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すみませんが、誰か助けてくれませんか?え?そんな余裕はない?ではさようなら  作者: 南瓜
序章 始まりは計画的に、終わりは唐突に
23/84

22 ②

22話です。


そう、あれは俺が中二に上がったばかりの頃に起こった。


俺は部活の帰り道、友達と3人で話しながら歩いていた。

俺が通っていた中学校から少し離れた所に私立の小学校がある。結構有名な小学校で、制服も指定の、所謂お坊っちゃま達が通うような学校だった。それに伴い絶えないのが不審者。まぁ、ファンとかいるらしく、昼休み中などに頻繁に不審者や変質者の情報が校内放送で流れていた。


俺達がそれを見たのは本当に偶然だった。


友達の家からの帰りだったのだろう、小学校低学年位の女の子が数メートル先で俺達の前を歩いていた。その辺りは住宅街で、その子の家も近所だったようだ。日が暮れたとはいえ、その子もすぐ家に着くと思っていたのだろう。


前から白いワゴン車が走ってきて普通に女の子の横を通り過ぎるかと思っていた。


しかし、車は女の子の横に停車し、車の窓から何かその子に話しかける。


女の子は嫌がるような素振りを見せた後、ワゴン車の後ろの扉が勢いよく開き、男性3人が引き摺るようにして女の子を車に乗せようとした。


流石の俺達も目の前で繰り広げられる光景を黙って見ている事なんて出来なかった。



「待ちやかがれっ‼︎」


まず最初に飛び出したのは、俺の幼馴染の陽介だった。

猪突猛進タイプの陽介は、その正義感からすぐ様行動に移し、女の子を無理矢理車に乗せようとしている男性の一人に殴りかかった。


結果、行動自体は正しかった。一番、とは言わないが、手段としては有効だったと思う。

しかし問題だったのは、陽介は同年代と比べて幾分か小柄だった事であった。


陽介は殴りかかったのは良いものの、そのまま男性に丸め込まれ、何を思ったのか陽介さえ車に乗せようとしていた。

次に動いたのは同じ部活のメンバーである晃輝(こうき)だった。


「俺は陽介達を助けに行くから蒼は誰かに知らせてくれっ‼︎」


そう言って晃輝は陽介を援護しに行く。相手は大人の男。子供だからといって舐めているのか、逃げる素振りはない。


幸い此処は住宅地、俺はすぐ近くにある家のインターホンを押し扉を力強く叩いた。


「すみませんっ‼︎誰か居ませんか⁈誰かっ」


俺達3人とも携帯はまだ持っていなかったので、通報してもらうしかなかった。

1件目は空振りかと思ったが、騒ぎに気付いてくれたのか、家の中から女の人が出てきた。


「一体なんの騒ぎですか?」


女の人が怪訝そうな顔をして扉から顔を出す。


「すみませんっすぐそこで不審者に襲われているんです‼︎通報して下さいっ‼︎」

「‼︎分かりました‼︎」


女の人がすぐ様ポケットの中に入れていた携帯を取り出し、110番通報する。


みなまで見ないうちに俺は駆け出し、陽介達の援護に行った。


かなり揉めているようで、大人達の方も焦りが出ている。俺は車のナンバープレートを確認して覚え、半ば乱闘状態の所に突っ込んだ。


「警察に通報した‼︎諦めろ‼︎」

「畜生っ」


不審者の1人が俺の叫びに悪態をつき、襲いかかってくる。不審者とはこうも馬鹿なのか、諦めが大分悪い。こういう時に部活での技能は役に立つ。俺はバスケ部に所属していたので避ける事は簡単に出来た。しかし反撃する機会が見つからない。他に視線を向けてみれば晃輝も俺と同じような状態に陥っていた。陽介は女の子を庇いながら手を振り回して抵抗している。

最早、時間の問題だった。

兎に角早く警察が駆けつけてくれることを祈るしかない。時間を稼ぐことしか俺の頭になかった。


ーバリ、と電気が走るような音がした。


音のした方を見ると陽介が地面に倒れている。陽介の側にいる男の手にはスタンガンが握られていた。

俺は漸くこれはただの不審者ではない、と気付いた。

警察はまだ来ない。

晃輝は陽介が倒れた事に気を取られて相手に一発入れられてしまった。其処からは防御も出来ずに殴られ蹴られ、弱々しく呼吸をしている。


いつの間にか、立っているのは俺と男達だけとなった。女の子は気づけば陽介の側に倒れている。絶対絶命だった。


晃輝と同じ様に殴られる。地面に倒れてからは正に袋叩きだ。頭を防御してひたすら耐える。


(…どうしてこうなった)


中学生が半端な正義感で動いたからこうなったのだろうか。それでも俺達がした事は決して間違っていない。そう思いたかった。

正義は悪に勝つのではなかったのか。人々を救ってハッピーエンド、それが綺麗な終わり方だ。

結局、現実は現実でしかなかった。


俺が動かない事を確認した男達は暴力を止め、女の子を車に乗せた。その後少し口論のようなものをして、今度は俺達を車に乗せ出した。まだ子供とはいえ、俺達は中学生だ。乗せるのに手間取っているようだった。


朦朧とする意識の中で、ユーリアの存在に気がついた。焦点が定まらない中、彼女の顔がハッキリと見えない。彼女が俺に駆け寄ってくるのは分かる。今彼女はどんな表情をしているのか、心配してくれているのか。

彼女の顔がすぐ近くに寄ってくる。


ユーリアの瞳から大粒の涙が溢れ出していた。

それが分かった瞬間、俺は全身の血が沸騰するような怒りを覚えた。


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