036 NFIO
36話です。厨二要素がだんだん明るみになってきました…
夕食を食べ終えた後は部屋で魔力操作の練習をする事が日課となっていた。
ベッドに腰掛けイメージに集中する。
全身から溢れる魔力を血流のように循環させ、手に集中させようとした、その時だった。
〜♪〜〜♫
俺の好きなアーティストのお気に入りの曲が室内に響く。
「……やっときたか」
魔力操作を中断して音のする方へと向かい、俺がこの世界に来た時からずっと大切にしている制服のズボンのポケットを探った。
そこから取り出したのは手で握れる位の縦長で薄い物体。
つまりスマートフォンだ。
「もしもし」
俺は通話ボタンを押す。
誰からかかってきているか、なんて分かりきったことだ。
『あーあー、もしもしー蒼君?聞こえてるー』
「聞こえてますよ。お久しぶりです、榎本さん」
電話口から聞こえてきたのは快活そうな女性の声。
相手は予想通りの人物である。
『おーぅ、久しぶり‼︎蒼君、そっちはどう?元気にしてるー?』
「はい、今の所なんとかなってます。…今回は随分と捕捉に時間がかかりましたね?」
『ごめんごめんー!運悪くそっちの世界に行った事がなくてさー、探すのに時間かかっちゃった。一昨日見つかった後はすぐに電話したんだよ?でも出なかったからさー』
「その節はすみません。此方からもかけられれば良かったのですが…」
『それはしょうがないからきにしないで。そうゆうものなんだし』
そう、あっちの世界からはかけられてもこっちの世界からはかけられない。
ずっと圏外になったままだ。
『それよりさ、蒼君どうする?こっちに戻ってくるの?』
俺は榎本さんの質問に違和感を感じた。
「え?戻っても存在はなかった事にされてるんですし、意味はないでしょう?」
異世界召喚されたり、迷って偶然異世界に辿り着いた者は世界からの修正がかかって存在自体がなかった事にされる。そういうシステムなのだ。
『今回は修正はかからなかったみたいでね、もうこっちは大騒ぎ‼︎TVで蒼君達有名人だよ?集団神隠しだー、とかなんとか言ってるし』
その話を不思議に思って聞いていたが、俺は少し安心していた。
戻れても居場所があるのは幸せなことだ。
「そうなんですか…何で修正をかけなかったんですかね?」
流石に1クラス分の修正は間に合わなかったんだろうか?
『あ、それ多分蒼君の所為』
………………は?
どうしてそこで俺の所為になるんだ?
ちょっと意味不明だ。
黙り込んでいる俺に榎本さんは続けて言う。
『修正をかけたんだろうけど、効かなかったんだと思うよ?蒼君さ、異能者じゃん。きっとそっちの世界に行った異能者は蒼君が初めてだったんだね〜、おめでと〜!」
褒められても全然嬉しくない。
「……ありがとうございます。ということは世界の力は俺に通用しなかった、と。同じ場所にいた生徒達も俺の影響を受けてしまった、と」
『正解。伊達にNFIOに入ってる訳じゃないねー』
榎本さんが揶揄うように言う。
「異能者はどこかしらの組織に入ってるじゃないですか」
『ま、そうなんだけどさ〜、……それ本気で言ってる?』
急に声のトーンが低くなり、ドスの効いた声が聞こえた。
「分かってますよ」
入団前に口煩くここがどういった組織なのか散々説明された。
ちゃんと理解しているつもりだ。
「それなら良いや!」
さっきとは打って変わり、明るい声が響いた。
New human faith international organization
ー通称NFIO
日本名では《新人類信仰国際組織》という。
異能者の為の、異能者の組織だ。
36話、如何でしたでしょうか?次はNFIOの説明回になると思います。
感想なども待ってます。




