24 ④
24話です。
申し訳ありませんが、蒼の姉の名前を物語の都合上、紗英から紗夕に変更しました。
「君、君!大丈夫か?」
そう肩を揺すぶられて俺の意識は浮上した。
目の前にいる警官姿の男性を見て、今ここが住宅街の路上だと言うことに気付く。
「…は、えっ⁈」
俺は急いで身体を起こし、警官の男性に向き直る。
「良かったよ、目立った怪我もないようだし。どこか痛い所はないかい?」
「……え?」
警官の言葉にそんな筈はない、と思った。
だって意識を手放す前までは身体を動かせない程男達に自分は痛めつけられたのだから。
しかし幾ら確認しても怪我はないし、痛みさえもない。完全に襲われる前までの状態に戻っていた。
あれは夢だったのか、と思う程俺は馬鹿じゃない。何より視界に映る横転した白いワゴン車が何よりの証拠だった。そして数メートル先にブルーシート。よくテレビでみるあれだ。
あの方向は男達が吹き飛ばされた方向である。何か嫌な予感がした。
「……あの、俺達を襲った男達はどうなったんですか?」
俺の質問に警官は黙り込み、何か言いにくそうな顔をしていたが、俺をまっすぐに見つめて有無を問わない表情で俺に言い放つ。
「その事も含め、君に聞きたい事がある。署まで同行してもらおうか」
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警察にお世話になった、という表現は誤解を生むと思うが、実際にお世話になった。
まずは事情聴取から始まり、取調室で詳しく話す事になった。勿論、怪我の事や俺の力のことは黙っていた。
俺達を襲った男達は既に帰らない人となっていた。死因を問うと、それも分からないらしい。解剖に回して原因を探っているということだ。
俺の力を見たのはあの男達だけだ。
晃輝達はその頃にはもう気絶していた。だから俺はスタンガンを当てられて気絶したと嘘を吐いても全く疑われなかった。
「……分かった。話してくれてありがとう。それともう一度聞くけど、本当に男達以外に誰もいなかったんだね?」
「はい、いませんでした」
曖昧な表現はしない方が良いと思い、そう言い切る。
「うーん、いやね、君を疑っているわけではないんだよ?寧ろあんな殺し方は不可能に近いからね」
「……?どういう状態で遺体は発見されたんですか⁇」
一応事件関係者な為、聞いても別に構わないだろうと思い、疑問を口にした。
「……なんというか、こう…パーン?と内側から破裂したような?そんな状態だったんだよ。小型爆弾だとしても遺体から残骸位は発見されるんだけど、未だ見つかってなくてね。まさか自分から飲み込んだとも考えにくいし、変死、だね。」
「……そうですか」
聞かなきゃ良かった、と後悔した。
現場はさぞかしグロテスクな光景だっただろう。
しかし俺はこれはこれで好都合だった。自分の力を知る者はいないのだ。死んで良かったとさえ思っている。
「とりあえず、今日は帰っていいよ。村上君も疲れていると思うし、家には連絡がいってるから帰って家族を安心させてあげなさい。また呼び出す事もあると思うから、把握しておいてね」
「はい、ありがとうございました」
「ご協力感謝します」
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取調室を受けていた為、帰る時間帯がすっかり遅くなってしまった。
「ただいま」
返事は返ってこない。
靴を脱いでリビングに向かう。リビングには父と姉がテレビを見ながら夕食をとっていた。テレビの気象庁では今日の夕方頃に史上最大規模の暴風が部分的に発生した事が報道されていた。
「お帰り」
「……」
姉はお帰りと言ってくれたが父は無言だった。
「……何やったの?」
姉が問いかけてくる。
連絡がいっている、と言っても事件の内容までは話していないみたいだった。若しくは警察側が隠したいのかどちらかだ。
警察は死亡の原因が分かるまで決して事件を公表しないだろう。しかも男達を殺した犯人は未だ逃走中、もしかしたら化学兵器を持っているかもしれないなんて国民にバレたらとんでもないことになる。
「誘拐に巻き込まれただけ」
「ふーん」
姉はそう返し、興味を無くしたようにまたテレビを見続ける。
「紗夕、行儀が悪いぞ」
「はーい」
俺に一瞥もしないで食事を続ける父は姉にそう注意した。
この頃には、俺と家族の間には疑いようもない亀裂が入っていた。
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二階に上がり、荷物を適当な場所に置く。
ベットに倒れこんでゴロゴロと転がる。
(……今日は疲れた)
誘拐事件に巻き込まれ、なんかよく分からんが力が覚醒した。厨二だけど、本当に力が覚醒した。
だからと言ってこの力を使う機会もないし、今までと同じような暮らしをしていくのだ。
部屋の角にユーリアがいた。
何故か上機嫌な微笑みを浮かべている。まるで頑張ったから褒めて、と言っているようだった。
(……?なんで俺はそう思ったんだ?)
ユーリアの心情が何故か手に取るように分かった事に疑問を感じた。
不思議そうな顔をしている俺を見てユーリアは片手を俺にまっすぐ伸ばす。
手を重ねて、と言っているようだ。
とにかく俺はユーリアが思っている通りにした。
手が重なるような感覚がした瞬間に俺の脳内に早送りで再生される光景。逃げ惑う男達と血飛沫。血の雨ってこういう事を言うんだな、と思いながら目の前にいるユーリアに声をかける。
「ユーリア頑張ったな。助けてくれてありがとう。」
俺がそう笑いかけると、ユーリアはとても綺麗に笑ってくれた。
こうして俺とユーリアは共犯者となった。




