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古主の帰還 29


「───」

『わああ』

「おおおお!」

「いつ見ても壮観だな」


 だだっ広い青い空間に、森が広がっていた。


「地下、だよな?」

「地下だよ」

「なんで氷から木が?」


 ラビが疑問に思うのも無理はない。

 常識を考えるならば、この光景は異常なのだ。


 ギリスには、植物の成長促進の魔法はある。

 ありはするが、植物事態は変わらないので、こんな寒くて過酷な環境では長くは生きていけない。

 マクイボクは……、まぁ、頑張るかもしれないけれど、ニックの杖だって、最低月1は水に浸けていた。

 今は別の場所に突き刺さっているんだけど、元気に魔力を溜め込んでいる。


「 バンブルワ(挨拶)!今日は友人達にお爺様達を自慢しに来ました! 」


 そう言ってアオーゾアは巨人よりも大きい木々に挨拶をして回る。


「……もしかして、これらはご先祖なのか?」

「そう。巨人達は5000歳で寿命を迎え、大木になるんだ。種類は様々で、果物を実らせたり、野菜を付けたり、香草になったりする。そして、ここで雪牛竜(ユーグルー)鶏巨竜(ハブローグ)を育てて暮らしているんだ」


 木々の間に見えるレグストロンガと並ぶ巨大生物がユーグルーとハブローグだ。

 このローデアでしか生存していない為、世界の生き物図鑑に存在を認識されてない、いわゆるUMA的な幻の生物とされている。


「リンゴがある!しかも大きい!!」

「 うふふ。これは、お婆様です。以前、メークストレイスのリンゴが頬が落ちるほど美味しかったので、リンゴの実る木に成ろうと思ってたみたいです。

 私達は、生前に成ろうと思ったモノに成れるのですよ。 」

「才能だね!」

「 あら、貴女ほどではないですよ。だって、貴女は死後、下界の山脈になったではありませんか 」

「……!!!??」


 ラビがこれ以上無いほど驚いていた。

 わかる。オレも初めて知った時驚愕して窓から見たもん。


 そう、山脈とは大陸を上下に分けるあのリューセ山脈である。

 大きな木に成った後、枯れて倒れた上に更に植物が生い茂って今のリューセ山脈が形成された。

 しかしそれを知るものは巨人族とルキオ王しか居ないけど。


 枯れる前にルキオ王がどうやってラ・クーの体を手に入れたのかは謎だけど、何か特殊な能力があっても不思議ではない。


「 せっかくなので、少し頂いて戻りましょう。 」


 ネコも協力して収穫する。

 それにしてもリンゴ一つがオレと同じ背丈っていうのは、やっぱり意味がわからないけど。







 夜ご飯までの時間、ネコとラクーは巨人の子供達と遊び、ラビは館の構造が気になるという理由でアオーゾアに案内して貰い、オレはウグルイスと話すことがあったので、別室でお茶を飲みながら対話した。


 夜ご飯は豪勢だった。

 ユーグルーの丸焼きに大きなパン、カボチャのスープと、アップルパイ。全てが大きくて、切り取るのも一苦労だ。

 それを見かねたヒグラスさんができるだけ小さく切り分けて貰ったのだが、それでも体の半分はある量で笑ってしまう。


 しかしラクーは大喜びしてた。

 どんなに食べても美味しいものが無くならないっていうのは、誰でも見る夢だろう。







「明日、ウグルイス達と木に向かうことになった」

「そんなに近かったのか?」

「いやいや、巨人族専用の移動手段があるんだよ。それを使えばあっという間なんだ」

「大きいの!!?」


 ラクーが期待に満ちた目をしている。


「勿論、大きいぞ!」










 朝、大きなハンバーグとパン、そしてイチゴジャムを食べてオレ達は出発した。


「 はっはっはっ!晴れて良かったのお! 」


 キッスーノと呼ばれる、キックボードとスキーが合体したような乗り物を使って、信じられない速度で移動する。


「はやい!はやーい!」

「 楽しいかな?ラクーよ! 」

「スッゴク楽しいー!!」

「 至極光栄であるな! 」


 はははは!と一緒に着いてきた巨人一家の皆さんが笑う

 家を出る前に、皆と魔力で声が聞こえるように調整したから、普通に話すだけで会話が可能だ。


 それにしても皆来るとは思わなかった。

 きっと最初で最後の“母”の帰還とやらの手伝いがしたかったようだ。


「……晴れか…」


 先程のウグルイスの“晴れ”という言葉にオレは苦笑した。

 確かに降ってくる雪は止んでいるが、巨人の足元は風によって舞い上がる雪で白くなっていた。


 昨日、巨人との種族差で吹雪きかそうでないかの区別を着けているのかと思っていたのだが、違った。

 単に高くなればなるほど気候が穏やかになっていただけだった。

 体の大きさか違えば見える世界もこんなに違うんだなと、今更ながらに思い知った。


 ちなみに今オレ達はウグルイスの首から胸側に下げる、植物を原料にした鞄に入れられていた。

 その方が安全だし、何かあったときに守りやすいからだそうだ。


「 父さん!左手側の氷雹竜(ヒューリー)がこっちを見ています! 」

「 んん? 」


 一人の巨人が報告した方向に目をやると、真っ白な鳥の羽を持つ竜がこちらを見て警戒音を発していた。


「 今は無視しろ。この人数だ。襲ってはこないわい。 」


 ウグルイスの言う通り、ヒューリーは警戒音を発しながらもこちらを見送り、そのまま去っていった。


「ヒューリーってなに?」

「氷雹石が取れる竜だ。夏はリューセ山脈で子育てしている」


 以前、こいつのせいで雪崩に遭遇して大変な目に遭った。

 今では良い思い出だ。

 ちなみにリトービット達の住みかで見たばかでかい氷雹石はこのヒューリーの卵の殻だったりする。

 そうこうしているうちに前方に黒い壁が見えてきた。


「ここが、最後の場所だ」


後もう少しで終わりです!!

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