019 嘘つきの逃走
「さて、外にはもう衛兵を待機させてある。大人しく捕まってくれると嬉しいんだけど…」
冗談じゃない。何故俺がこんな目に遭わなければならない。当然答えはNoだ。
「…お断りします」
「そう、でも逃げられないよ?この数の冒険者から逃げようと思う程君は馬鹿ではないだろう?」
「……」
シリウスが俺に笑顔でそう諭す。確かに普通ならこんな絶望的な状況で捕まるしかないだろう。普通なら、の話だけど。
「生憎、俺は普通じゃないんでねっ‼︎」
最後の方は半ばヤケクソ気味に言った。
途端、俺の周りには暴風が吹き荒れ、遠心上にいた人間が吹っ飛ぶ。勿論シリウスも例外ではない。
すぐに風を収束させて簡易版の小さな竜巻のような物を作った。俺は今、台風の目のような存在だ。誰も近づく事は出来ない。どこからか「能力持ちだっ‼︎」という声が聞こえてきたが、意味分からん。能力持ちって何だ?
ギルドの扉の前に立つと風の影響か、外開きの扉は激しい音を立てて勝手に開いた。
確かに外には衛兵が5人程居たが、訳も分からず風に吹っ飛ばされた様だ。仕事に来ただけなのに何か悪い事したな。ごめん、と心の中だけで謝る。
伸びている衛兵を放置し、俺は足に風を集めた。足に力を入れ、大きく跳び上がる。
風の力を借りた俺の身体はギルドの高さを祐に超え、屋根に着地。着地する時も風の力が加わっているので足の負担は0だ。どんどん力を使い、屋根から屋根へと移動する。兎に角ギルドから離れようと必死になり、俺は町の外れを目指した。
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(……やられた)
まさか相手が能力持ちだとは思わなかった。予想外もいいところだ。
「ギルド長、お怪我はありませんか?」
「…あぁ、大丈夫だよ。キアラも大丈夫かい?」
「はい、なんともありません。しかしこれは…」
そう言ってキアラはギルド内を見た。書類やペン、机や椅子までもが散乱しており、冒険者に至っては怪我人が続出だ。このまま業務を続けるのは困難だろう。
久しぶりにギルド長らしき事をするのも良いかもしれない。
パンパン、と冒険者達の注意を引くために私は手を叩いた。魔力を込めて手を叩いたので冒険者達はすぐ様私に視線を向ける。
「はい注目。これからギルドの片付けするから手伝ってね。怪我人は処置するから此方へ、あとさっきの逃走者についての情報を提供してくれる人は私の方へ」
冒険者達は渋々といった様に動き始める。逃走者についての情報はあまり期待しない方がいいだろう。
「ギルド長、用紙が見つかりました。」
キアラは私にそう言ってギルドの登録用紙を渡す。そこには名前以外何も書かれていない。
「名前だけ分かれば十分だよ。これと目撃情報を元にすぐ手配書を作成して」
「わかりました」
この町のギルド長を舐めもらっては困る。
明後日辺りには他の町へ手配書も回っているだろう。
これは暫く忙しそうだな、と思い溜息をついた。




