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龍郷国

 時間の感覚がおかしくなりそうだ。

 いつまでも続く宇宙空間を歩きながら、オレは前の二人に色々教えてもらっていた。例えばマテラとルキオ以外の国のこと。歴史、季節によって代わる気候とその名称。周りに映えている苔やキノコの種類に、どの鉱石が何に使えるのか、いくらで取引されているのかとか。


 あとは各国に伝わる勇者と英雄の伝説など。


「? 勇者と英雄って違う人なんですか?」


「遥か昔に現れたのが勇者スディ・ステータ。絶世の美女で、その力は剣一振りで空を覆う魔物を消し、その後ろにあった山を巻き添えで砕いた伝説があるほどよ」


「山を」


 頭のなかにワ●パンマンのOP曲が流れる。


「英雄は第二次人魔大戦の時に現れた勇者で、人との交流が苦手だったらしいけど、実力は折り紙つき。大戦の元凶になったアチラへと突撃して魔王を倒してきたらしいわ」


「へぇー!」


「同時にめっちゃ変な行動してる話もあって、変なところから突然に現れたり、何故か剣を投げて竜を落としたりと伝説は多いわ」


「……ほう」


 やはり偉人はやることがすごいな。


 クワワと猫が欠伸をする。さっきまで興味津々に辺りを見てたのに、飽きたのか。







 風が吹いてきた。洞窟の中なのに風があるって事は出口か近いってことだ。


「そろそろよ」


 苔が少なくなってきた道を行き、入ってきたときと同じ蔓のカーテンが現れた。カーテンがさらさらと風で揺れている。


 緑色に輝くカーテンをくぐれば、濃厚な自然と清々しい海の香りを纏った風が吹き付けてきた。目を開けるとそこにはマテラよりもより一層青みの強い大自然が広がっていた。


「おおお、海が見える」


 正面に見えるのは何処までも青い海、近付くにつれエメラルドグリーンが目立つようになり、陽の光を反射してキラキラと輝いていた。


「グアムとかハワイとか、あと沖縄みたいな感じ」


 南国的なアレだ。ああいう感じの光景が広がってワクワクが止まらない。


『大きな水だな』


 猫が寝起きに言う。


「海だよ、アレ。オレもこんなに青いのは始めてみたけど」


 結構感動するんだな。


「ああ、でっかいのがいる。早く行こう、アレがこっち来たら痛い」


「ほんとだ」


「あと二刻は平気じゃない?」


「?」


 何だろうと三人が見ている方向に目を向けると大きな入道雲があった。遠くにあるから平気だと思うのだが。


「あれが来るんですか?」


「この季節ルキオは海から天気が変わる。風足も早いからすぐよ」


「へぇー」


 確かに何となくだけど雲の流れが早いような気もする。今まで風の方向を気にしたこと無かったけど、これからはこまめに観察しよう。





 草が生えまくって獣道と化した道を行く。

 草に違和感を感じよく観察してみるとマテラの植物とはずいぶん違った。葉の一枚一枚が大きく、色が濃い。


「あいつ、本当に整備してるのか?」


 先頭を行くカリアがとうせんぼとばかりに邪魔をする植物を剣で凪ぎ払いながら文句を言っていた。珍しい。カリアがこんなに堂々と文句を言うなんて。


「いつもはちゃんとしてるのにねぇ?」


山羊(ヒィジャー)の躾が上手くいかんかったとか?」


「あいつに限って無いよ」


 山羊の躾って、もしかして道の草でも食べさせているんだろうか?


「アウソ、アウソ」


「ん?」


「あいつって誰?」


「あー、えっとなこれから会いに行くザラキさんって言う人。背がでかくて、黒くて、ムキムキの気の良いおっさんで、しかもカリアさんの幼馴染みで、スッゲー強い!あ!ユラユで会ったウルマさんをもっとゴツくしたみたいな感じ!」


「ウルマさん…、あ、あの口笛教えてくれた人か」


 やたら陽気なおっさんだったな。

 あの人もムキムキしてたけど、それよりもゴツいのか。なるほど強そう。


「てか、オレさルキオの人アウソ以外で会った事あるのおっさんしかないな!もうルキオ=陽気なおっさんみたいなイメージになってる!」


「ちょっ、まって俺の国をおっさんしかいない国みたいに考えないで!女の子可愛いから!マテラとはまた違う美人たくさんいるから!」


「そこお喋りしてないで早く来なさい。迷子になるわよ」




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