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すみませんが、誰か助けてくれませんか?え?そんな余裕はない?ではさようなら  作者: 南瓜
序章 始まりは計画的に、終わりは唐突に
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013 町

 子供の笑い声がする

 一体何がそんなに楽しいのだろう


 まるで御伽噺のお花畑のような場所に二人の子供がいた

 一人は女の子でもう一人は…男の子だろうか?花で何かを作ったり遊んだりしている

 二人とも俺には背を向けてはしゃいでおり、笑い声だけが響く


 これは夢だ、と俺はなんとなく思った

 夢でなければこんなにも綺麗な場所がある筈がない


 男の子の方が女の子に花冠を被せた

 女の子は嬉しそうに笑い、お返しに、と花冠を作り始める




 …あれ?

 何で俺は二人のやり取りが分ったんだ?

 俺がいる位置からじゃどう頑張っても見える筈がないのに

 あれ?



 突然聞こえていた笑い声が止まる


 気か付けば荒野にいた 空は灰色に染まっている

 そこに一人の少年が立っていた

 さっきと同じように俺に背を向けている

 俺は何故かその背中を知っているような気がした

 一体どこで見たのだろうか?


 そんなことを考えている内に少年がゆっくりと振り返る



 瞳の色はすきとおった空の色




 ーーあぁなんだ、『俺』じゃないか



 ◆◆◆◆◆



 「--?!」



 飛び起きるようにして目が覚めた。太陽はもう高いところまで昇っている。



 (…なんだか不気味な夢だったな)



 夢の中とはいえ、自分に会うということがとても不快に感じた。思わず両腕をさする。

 自分がいる路地のすぐ近くから人々の忙しなく動く音が聞こえ、流石にいつまでも路地にいるわけにはいかない、と路地を出ることにした。


 通りへ出ようとした瞬間、前を白い鳥が横切り空へと舞い上がる。



 「…凄い、俺本当に異世界に来たんだ」



 俺は小さく呟いた。

 アニメや映画の中でしか見たことのない光景に改めて自分は異世界に来たんだな、と思う。確かに一週間ほどシャレーヌ村にいたが、外れの村だけあって全く町に行くことはなかったのだ。


 様々な髪の毛や瞳のいろをし人々、耳や尻尾などがあるのは獣人だろう

 他の店と競い合うように声を張り上げる露店の客引き

 自分の武器や防具を互いに自慢しあう男達


 家の造りや町の人々の服装を見てみると、どうやら文明的には中世ヨーロッパまで発展しているようだ。



 (まずは武器屋に行って短剣を鑑定してもらおう。そのあとはギルドに行って登録もしなくちゃな)



 レンガ造りの大通りを、露店を見物しながら足を進める。

 これからの事を考えると楽しくなってきた。



 ◆◆◆◆◆

 


 「ふんふふ~ん♪」


 俺は今とてつもなく機嫌が良い。

 ーーというのも、武器屋に行って鑑定してもらった短剣が予想以上に高値がついたからだ。

 数十分かけて探し出した武器屋の強面のおっさんに鑑定してもらったが、なんと短剣に銀貨3枚の価格がついたのだ。何故かその短剣におっさんは感動して逆に譲ってほしいと頼み込んできたの で追加銀貨1枚を条件にその場で売ってしまった。


 俺はちゃんとシュラインから通貨の事は教えてもらっていた。金は大事だからな、そこらへんは抜かりない。

 この異世界では通貨は世界共通で、銅貨、銀貨、金貨、オーナブルの4種類がある。銅貨10枚で1銀貨、銀貨10枚で1金貨、金貨5枚で1オーナブルである。

 ラノベ知識上、金貨の上は白金貨だったりするのだが、異世界なので違いがあって当然だ、と理解した。


 時刻はちょうど昼時、町の露店を見ながら右手に持っている果物を一齧りする。

 ジャグっと音をたてれば甘い蜜柑のような味が口いっぱいに広がる。見た目と大きさは桃そのものだが、色はまるでレモンのように黄色い。露店の果物屋で買ったそれはリモの実という果物らしい。



 (異世界で初めての買い物は本当にこれで良かった…)



 つくづく短剣 (とおっさん)に感謝した。



 (そろそろギルドに行かなきゃいけない)



 が、道が分らない。

 いくら土地勘がないとはいえ、武器屋に行くのにも数十分かかったのである。

 町には武器屋が幾つもあるが、ギルドはそうもいかないだろう。



 (こればかりは誰かに聞くしかないか…)



 そう思い、辺りを見回す。

 露店の人に聞こうとも思ったが生憎今は昼時で一番込む時間帯だ。邪魔をしてしまうのは申し訳ない。だったら暇で話しかけやすそうな人に限る。ひたすら町行く人を観察していると一人の女性が目に入った。

 眉上の前髪に、長い髪の毛を後ろでしっかりと結い上げている赤髪の女性。全身に重そうな銀の鎧を身に纏い、腰には剣を帯刀していることから恐らく冒険者だろう。切れ長の赤い瞳にスッとした高い鼻は典型的なクールビューティーを思い起こさせる。家の壁に寄りかかり腕を組んでいる様子からしてどうやら誰かを待っているようだ。

話しかけるのが少し躊躇われるが、あの女性にしか今のところ条件を満たす者がいないので、あの女性にしよう、と意を決して話しかけようとしたーー



 「あ、あn--」


 「俺の連れに何してんだテメぇぇえええ!!!!」


 「ぶっーーー」


 ーーが、それは叶わなかった。



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