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古主の帰還 27


 ローデアの平均身長はおよそ18メートル。

 それに対してアオーゾアの身長はおよそ15.8メートル。

 巨人族の中では背の低い方だが、その代わりに機動力が高い。

 人魔大戦で派遣されてきた理由は、その機動性と、小型化故の被害の少なさを考慮しての事だ。

 巨人にとっての下界、いわゆる人間界と称されているそこは、ミニチュアの世界だ。

 ちなみに15メートルはマンションの4階に相当する。

 勿論体重もそれに比例するので、走ったりなんかしたら、当然抉れるよね。


「 ふふ、一年ぶりね。そちらのはお友達かしら 」


 アオーゾアの視線がラビ達に向けられる。


「はい。こちらが今回空に帰るラクー。そしてネコと、護衛のラビです」

「こんにちは!よろしくお願いします!」

「はじめまして」

『お久しぶりです!』


 それぞれに挨拶をすると、アオーゾアが目を輝かせた。


「 まぁ!まぁまぁまぁ、貴女が“母”なのですね。まぁなんて可愛らしい…、はっ!すみません可愛らしいなどとっ! 」

「可愛いと言っていただけて嬉しいです!」

「 そ、そうですか!良かったです! 」


 ああ良かった、と体をくねらせる様は、どう見ても女の子。いや、女性だけど。

 ただ、見上げる程に大きいだけだ。


「アオーゾアさん。ペティタラへ案内してもらえますか?」


 オレの声でハッとするアオーゾアが慌てて咳払いをした。


「 勿論です。それではこちらのソリに乗って下さい。滑りやすい此処を歩くのは疲れたでしょうから、私が運んで行きますね。 」


 目の前に差し出された赤い物体は、オレ達が乗ってきた雪行船(ユーフェ)よりも大きかった。








 オレ達が乗る赤いソリを引きずって歩くアオーゾア。

 その速度はとてつもなく早い。

 景色が白一色でわかりにくいが、ともかくも朱麗馬と同じような速度が出ている。


「 うわ、少し吹雪いてきた。大丈夫ですか? 」


 オレ達にとってのホワイトアウトレベルは、巨人にとっては少し吹雪いてきたに相当するらしい。

 種族が違うと、感じ方がこうも違うとはな。

 口許に手を当て、声に魔力を乗せて返事をした。


「大丈夫です!!結界も張ってますし!!」

「 駄目そうだったら言ってくださいね! 」

「わかりました!」


 魔法で声を飛ばさないと、アオーゾアの耳にまで声が飛んでいかない。

 それをラビに伝えると、大変驚いていた。

 まぁ、そうだろうな。

 実際それを知らなかった当初は、大声を上げても聞き取って貰えずに苦労したものだ。


 ずんずんとアオーゾアは進んでいく。

 しかし、と、オレはアオーゾアを見上げた。

 ラクーも本来はこのくらいの巨人なんだな。

 いや、もう少し大きいか。


 隣で景色に飽きたラクーがネコと遊んでいる。

 このラクーが、アオーゾアよりも大きくなるなんて想像できないな。


「 見えた!そろそろ着きますよー! 」


 巨大な壁、建物へと到着した。


「なんだここ。ローデアにも崖があるのか?」

「いやいや。これが巨人の家(ペティタラ)だよ。巨人族、つまりローデアの住民は国という概念がない。村がない。巨人達はこの家を拠点に氷の大地を見回っているんだ」

「は?でもローデアって」

「それはこの人達にとっては国名じゃない。ウォルタリカの人達が付けた地名だよ。とても古い言葉で向こう側の土地って意味だ」

「なるほどな」


 壁が開いていく。その壁は、扉だった。

 壁の向こう側には長い廊下が広がる。


「 ちょっと待っててくださいね 」


 アオーゾアは体を叩いて自身に積もった雪を払い落とした。そして靴を履き替え、上着を脱ぐ。


「 お待たせしました。さぁ、入りましょう 」


 アオーゾアの案内の元廊下を歩く。だけど、さすがに規模が違いすぎてなかなかオレ達が進まなかったからか、アオーゾアが手に乗せて運んでくれた。


 すべての家具が巨人仕様で、一つ一つが建築物のようだ。


 扉を開き、アオーゾアが部屋へと入って中へと声をかけた。


「 ただいま戻りました。父上、母上、“母”と“目”がやってこられました。 」


 椅子にゆったりと腰掛けていた人物が二人立ち上がってこちらへとやって来た。

 現巨人の長、ウグルイスと、その婦人、ヒグラスだ。


「 おお!良くお出でなさった! 皆!客人だ!もてなす準備を! 」


 長の号令にたくさんの巨人が集まってきた。

 ワラワラと壁のような巨人が集まってくる光景を見て、ラビは圧倒され、ラクーは目を輝かせていた。

 そしてあっという間に机の上には人間サイズの椅子とテーブル、ソファーが置かれた。

 そこにアオーゾアは置いてくれる。


「意外だな、こんなサイズがあるなんて」

「持ち込んだのオレだよ。さすがに机に直に座るのは落ち着かなくて」

「確かに」


 各自適当な椅子に腰掛けるのを確認すると、オレは長、ウグルイスの前にやって来た。


「この度は、通行を許可していただきありがとうございます」

「 なに、他でもない君と、ルキオ王、そして 」


 ウグルイスの視線がラクーに向けられる。


「 我らが母の為なら、我らは協力を惜しまない。しっかりと送り届けよう。 」

「ありがとうございます。それでは、まずは贈り物を」

「 おお! 」


 ウグルイス以外の巨人達もこちらに注目した。


「今回は飾り物をお持ちしました。サイズを変えますので少々お待ちください」


 そう言ってオレは神具を取り出した。


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