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すみませんが、誰か助けてくれませんか?え?そんな余裕はない?ではさようなら  作者: 南瓜
序章 始まりは計画的に、終わりは唐突に
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01 prologue①



 「ーーでさ、本当マジふざけんなってんだよ、あ〜もうイライラする!」


 「落ち着け落ち着け、はい、ヒッヒッフー」


 「それ違うから」



 .....真顔で返されてしまった。地味にショックだ。のってくれても良いのに。

 俺こと村上(むらかみ) (あおい)はただいま友人、宮脇(みやわき) 和秋(かずあき)の愚痴を聞いている。



 「…そんなにムカつくなら言えばいいじゃん、本人に。ウザいって」



 かなり苛ついている和秋に、俺は至極当然の答えを返したつもりだ。



 「そんな簡単に言えたら苦労しねぇって!宮下の周りがいかにガードが堅いか分かってんだろ?」



 和秋は真剣な表情をしながら言った。



 「ちょっ、そんな大声で本人の苗字だすなって!」


 「…別にいいだろ、本人いないし」



 そう、話しの渦中にいる人物はちょうど今教室にいないのだ。なんでも他のクラスに出払っているとか。

 …周りにハーレムを作って。

 眉目秀麗、成績優秀、運動神経抜群の三拍子に恋愛事にはとことん鈍感な、その名も宮下(みやした) (かける)

 どこのエロゲの主人公かと突っ込みたくなるほど、存在自体が巫山戯た奴だ。周りは常に特定の女子で囲まれており、男にとっては敵である。しかし、人生良い事ばかりではない。

 奴を取り巻いている女子がゲスい。とにかくゲスい。これぞ類は友を呼ぶというやつだ。


 取り巻きその1は、長い金髪を縦ロールにしている、偉そうな奴。


 取り巻きその2はこの学校の生徒会長。


 取り巻きその3はヤンデレ。終わり。


 取り巻きその4は

 「べ、別にあんたの為じゃないんだからねっ!」 とか平気で言っている、痛々しいツンデレ。


 全員が輝かしい美少女だ。

 名前? んなもん知らん。生徒会長の苗字でさえ分からん、興味なし。

 この4人でいつも宮下を取り合っており互いに牽制しあっているが、ぶっちゃけ本人達よりも周りのダメージが凄い。授業中なのに教室に乗り込んで来るわ、昼休みは女子4人の席の取り合いで本来そこの席の奴は座れないわでとにかく凄い。それに誰も文句を言わないのは(社会的に)抹殺されるからであって、そんな勇者はこのクラスにいない。教師でさえも怯える始末だ。

 因みにこのクラスの担任の先生は2人目である。1人目の先生はとても優しい雰囲気の女の先生だったが半年でノイローゼになり、今は療養中だ。残念だがこの学校に戻ってくることは期待出来そうにないし、きっと本人も戻りたくないだろう。

 笑えない。



 「てゆーかさ、あいつがいない時しか蒼と喋れないこともさ〜、我慢できないってゆーか、なんと言うか…」



 和秋が少しだけ拗ねたように言った。

 

 

 「……和秋、ごめんな」



 和秋は良い奴だ。

 基本おちゃらけた奴だけど、なんだかんだ周りのことをいつも気にしてくれる、優しい奴だ。和秋と宮下は幼馴染みで、今までずっと一緒だったらしい。宮下が和秋に一方的にひっついていただけだそうだが。俺は和秋と高校になって出会ったから知らないが、和秋はずっと宮下に振り回されていたみたいだ。この吾妻第二高等学校は附属の中学があり、持ち上がりの奴らが結構いる。俺は外部ということもあり、持ち上がり組から色々な情報をもらったりしてその中で最も関わってはいけない奴No.1が宮下 翔だった。クラスに宮下が居るだけでも被害が半端ないのに、傍に居たらもっとくる筈だろう。和秋本人は言わないが、そのせいで友達と呼べる奴が居なかったという。

和 秋とは今は宮下がいないからこうして話せるが、普段はやつの傍にいる。

 他の人の迷惑にならない様に、と必死にクラスメイトを自分から遠ざけているのだ。クラスの奴らも和秋には感謝していて、和秋が宮下のストッパー役になってくれているから結果的に取り巻き達も止められる。なのでクラスの奴らは基本的に和秋には友好的だ。寧ろ、影から好かれている。愚痴をいつも聞いているから分かる事だが、和秋が宮下を邪険にしていることが分かる。無理もない。

 何で宮下も幼馴染みにそこまで言われて離れないんだ。普通離れるだろ普通。しかしここで厄介なのが取り巻き達だ。宮下から離れようと和秋が本人を突き放してもそれが取り巻き達に伝われば奴らは脅しを掛けてくる。和秋はそれを渋々受け入れ、今の立ち位置に収まっているしかないのだ。

 俺は和秋をこの状況から助けてあげたいのに、愚痴を聞くことしか出来ない。



 (…結局俺は自分がかわいいんだな)



 ふと、俺は時計を確認した。授業開始3分前だ。

 3時間目と4時間目の間の休み時間。生徒にとってはちょうど眠くなる時間帯。教室には殆どのクラスメイトが戻ってきていた。


 ぼーっとしている奴

 机にうつ伏せになって微睡んでいる奴

 窓際の奴なんかは肘をつきながら晴れた空を見上げている。



 「和秋、授業が始まるからもう席着け」



 俺は自分の席に座り、和秋に向かって言った。



 「えー、もうちょっとだけいくね? 次の古典って林のじっちゃんだろ?いつも2、3分遅れて来んじゃん」


 「俺眠い」


 「うわっ、むっちゃ私情!!」




 ーーガラガラ




 そんな会話をしていると、宮下を先頭に取り巻き達が教室に入ってきた…というか何で取り巻き達いるんだ?もうすぐで授業始まるけど?

 宮下達を見た瞬間、席に戻ることを渋っていた和秋が素早く席に戻っていった。

 マルデナガレルミズノヨウダ。



 「それでですね、翔!!」


 「ちょっと、さっきから鷹宮(わしのみや)さんの話しばかりじゃん!翔、今度は私の話しをきいてよ。ねぇ、いいでしょ??」


 「…確かに鷹宮さんだけずるいのは認めるけど、そこで何で貴方の話しになるのよ」


 「…ダメ、今度は私の番」



 取り巻き達は誰が宮下に話をするのか揉めているようだ。何よりうるさい。もっと声量を落としてくれ。いい感じに黄昏ていたのに。

 席に座りながらそんな事を思った。









 ーーカチ









 視界の端に、時計の針が1つ進んだのが見えた。先生はまだ来ていない。


 授業開始2分前


 そう、授業開始2分にそれは起こった。



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