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すみませんが、誰か助けてくれませんか?え?そんな余裕はない?ではさようなら  作者: 南瓜
序章 始まりは計画的に、終わりは唐突に
44/84

043 ②

43話です。

よろしくお願いします

すみません!シャルロットの台詞を一箇所修正しました「北部にあるアリア大森林〜」→「南部にあるアリア大森林〜」に書き換えました。矛盾が生じてしまいすみません…( 2015/03/17)

王都のギルドは、まだ朝が早いからなのか、あまり人が居なかった。

中に居た冒険者は大勢で入ってきた俺達を見てかなり驚いている。

しかし流石王都のギルド、こんなに大勢居てもまだまだスペースには余裕がありそうだ。


「王都タコージのギルド職員を務めております、アレンと申します。準備は整っているのでどうぞ此方に」


担当の職員の声が聞こえたので俺は反射的にそちらを見て、固まった。

他の生徒も同じようだ。彼方此方から話し声が聞こえる。

その原因は彼の容姿にあった。


ハニーブラウンのショートカットにアーモンド形の琥珀の瞳。一見ボーイッシュな女性のような外見をしているが、服装と声は間違いなく男だ。そして何よりも頭から生えている垂れ耳。


(獣人……であってるよな?)


ファンタジー、と隣にいた友哉が呟く。

確かにファンタジーだ。

しかし女性ではない事に少しガッカリしたのは言うまでもない。


俺達は2階に上がり、大きな部屋に案内された。

部屋の角の方にはギルド職員の制服を着た2人の女性がいて簡素なカウンターのようなものができていた。

机の上には小さな箱が幾つも積み重なっている。


「あちらの女性2人は魔力値やギルドカードを作ってくださる方達です。先に行う属性検査は僕が担当します」


アレンさんは女性達とは別に机を用意し、皿を置いて中に水を注いでいく。


「適当に一列にお並び下さい。今から属性検査を行います。属性検査が終わり次第、先ほど説明いたしましたギルド職員の方へお進みください。ギルドカードを作成しますので」


俺達はアレンさんに言われた通りに並び、属性検査が始まった。

俺達6人は丁度中間あたりに並ぶことが出来た。

宮下は1番最後だと決められていたみたいで拗ねているのを取り巻き達が宥めていた。















「次の方、前へ」


とうとう俺の番が来て、アレンさんに呼びかけられた。

前の人達がやっているのを見たのでする事は分かっている。


「少し血を頂戴いたします」


アレンさんは俺の腕を小型ナイフで少し切った。

ポタポタと俺の血が水に垂れていき、少しずつ色を帯びてくる。

色は赤と黄色の2色だ。


「はい、火と雷の2属性です。お進みください」


俺の検査が終わるとアレンさんは水に魔力を流し始めた。

するとさっきまで水面は赤と黄色の2色に染まっていたのに、透明な水に戻っていく。

全く仕組みが分からない。アレンさんの魔力が原因なのは確かなのだがあれは誰にでも出来るものなのだろうか?

俺は疑問に思いながらも、今度はギルドカード作成の列に並んだ。









「個体識別完了。これにて作業を終了します。ではステータス、と唱えてご自分の身体状況を確認してみて下さい」

「ステータス」



名 称 カズアキ=ミヤワキ

性 男

称 号 異世界人

Lv : 1

HP 10/10

MP 20/20

STR

DEF

AGI

INT

Rank F

属性 火、雷

技術



「何か不具合はございますか?」

「このDEFとかAGIが表示されないのは…」

「はい、それはプログラム上最初は表記されない事となっております。貴方様の身体能力が更新され次第、数値が表示されますので問題ありませんよ」

「ありがとうございます」

「それでは此方のギルドカードに触れて下さい」


ギルド職員の女性はそう言って側にある小さな木箱を開いた。


俺が中に入っていたギルドカードに触れた途端、文字が浮かび上がってくる。

ギルドカードには名称、性、ランクしか書いていなかった。


「ギルドカードには必要事項以外は書かれていません。他の人に自分の弱点などを見られる訳にはいきませんからね。それは立派な身分証明証ですので無くさないようにして下さい。これで全ての項目が終了いたしました。お疲れ様です」

「ありがとうございました」


俺はギルドカードを眺めながらその場を離れた。

他の生徒は自分の属性やHPなどの話をしてかなり盛り上がっている。


「和秋、属性なんだった?」


後ろから話しかけてきたのは紫だ。


「俺は火属性と雷属性だったよ。紫は?」

「えっ?! 良いなあ〜2属性! 私は水属性だけだったよ」

「紫は1つしかなかったのか?」


聞き方が悪かったのか、紫がムッとした表情で答える。


「聞いて回った限りだと半々って感じみたいね」

「和秋く〜ん、属性どうだった?」


今度俺を見つけたのは依子だ。


「火属性と雷属だ」

「おっ! 同じ2属性同士だ! 私は水属性と雷属性だよ。ちょっと被ってるね」


同士だ同士!、と笑いながら依子が言ってきた。

確かに同じ属性同士だと魔法の練習をするには良いかもしれない。


「和秋! 聞いて驚け! 俺はなんと2属性だ!!」

「俺も2属性だ」


友哉についツッコミをしてしまった。


「何だよー、和秋も2属性なのかよー」

「和秋 "も"?」

「悠馬も2属性なんだってさ」

「俺は土と風だ」


ここで悠馬の登場だ。

タイミングが良すぎる。こいつら打ち合わせでもしていたのか?


「え?! みんな2属性なの?! 」


自分だけ属性が1つしかないのが嫌なのか、落ち込んでいる。


「あんまり落ち込まないでよ紫。私だって1属性だしね」


そう紫にフォローしたのは華菜だ。


「ぅう、華菜〜」

「落ち着け」


紫が飛びつこうとするのを華菜が紫の頭を押さえて止めている。


「華菜は何の属性だったんだ?」


予測はついているけど、一応聞いてみた。


「私は火だよ」


やっぱり。


属性は自分の能力(アビリティ)に関係しているのかは分からないが、少なくとも華菜はそうだったみたいだ。


(……そういえば属性を聞いてない奴がまだ1人いたな)


1番騒いでいる癖にまだ属性を言っていないやつが1人いたことに気付いた。


「そういえば、友哉は何の属性なんだ? 2属性なんだろ?」

「えっ」


友哉の笑っていた表情が引き攣る。


「えっと〜なんていうか〜」

「こいつ、さっきからこんな調子で教えてくれないんだ」


さっさと言え!、と悠馬が友哉に迫っているが、言いたくないのか、完全に目が泳いでいる。


「本当に2属性なのか?」

「いや! 嘘はついてねーよ?!」


友哉の様子からてっきり嘘をついているのかと思ったが、違うようだ。


「なんか言えない事情でもあるんじゃないかな?」


紫はそう言いながらも、本当は1属性な事を願っているのかワクワクしているのが分かる。

紫、もうちょっと自重してくれ…

態度があからさま過ぎる…


「あ〜、言うよ! 言うから!」


どうやら腹を括ったみたいだ。


「俺も良く分かってないんだよこれが……1つは光属性で間違いないんだけどもう1つが……う〜ん」

「何色に染まったの?」


考え込んでしまった友哉に依子が質問した。


「あ、それなら答えられる。(うぐいす)色だ」

「よし、風だな」


悠馬がそう言って完結した。


「ちょっ、待ってぇえ!鶯だよ?鶯色だよ?」


鶯色と言われても…というのが俺達の本音だ。あまり思い浮かばない。鶯色ってどんな色だっけ?


「鶯色は緑の枠だろう?」


どうやら悠馬は鶯色がどういう色か分かっているようだ。


「鶯色ってどういう色だっけ?」


ここで正直に依子が聞いた。


「鶯色っていうのは…赤と緑と青を大体均等に混ぜ合わせた色だよ」


へぇ、そうなんだ。


(………ん? というか、何で友哉はそんな事知ってるんだ?)


「美術部だからだよ!!」

「と、友哉…お前もしかしてエスーー」

「全部声に出てたからだよ!!」


俺が全部言い終わる前に友哉に叫ばれた。顔を両手で覆って嘆いている。

というか、友哉が美術部員だったのか、初耳だ。


「和秋、知らなかったのか?こう見えても友哉はそれなりに有名だぞ?コンテストでもよく金賞とか取ったりしているし、学校の表彰の時に呼ばれているのを聞いた事はないか?」


全く覚えていない。

そもそも表彰なんて自分に関係のない事だからよく聞いていない。

ただのチャラ男じゃなかったんだな。

意外性のあるチャラ男だった。


「兎に角、風属性とは断定出来ないと思う。アレンさんにも言われたし…」

「アレンさんにも…?」


これは流石に予想外だったったのか、悠馬も驚いた顔をしている。


「うん、そう。今までこんな色は見たこともないって。もしかしたら俺特有の属性かもしれないって言われた。かなり希少みたい」

「特有の属性……。そんなのがあるのか」

「あぁ、だからあまり言いふらすなって言われた。特に王宮の人には」

「何でだ?」


普通、特有の属性が出たら色々活躍とか出来るんじゃないのか?

希少な属性だから狙われる可能性もあるから守っても貰えるし…。


「…………人体実験」


友哉らしからぬ低い、とても小さな声で言われた。

その単語を聞き、俺達は何も言えなくなる。


(…俺、最低だ。少し考えれば分かることなのに。……友哉に言わせちまった)


「……ごめん」


俺は友哉に謝るしかなかった。


「ま、気にすんな! 要はバレなきゃいい話だよ!」


いつもの表情に戻った友哉を見て、俺は拳を握りしめた。


(友哉に気を遣わせてどうすんだ…馬鹿野郎!)


他の4人はただ俯いていた。



「……あ、あり得ない!!」


沈んだ空気が俺達の間に流れていた所、アレンさんの戸惑った声が響いた。

その大声に、ざわめいていてた室内が急に静かになる。


他の生徒達につられるようにして、俺達もアレンさんの所へと向かった。














「もう一回、お願いします」


そこではアレンさんが宮下にもう一度検査をしてくれ、と頼んでいた。


「良いですよ」


宮下は事もなさげに腕を出し、血を透明な水に垂らす。

数滴落ちた時点で色が何色にも変わり始めた。こればかりは他の生徒も驚いている。


水面は光だして、赤、青、茶、緑、黄に染まり、遅れて血を垂らした部分から薄い氷の幕が張り出した


「……勇者様の属性は5大属性の全てと光属性と氷属性です」


アレンさんがそう言った途端、取り巻き達は騒ぎ出す。


「ま、まぁいいんじゃないの?認めてやらなくもないわ」

「……翔、凄い」

「流石、翔。勇者に相応しい素質をもっているな」


今回はツンデレが珍しくデレた。


「なんか、よく分からないけど…これって自慢してもいいことなんだよね?」

「「「勿論」」」


わきゃきゃしている宮下と不愉快な仲間達を見て、気分が更に急降下した。

アレンさんに至ってはいつもの笑顔が嘘みたいに無表情になっている。

本性が見え隠れしてますよ、アレンさん。


「すみませんが、関係のない方は邪魔になりますので離れていて下さい。勇者様は早くあちらへ」


……抑えて下さいアレンさん。

貴方は意外にも短期だったんですね。


宮下のギルドカードの作成も終わり、俺達は一階に降りた。丁度お昼で、ギルドの方で食事を用意していたらしく、全員分が運ばれるまでの間生徒達は自由にギルドを見て回っていた。

俺も暇なので、何か面白いものがないか辺りを見渡す。

すると、掲示板のような所に生徒達が集まっているのに気付いた。


「おい、和秋。あの人集り見にいこーぜ!」


友哉も気がついたのか、しきりに俺を誘ってくる。他のメンバーも席を立ち、見に行くことにした。


「おい、これって何だ?」


俺は人集りの外側にいた生徒に話しかけた。

振り向かれて気づいたが、俺が話しかけた人物は小川だった。


「お?宮脇か。あの掲示板には賞金首の情報が貼ってあるんだけどさーー、1人、面白い奴がいるんだよ。まぁ条件からして賞金首っていうか、指名手配犯だな、ありゃ」


俺はそう言われ、小川に手を引っ張られて人集りに押しつぶされながらも前にたどり着いた。他の5人も無理矢理押し退けてきたらしく、そばにいる。

俺達は例の賞金首の手配書を見た。

そこには賞金首の似顔絵と特徴、情報が書かれていた。


『WANTED


・トム=リ◯ル

・17歳

・黒髪に青目

・他国からの不法侵入及びスパイ疑惑あり

・見かけ次第、支給捕らえたし

但し、殺しは厳禁

必ず生きて連れてくること

・報酬:15000オーナブル 』


れ、例のあの人だと?!


「ほらな?面白いだろ」


確かに面白いが、ファンタジーの世界となると、本当に実名でいるもんなんだな…。


「並び替えるとヴォルデモー」

「その名を言ってはならぬ!」


友哉が何かを口走ろうとしたが、小川がそれを止める。

ノリいいなお前ら…。


「凄い、凄いよこれ!」

「ヤバイ、超会ってみたい」

「おおおおお、落ち着いて二人共っ!!」


依子と華菜は感動のし過ぎで興奮している。

取り敢えず、紫。お前が1番落ち着け。


「よし、和秋。捕まえに行くぞ」


悠馬に至っては捕に行く気満々だ。


「いや、無理だぞ。それに午後から実戦なんだし…」


そもそも俺達は王宮の許可がなければ路外に出ることすら叶わない。

探しにも行けない状況じゃ不可能だ。


「皆さん、昼食の準備が出来ました。席について下さい」


丁度よく、アレンさんの呼びかけがかかった。俺はホッとしながら席に移動する。席順としては、男子3人と女子3人で別れて座っており、俺の向かいが紫、悠馬の 向かいが依子、そして友哉の向かいぎ華菜となっている。


「食べながらで構いませんので僕の話を聞いて下さい。昼食をとって少しの休憩した後、王都タコージの城壁外に出ます。クエストは南部にあるアリア大森林でのゴブリン討伐です。皆様にはヴェロニカ聖騎士団が補助につきますので、最低でも1人1体は仕留めていただきます。それでは、食事をお楽しみ下さい」


アレンさんは淀みなく言い切り、一礼してその場を去っていった。


「ゴブリン討伐ね……面倒くさいっすわ」

「食べながら喋るな、汚い」

「へいへい…」


数時間後には魔物と戦わなくてはならないのになんでこいつら(友哉と悠馬)は通常運転なんだ。


全く緊張感のない二人に呆れながら、ふと俺は向かいに座っている紫を見た。

用意されている食事に殆ど手をつけておらず、スプーンを握ったまま暗い顔をして動かない。


「……紫、どうしたんだ?」

「紫、さっさと食べないとお昼の時間が過ぎるよ?」


俺の声を上げたことで、紫の隣に座っていた華菜も紫の様子がおかしい事に気がついたらしい。


「………………なんか食欲湧かなくて」

「さっきのアレンさんの話を聞いたからか?聖騎士団もついていてくれるし大丈夫だってー」


こんな時に、シリアスブレイカーこと友哉は役に立つ。

本人は無意識なんだろうが、あの口調を聞くと体の力が抜けるというか、なんというか……

緊張がほぐれるのだ。


「ううん、そうじゃなくて……。安全なのは分かるよ? だけどね、ゴブリンの討伐って事は殺すって事でしょ? 私、出来るかなぁ……」

「今の俺達の実力なら簡単なんでしょ? ならパパッと終わらせてーー」「それだけじゃなくて!」


弱々しかった声が強くなる。


「それだけじゃなくて……ご飯中に言うことじゃないけど、私、死体みるの怖いよ…。私はそこまで精神が強いわけじゃないし、きっと殺す前に躊躇っちゃう」


紫の言いたい事は分かった。

きっとそう思うのが普通なんだろう。ましてや女子だ。そんな血生臭い事をするのに躊躇わないわけがない。

けど、それでもだ。


「紫が言いたいことは誰もが思ってる。だけど、いつまでも守ってもらえる保証はどこにもないし、逃げ出せる訳でもない。この世界で生きていくには強くならなきゃいけない」


俺の言葉に紫が何か言おうとしたが、ぐっと口を引き結び、俺の言葉を聞いている。


「今日の実戦は戦いに慣れるためのものだと思う。どれだけ耐えられるか、どれだけ戦闘中に頭を早く回転させることが出来るか……俺達は初めてこの世界に来た日に戦うことを決めた。もう後戻りすることは出来ない。なら、戦って戦い続けて……強くなって生き残るしかない」


食事をしている生徒達が静かになっているのには気がついていた。

けど俺は話すのを止めない。


「例え巻き込まれてこの世界に来たんだとしても、嘆いてばかりじゃ何も変わらない。平和な日本とは違い、この世界は弱肉強食だ。周りの変化を望むんじゃなくて、まず自分が変わらなければなにも始まらない……俺達は決して死なない強さを手に入れなくちゃいけない」


俺は自分の拳を確かめるようにして握りしめた。


「まーたまた、厨二っぽいこと言っちゃって〜……たまにはカッコイイこと言うじゃん」


椅子にもたれながら友哉が茶化すようにして言う。


「言動が少し痛いとも思ったが………全くの正論だな。それでこそ和秋だ」


悠馬は眼鏡を片手で上げるという委員長ポーズをしている。


自分でも痛い、と思ったが言って恥ずかしい、ともあまり思わなかった。

これ、厨二病末期かな?


「和秋君、やるじゃん!」

「うん、少しは見直したかも…」


見直したって……華菜。

俺はお前に何か悪い事をした覚えはないんだが?


「……和秋。ごめん、ありがとう」


引き結んでいた口元が緩み、紫は綺麗な笑顔を俺に向けた。

少しドキッとしたのは気のせいじゃないと思う。





「宮脇君、ありがとう!」

「ありがとう」

「クッ、そうか。やはり脇役に…」

「ちょっと元気もらいましたー」

「宮脇、ありがとな!」

「泣けるじゃねぇか…」

「今の動画撮っておきたかったな〜」

「ありがとね」

「ありがとう!!」

「ありがと」

「ありがとう!」




クラスメイトから次々となげかけらる言葉に俺は戸惑った。

みんな俺に向かって「ありがとう」と言ってくる。

クラスメイトにそんな言葉を掛けららたのは蒼以外で初めてだ。


「な、なんで……」


困惑している俺の言葉に、近くに座っていた男子がキョトンとする。


「なんで、って………俺達、クラスメイトだろ?」


そう言って無邪気に歯を見せて笑った。

俺はその言葉に1人、唖然とする。


(もしかして、俺は今まで勘違いしてたかもしれない…)


教室では、宮下がいるときはいつもぼっち。

唯一、当たり障りなく話してくれるのは蒼だけだと思っていた。



胸が暖かくなる。



今、俺はなんとも言えない表情をしているだろう。

その表情を見たクラスメイト達は、みんな、楽しそうに笑っていた。男子は揶揄い、女子は見守りながらも盛り上げている。


(このクラスって、こんなにも暖かかったんだな)


いつまでもこんな風に笑いあっていけたら良い、と思った。


俺にとって世界はこんなにも優しくて、穏やかだった。



ーーーーーーーーーーーーー



(和秋はやっぱり凄い……)



僕は照れ臭そうに笑っている幼馴染を見た。


和秋は幼稚園の頃からの仲だ。

幼稚園の時の僕は女の子と遊んでいて、それをネタによく男の子に虐められていた。

勿論、和秋はそれに巻き込まれて………でもなんだかんだ言って最終的にはいつも助けてくれるのだ。

そんな和秋に僕は憧れていた。

誰よりも強くて決して折れない。

昔から和秋は僕にとってのヒーロー的存在だった。

だからこそ、和秋に隣に立つ為に努力した。和秋に頼ってばかりの情けない僕はもういない。


和秋はいつも僕を避けている。

原因は明白。

僕の所為だ。


体質からくるのかはわからないけど、僕はトラブルメイカーというヤツで、和秋をいつも巻き込んでいた。

和秋に友達がいないのは分かっていた。

いや、以前誰かと教室で楽しそうに話していたのを廊下から見た事がある。でも僕が教室に入ると、まるで何もなかったかのように席へと戻っていった。

それも僕の所為。

悪い事をしているのは分かっている。

和秋離れをしなければならないことも、分かっている。

でも僕が和秋から離れれば和秋が1人になっちゃうんじゃないかと心配になって、また悪循環。和秋の為だ、と何が何でも自分に言い聞かせた。


(……でも、やっぱり僕は間違っていたみたいだ)


和秋にはクラスメイトという仲間がいた。

なら問題ないじゃないか。

僕がもう心配する必要もない。


(やっぱり和秋はみんなに好かれていないとね)


和秋を嫌う人なんて滅多にいないだろう。

嫌う人物は限られてくる。

そう、例えば……


「何あれ?なんであんな奴が……」

「翔の方が、良い」

「…アレは気にするだけ損だ。 翔、食べ終わったのか?ちょっと待っててくれ」




僕に纏わりついてくるクソビッチな女共とか。


読んで頂き、ありがとうございます!

アレアレ?勇者(笑)の様子が……?

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