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古主の帰還 20 



 久しぶりの汽車の個室に戻ってきた。

 なんだか謎に安心する。外で馬を走らせていた方が長いのに。


「腕の調子はどうだ?」


 珍しいラビが心配してくれた。


「ん、全然問題ないよ。問題があるのはお気に入りの服が台無しになったくらいで」

『ああ…』


 結局あの服は袖が盛大に吹き飛んだので捨てました。

 悲しい。


 まだ別の服があるから良いけれど、ちょっと思い出しムカつきをしてしまった。

 こんなことなら罰金として財布没収しておけば良かった。

 いや、犯罪だな。


 今頃奴らは目が覚めて地獄に居るだろうし。

 それで勘弁してやろう。

 一応殺してはいないけど、もう戻ってこれなさそうだし。

 今頃ニックが劇選した魔界の地獄環境に放り込まれているはず。

 そんな姿を想像して、ちょっと溜飲が下がった。





 そこからは実に悠々自適な旅だった。

 妨害はないし、奇襲もない。

 途中で降りてチョコ食べたり音楽コンサート見てみたりしながら、オレ達はどんどんと北上をしていった。

 窓の外を眺める。

 遥かなる氷の壁がだいぶ近付いてきていた。

 あの壁がウォルタリカとローデアの境目だ。

 高さはリューセ山脈の2/3程にもなる。


「そろそろ汽車ともお別れだな」

「もうウォルタリカか。早いな」


 窓の外は既に真っ白だ。ラクーは見慣れない色の景色を見てネコに訊ねていた。


「これが雪?」

『そうだよ』

「もう冬なの?」

『まだだけど、ウォルタリカは秋の後半から雪が降るんだ』

「へぇー」


 ネコが丁寧に教えてくれている。

 良い先生だ。

 明日の朝には到着するだろう。


「明日は早起きして着替えないとな」

「さむい?」


 オレは笑ってとある言葉を混ぜて教えた。


「おう、寒いぞ。シバレルヒャー!(凍る程寒い)ってくらい寒い」

「しばれるひゃー!」

「やっぱりそこツボったか」


 オレも昔ウォルタリカ横断している時にこの言葉知って面白くて何度も使っていたのを思い出した。

 聞けばみんな後ろのヒャー!が好きで子供の頃は誰でもハマるらしい。


『懐かしい!あ、そういえば餅鍋食べたね!』

「食べたな」

「なんだそれ」


 えっ?とラビを見る。

 うそ、知らないの??


「まじで知らない??色んな根野菜と一緒にお餅入ってるやつ」

「ポンポン鍋か?」

「いや、逆に知らないモノ出てきた。なにそれ」

「味噌味のスープに根野菜と中身のない水餃子みたいなのが入ったやつ」


 イメージして、美味そうと涎が出そうになった。


『ポンポンってどういう意味?』

「お腹が音がなるくらいに満腹になるって意味らしい」

『なるほど』


 オレが横断していた時は聞かなかった料理だ。

 もしかして場所によって異なるのか。

 ウォルタリカは凄く広いもんな。


「どっちもおいしそう」


 確かに美味しければどちらでも良いか。

「あった方を食べようか」

「そうするー」





 ウォルタリカ最西端の駅があるホッ(プ)ニパシ街に着いた。

 変な発音で、ちゃんと発音するのに練習した。コツは“プ”はきちんと発音しないこと、である。

 街はもう雪でまみれていて、すっかり雪景色になっていた。

 足首まで雪が積もっているが、こんなもの序の口。冬になれば平気で三階建ての家を埋めてしまう。


「寒いか?」

「ううん」


 モコモコなラクーが首を横に振った。

 此処から更に北上してローデアに向かうから奮発したのだが、あまりにもモコモコ過ぎて冬雀みたいになってしまっていた。


「こっからどう行くんだ?」

雪行船ユーフェで行く。まだこの季節だから本数はあるだろうし」


 いや待てよ、壁まで行く船あったかな。


「……今日はここに泊まろう。鍋食べたいし」


 やったー!とネコとラクーが喜んだ。

 よし、今のうちに道の確認をしなければ。


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