025 スラム①
25話です
聞き込みをすると言っても俺は所詮追われる身であり、あまりこの街に長居したくはない。
明後日くらいには切り上げて違う村に向かいたいと思っていた。
考えていても始まらない。
俺は闇雲に足を進める。スラム街なんで唯の人のはきだめだ。探すまでもなく人は居るだろうと思い歩みを進める。
しかし幾ら歩いても人が見つからない。
これは変だ、と俺が足を止めたところで人の足音がした。
「あんた、どこのもんだ」
いきなり後ろから話しかけられて振り向こうとしたが、首にひんやりとした冷たい物をあてられて身体の動きを止められるのには十分だった。
「振り向くな、ここを誰の縄張りだと思っている。どこから入った」
声からして若い男。
嘘をつけば殺される、と思った。だからつい、言ってしまった。
「空から来ました」
「……あんた俺を馬鹿にしてんのか」
「し、してませんしてません‼︎本当に空から来たんです」
「……」
必死で言い募る俺に嘘はついていないと判断したのか、首に当てられていた刃物が離れた。そこでやっと背後にいた男が俺の前に姿を現わす。
肌はスラムにいるにも関わらず健康的な色をしており、髪型はマッシュのツーブロックショート。意思の強そうなキリッとした瞳で鼻は高い。
一言でいうと茶髪茶目のイケメンだった。
背も蒼より高く、180cm以上ありそうな位だ。
雑誌に出てきそうなイケメンの登場に、今度は別の意味で固まってしまった。
イケメン滅びろ、とまではいかないが神は何故ここまで不平等なのだろうと思う程、イケメンの顔は整っていた。
「おい、こいつを拘束しろ」
イケメンのかけた声で、周りから一斉に人々が姿を現す。
隠れていたのか、道理で人を見かけない筈だ。
一番俺達の近くにいた少女が何処から持ってきたのか、縄で俺の手を縛った。かなりきつく縛られたので絶対に痣になっているだろう、痛くて仕方ないが文句を言ったら確実に仕留められそうなので何も言わなかった。
「今から俺らのリーダーの所に連れて行く。お前の処遇はリーダーが決める」
付いて来い、とイケメンが言い、俺は大人しくついていくことにした。周りには俺が逃げ出さないようにと大人で固められゾロゾロと集団で歩いていく。
少し泣きそうになったのは言うまでもない。
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スラムは専ら迷路のようだった。
きっとこいつらのリーダーは態と分かりにくくしているのだろうけどそれでも分岐が多すぎだ。1回ではとても覚えられる気がしない。
分岐を何度も繰り返し、最後に地下に続く長い階段を降りた。
こいつらのリーダーは地下室に入るのか、と思ってついていったが、大きく予想を裏切られた。
長い階段を下ればそこは巨大な地下街。地上に異様に人が少ないと思っていたが、大抵の人が地下街を拠点としているのは予想外だった。
イケメンは一度も後ろを振り返らずにまっすぐ目的地まで向かっていく。
着いた先は一見他と同じ様な普通のバー。
店の中に入ると客はちらほら見かけられた。
「俺にはジン、こいつにはエールを頼む」
こいつには、のところで俺を親指で指しながらマスターに注文する。
「かしこまりました」
老年の、穏やかそうなマスターは返事をし、一つの鍵をイケメンに渡した。
イケメンはそれを受け取ると、バーの奥の方にある扉へと向かっていく。鍵を差し込み扉を開くと、そこは広い部屋になっていた。
部屋には黒光りするソファーに悠然と座っている男がいる。確かにリーダーたる威厳を持っている男で、近づくと萎縮してしまう。
「カルロさん、侵入者を連れてきました」
「レオナルドか、御苦労だった」
どうやらリーダーはカルロというらしい。
俺はイケメンーレオナルドに縄を引っ張られ、カルロの前に引きずり出された。
カルロの眼光に真っ向から晒され、俺は冷や汗を流した。
「……お前、名前は」
「…?」
「カルロさんのお手を煩わせるな!早く言え!」
いきなりの質問に反応が出来なかった俺に素早くレオナルドの罵声が飛ぶ。
「っ‼︎…ソウ=カミムラです」
知り合ったラムとマイクの教え通りに、俺は本名を名乗ることはしなかった。
答えた俺にカルロは眉を顰め、目を細める。
「嘘だな」
この世界の奴らには嘘発見器のレーダーかなんかついてんのか?




