたいのだろう。
レオナルドさんと話しているうちに、前方でキラキラと何かぎ反射しているのが見えた。
泉の水が太陽に反射しているのだろう。
「凄いですね……」
草などを掻き分けて広いスペースに出た。
泉の水は澄み渡っており、住んでいる魚や生き物が見え、水面には蓮に似た花が咲いている。泉の周りには水を求めてやって来た小動物が集まっていてとても癒される光景が広がっている。
「おい、近くに魔物がいる筈だ。注意しろ」
あまりにも和やかなムードに騙されそうになった。
「でも魔物らしきものは見当たりませんよ?」
「気ぃ抜くな。俺達のすぐ近くからしてる」
レオナルドさんにそう注意され、あたりを警戒する。
広い所に出ると狙われやすくなると思い、俺は一旦森の茂みに身を隠した。
「あまり下がりすぎるな。背後にも気を配れ。かなり近いぞ」
目線だけで周囲を見渡す。
(……おかしい。レオナルドさんの言った通り、近くに気配がするのは分かるけど見つけられない)
もしかしたら環境に合わせて姿を変えられる特製のある魔物かもしれない。そうなると厄介だ。
(……!)
近くから視線を感じ、その方向へと勢いよく顔を向ける。
すぐ目の前に
顔があった。
ーキィェェェエエエエ
「ギィャァァァアアア!!?」
同時にさっきいた魔物と俺が叫び声を上げ、俺は能力を使うことも忘れて走り出した。その後ろをあの黒い木が奇声を発しながら追いかけてくる。
あの魔物が今まで見つからなかった原因は周りの木に紛れて擬態していたからなのだろう。
森に少しでも下がった事が俺の運の尽きだったということだ。
ーキィェェェエエエエ
人は死ぬ気になればなんでも出来るとは本当のことのようだ。
泉に辿り着くのに結構苦労したというのに今では全然気にならない。
気にしている余裕がない。
(恐ろしくて振り向けねぇ……!つかレオナルドさんごめん!)
心の中でレオナルドさんに謝る。あの場所に置いてきてしまったが大丈夫だろうか?きっとレオナルドなら1人でも平気だ。
ひたすら逃げてはいるが、未だに魔物を撒けてはいない。しつこく追いかけ回してきている。
ーザザザザッ
俺が走っていると少し離れた所から音がした。今ここで他の魔物や動物と鉢合わせしたら絶望的だ。
ーキィェェェエエエエ
ーシャァアアア
前者は勿論俺を追いかけている魔物の声だ。声から察するに蛇系等のモンスターだと予測が出来る。
鳴き声からして少し右の方から聞こえてきたので少し顔を右に向けた。
ーシャァアアア
「…………」
レオナルドさんが黒い木の魔物に追いかけられて必死に走っていた。
(魔物の声に個体差があるなんて知りなくなかった……)
レオナルドさんは俺に気が付いているみたいで偶に視線を向けてくるが走るのに精一杯な様子だ。
「どうすればいいんだよ……」
段々泣きたくなってきた。
ここはこの未知なる魔物を迎え撃つか、それとも能力を使って逃げ切るかの2択だ。
(……能力だな)
即決した。
あんな魔物とも呼べない化物と戦うなんてごめんだ。
流石にレオナルドさんを見捨てられないので声を掛けようとカラカラになった喉を震わせる。
「……レオナルドさん!」
「…………何、だ!?」
レオナルドさんも俺と同じ状態なのか、ヤケクソ気味に叫んでいるように聞こえた。
「俺が能力を使うので……、こっちに、…来てもらっても……いいですかー!?」
「…………分かった!!今行く!」
レオナルドさんは器用に森の木やら石やらをかわして数秒で俺と合流した。いらないオマケを引き連れて。
「レオナルドさん何やってんですか!?」
「お前に言われたかねぇ!」
最もである。
「俺がカウントしますんで、合図したら思いっきり跳んで下さい!」
「頼む!」
俺はレオナルドの返事を聞き、右手で彼の腕を掴んだ。
「いきます。3 」
ーキィェェェエエエエ
「 2 」
ーシャァァァアアアア
「 1 」
ーウォォォォオオオン
一体知らない奇声が聞こえたが、気のせいだろう。
うん、気のせい。
「跳んで下さい!」
言うと同時に俺は空いている左手を下に向かって勢いよく振り、風を生み出す。
俺の足元に生まれた風は、跳び上がった俺の足を強く押し上げる。
「うぉお?!」
当然、腕を掴んでいたレオナルドさんも巻き込まれる形で高く跳んだ。
地上から10m離れた付近で停止する。
「落ち着いてください。今安定させますんで」
俺はレオナルドさんにそう言って彼の形を軽く叩いた。
これでもう大丈夫な筈だ。
「おぉ、悪いな」
「それで、あの魔物はどうします?」
俺は目線を下に向け、未だに森の中わー走り回っているあの得体の知れない魔物を見た。
どうやら先程聞いた声は気のせいではなかったらしい。いつの間にか三体(?)に増えていた。
「……いや、もう関わりたくねぇ。どうせならここからオークを探したいんだが、まだ保ちそうか?」
俺の能力の維持を心配しているのだろう。
またまだ行けそうなので大丈夫だ。
「全然余裕です。早く終わらせましょう」
「んじゃ、索敵するぞ…………ここから東だな。泉から少し離れた場所から反応がある」
やっと例の魔物から解放され、索敵が再開される。
「これでまた敵の姿が確認出来なかったらすぐに場所を変更しましょうね」
「あぁ」
俺とレオナルドさんの中であの魔物は立派なトラウマとなっていた。
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