030 ②
30話です
「…もうそろそろ王宮に戻るか」
俺の言葉に堀はそうだな、と言って椅子から立ち上がる。
「…でもこれ、どうするよ?」
広瀬は積み上がった本の山を指差して言った。
「片付けるしかないだろうなぁ…」
「そうだね、図書館の人に任せるのもありだと思うけど、俺達がこれを見たと知られるのは避けたいしね」
王宮にいる人達は俺らに歴史の真実を知られたくないんだ。図書館の人に片付けを任せたらそこから足がついてしまう。
俺達3人は歴史書を抱えて本が元あった本棚に向かう。
するとそこには1人の女の子がいた。そこの本棚をうろうろとしていて離れようとしない。
「あ〜、ごめん。ちょっといいか?」
「わっ‼︎」
俺が話しかけると女の子が驚いたように振り向く。顔を見ると、同じクラスの川田さんだった。
「ご、ごめん‼︎」
俺達の抱えた大量の本を見て何の目的で話しかけたのか分かったのか、すぐにどいてくれた。
「ありがとう」
俺は川田さんにそう返して、堀と広瀬と共同で本を本棚に返し始める。
川田さんは何故かそれをジッと見ていた。
「ごめん川田さん、俺達が大分本を持ってっちゃったからきっと困ってたよね?」
可能性の中で1番考えられる事を広瀬が口にする。
「えっ、いや違くて。本が目的じゃないんだ」
「⁇なら何でここの本棚にいたんだ?」
慌てたように答えた川田さんに、今度はおれが話しかける。
「えっと…笑わない?」
「それは内容にもよるけど…分かった。笑わない」
俺の言葉に川田さんは緊張したような表情を少し緩めた。
「じゃぁ、話すね。私の能力は空間把握能力なんだけど…。この本棚の奥に、何かスペースがあるんだよね」
「え?それじゃあ隠し部屋があるって事?」
勢いよく食いついたのは広瀬だ。
「う、うん。多分そうだと思う…。でも勝手に本棚を動かしちゃいけないし、でも気になるし、どうしようかなぁと思って…」
「……いっそのこと図書館の人に言ってみたら?」
「え?」
良いアイデアだと思ったんだけど、駄目かな?
「この図書館ってかなり古いものなんだろ?だったらその隠し部屋の事だってこの図書館の人も気付いていないかもしれないし」
こんなのは建前で、俺はぶっちゃけ隠し部屋を見たいだけだ。
「でかした宮脇‼︎んじゃ早速俺は図書館の人に伝えてくるな‼︎」
俺にそう言うなり広瀬は走ってカウンターの所に行ってしまった。
数分後、広瀬が1人の男性を連れてくる。
まだ若く、20代くらいに見える。
「お待たせ!こっちの人がこの図書館の司書を務めているシルヴィオさん」
「シルヴィオと申します。お見知り置きを」
シルヴィオと名乗った男性は俺達に微笑み、胸に手をあてて会釈した。つられて俺達も会釈する。
「これがその本棚ですか…」
シルヴィオさんはまじまじとその本棚を観察する。
「……どうでしょう?」
川田さんが不安げに尋ねた。
「今までこの図書館に隠し部屋などが無かった事自体考えられないのです。動かしてみる価値は十分あります」
本棚から視線から外さずにそう言うと、少し離れていて下さい、とシルヴィオさんは俺達に言う。
距離をとった俺達を確認してシルヴィオさんは本棚に片手を添え、何か呪文を詠唱し始めた。
するとシルヴィオさんと本棚の下に魔法陣が現れ、本棚が浮く。
「うぇえ⁈」
「馬鹿、魔法だ」
狼狽する広瀬を俺は落ち着かせた。いくら何でも驚きすぎだ。
シルヴィオさんが添えた手と同じように本棚が動き、元あった場所から本棚が完全に外される。
そこには一枚の、今にも崩れ落ちそうな木製の扉があった。
「どうしますか?開けてみます?」
シルヴィオさんが聞いてきた。
「ここまできて開けないっていうのはちょっと…」
そう答える堀に俺達も同意見だ、とシルヴィオさんに伝える。
「……誰から入る?」
「そこは見つけた川田さんっしょ」
「えっ⁈」
広瀬が指名したのは川田さんだ。
確かにこの場所を探知した川田さんには一番最初に入る権利がある。
「ちょっ、待ってください‼︎一応これは隠し部屋です。何か罠がある可能性があります」
シルヴィオさんは慌てたように言った。
確かに罠が仕掛けてある危険性があるのは否定出来ない。
「私が1番最初に入りますか。幸い、罠も解除出来ますから。君達は後ろから付いてきてください」
俺達に了承を得ると、シルヴィオさんは扉に手を掛ける。扉がギシギシ言って怖い。
扉を開くとそこは普通の狭い部屋だった。
テーブルと椅子に小さな本棚、それ以外は何もない寂しい部屋だ。
罠はテーブルの引き出しに一つ仕掛けられていたらしく、シルヴィオさんが解除中だ。
「何か、思っていたよりも不気味だな…」
広瀬が俺の心の中を忠実に言葉にしてくれたおかげで、俺は少し恐怖心が薄くなった。
「これ、一体何百年前の本なんだ…」
部屋の中にあった本棚を手にとっていた堀が言う。古代文字だから読めない、という訳ではないらしく現代の文字と似たような文字が使われていて大体は読むことが可能であった。
「解除が出来ましたよ」
そうシルヴィオさんに声をかけられて、早速中を見ようと引き出しを開ける。
「これは本、だよね?」
川田さんが初めに声を上げた。
引き出しの中に入っていたのは著者も題名も書いてない、真っ黒な薄いハードカバーの本。
「何が書いてあるんだろう…」
川田さんはその本を手にとって最初のページをめくり、読み始めた。




