042 クラスメイト①〜勇者陣営〜
「え?王都ですか?」
「はい、今日の午前中に、皆様には王都タコージのギルドに行ってもらい、属性と魔力値を調べた上でギルド登録をしてもらいます。そして午後には実戦経験として魔物と戦ってもらう事となります。魔物のレベルとしては、訓練を重ねた皆様としては簡単に倒せる物を既に用意してありますのでご安心下さい」
朝早く、呼び出しを受けて広間に集まった俺達にパールさんはそう説明した。
生徒達は魔物と聞いて少なからず動揺しているのが伺える。
「今回は勇者である翔様とヴェロニカ聖騎士団の方々も同行しますので、怪我をする事はまずないでしょう」
みんなの様子を見てリベルさんは不安を和らげるように言ったつもりだと思うが……それは逆効果だと思うぞ?
リベルさんが宮下の名前を呼んだ途端、みんながこの世の終わりみたいな顔をした 。
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王都をヴェロニカ聖騎士団に囲まれながら歩く俺達はまさに異質だった。
生徒37名+ヴェロニカ聖騎士団という大所帯で行動していては国民の皆さんに迷惑がかかると思うのは俺だけか?
他の生徒達は大通りの商店を興味深そうに見ていたり、楽しそうに話していたりする。
「あ〜あ、今日もシルヴィオさんの所に行ってサボるつもりだったのにな〜」
後ろを歩いていた広瀬が声を上げた。
「広瀬、また図書館に行ってサボってたのか?真面目にやった方が良いと思うぞ?」
「堀、固い事言うなよ〜。折角異世界に来たってのに毎日毎日訓練じゃ、サボりたくなるじゃん。宮脇もそう思うよな?」
「全然」
いきなり話を振られてもこま……らなかった。
広瀬はサボりの常習犯である。
訓練が嫌で図書館の件があって以来、何かとシルヴィオさんの所に行って匿ってもらっているのだ。
あと最近気がついたけど、どうやら広瀬は本を読むことが好きらしい。
意外過ぎる。
「あ〜、シルヴィオさんが淹れたリモティーが飲みたい〜」
「リモティーってなんだ?」
聞き覚えのない言葉に俺は首を傾げた。
「そのまんま。リモっていう果物を使って淹れた紅茶だよ。ピーチティーみたいな味がすんだ」
「何それ狡い!」
口を挟んできたのは紫だ。そばには塚田さんと長谷川さんもいる。
「私達もピーチティー飲みたい!華菜と依ちゃんもそう思うよねっねっ?」
初めて王宮の外に出たからだろうか、紫のテンションがいつもより若干高めだ。
「まぁそう言われれば…」
「私もピーチティー飲みたいな〜」
塚田さんはどちらで良さそうだが、長谷川さんはピーチティーと聞いて、興味を持ったみたいだ。
「ということで、広瀬君!今度私達もそのシルヴィオさんって人の所に連れて行って!」
「いや、まぁ良いけど……」
紫の勢いに、珍しく広瀬が引いていた。
「宮脇、堀。お前らも一緒に来てくれるよな?」
どうやら広瀬は俺と堀を巻き込みたいようだ。
「俺は別に良いぞ」
「流石堀! 話が分かる〜」
堀は行く気満々みたいだ。
ここで俺が行かなかったら完全に空気読めないやつだよな…
「塚田さん、長谷川さん。俺達も行くけどそこ大丈夫か?」
女子というのは女の子だけでお茶を楽しみたいという願望を持つものだ。男子が混ざっていて大丈夫がどうか一応俺は2人に聞いた。
「別に気にしないから」
「そうそう〜大人数の方が楽しいと思うしね。それから……」
何故か長谷川さんは俺の方をじっと見てニヤリと笑う。
「宮脇君。同じクラスメイトなんだし、長い付き合いになりそうだからお互いに名前で呼びあわない?」
「依ちゃん?!」
驚いた声を上げたのは紫だ。
「紫、どうした?」
「えっいや…なんでもない」
俺が聞くと、何故か引き下がられた。
「確かに塚田さん、て言われるのも慣れてないしね」
そんな俺達を見て今度は塚田さんが言った。
「あたしの名前は華菜」
「私は依子だよ〜」
「俺のことも和秋で良い。よろしく」
俺は宮下の所為で蒼以外のクラスメイトとあまり交流がなかったからちょっと嬉しかった。
「ちょっと待った〜!俺らを仲間外れにすんなよな〜」
「女子よりも俺らの方を先に名前で呼んで欲しかったがな」
堀と広瀬のことをすっかり忘れていた。確かに普通は男子同士で名前呼びが先だから言いたいことは分かる。
「……ならもう一回このメンバーで自己紹介でもする?」
ずっと黙っていた紫がそう話をきりだした。
「今更だけど、良いんじゃない?」
「そだね〜」
女子2人が紫の考えに賛同した。
「んじゃ、まずはこの俺から!広瀬 友哉16歳、友哉様と呼べこの愚民共!フハハハハ。将来の夢は世界征ふーー」
「長い。堀 悠馬だ。名前で良い」
「塚田華菜。次、依子」
「ご使命ありがと〜長谷川 依子です〜。依子、もしくは依ちゃんって呼んでね〜お次は紫〜」
「七瀬 紫です。名前で呼んでください」
「宮脇 和秋だ。これからよろしく」
「「「「「「・・・・」」」」」」
全員が自己紹介をし終わった後、本当に今更のような感じがして笑いそうになるのを堪える。女子3人は口元を抑えてクスクスと笑っていた。
「……広瀬は広瀬で十分だな」
「ぇえっ?! ほーー悠馬!それ酷くない?!」
堀が悠馬、と呼ばれるのに違和感が半端ない。これは最早慣れだな。
友哉と悠馬のやり取りを俺達は笑いながら見る。
「そこの方々!早く中に入ってください!」
どうやら俺達が自己紹介している間にギルドに着いたようだ。
「すみません。早く行くぞ!」
俺の掛け声に5人して着いてくる。
俺は今いない蒼に、俺がクラスメイトと仲良くなれたこの光景を自慢したくなった。




