古主の帰還 16
やって来ました、リオンスシャーレの観光名所、ネオエラ遊園地。
この世界で初めてにして、世界最大を誇る遊園地だ。ちなみにネオエラとは新時代という意味だったりする。
遊園地はほぼタナカ工業産で、魔法陣をふんだんに使っているから、オレの知っている遊園地と大差ない。
ジェットコースターに観覧車にカップにメリーゴーランド(しかし馬は馬でも駿馬、朱麗馬、爬竜馬、走鳥馬、角蹄竜馬など種類様々)、子供用の汽車まで揃い踏みだ。
もっともこれも少しだけオレの案が混じっているのだが、別にこれは言わなくてもいいやつなので黙っているけど。
大昔、シンゴやノノハラ、コノンとユイさんが生きていた時に、互いの世界の話をして乗ってみたいと言われた事がある。
その時にコノンにお願いして作った土の模型が大いに役に立ったのだ。
しかしラクーがジェットコースターが思いの外気に入って、すべてのジェットコースターを網羅して興奮しまくっていたのには驚いたな。
絶叫系女子だったのか。
それとも──
「ラクーは落下系が好きだったのか」
「…………」
頭の中にしょうもない言葉が浮かんだが、オレは口を閉ざした。
『バンジーとか平気そうだよね。やってみる?』
おい余計なこと言うな。
「虐待と思われるからダメ」
「ラクーやりたい!おもしろそう!」
予想通り食いついてしまった。
「やりたい!やりたい!ラクーやりたい!」
最近、ラクーは駄々をこねるようになった。
良いことなのだろうか?
でも年相応の振る舞いとしては100点満点だ。
「わかったわかった。人が居ないところでな」
「うん!」
にしても、なんだか押しの強さがラビっぽくなってきたな。
思わずラビを見た。
「なんだよ」
「なんでもない」
仕方ないので、郊外まで馬を飛ばしてラビの魔法で姿を消してネコの尻尾で疑似バンジーをした。
ネコの尻尾は更なる進化を遂げ、どんな素材の動きでも模倣できるようになっていた。
流石に怖がるかなと思っていたんだけど。
「もう一回!!もう一回!!」
楽しそうだった。
もしかしてラクー、落下することが楽しくなっているんじゃないだろうか。
少し心配になってくる。
さんざん落下して満足したラクーは、その夜寝言でずっと笑っていた。
うん。良かった良かった。
首都付近まで来ると、次のゲートを潜る準備をする。主に減った食糧の補充だが。
「こいつらとはここでお別れだな」
そうして、馬たちとの別れが来た。
レンタルの馬はゲートを通過してはいけないので、なのでここでお別れだ。
「ありがとう。すごく楽しかったよ」
ラクーが名残惜しげにしている。
凄く懐かれていたからな。
スタッフにここで終わりと告げると、馬具に付いている魔法陣で終了を知らせると、10分程でお迎えの移動魔術師がやって来た。
今回はケンタウルスではなく、人間だった。
しかも顔を隠す垂れ布をしていた。
この垂れ布は、移動魔法をしている人物を特定されないためだ。何だかんだと便利なこの属性は狙われやすい。
「今回の代金は──」
料金を支払った。なかなかの出費だった。
まぁ、オレの寄り道があったからだけども。だから今回は流石にルキオ王の経費では落とせない。
よくよく考えたら、往復で半月借りっぱなしだったもんな。
金額を聞いていたラビが心配そうに言ってきた。
「……俺も半分払うか?」
「大丈夫。必要経費だった」
財布が軽いが、まぁ、なんとかなるだろう。
ゲートを潜り、ギリス・グランドニアに到着した。
こちらも発展しているけれど、また違った発展の仕方をしていた。木を起点に展開された街は、昔と比べて階層が増えていたし、杖やローブも多種多様になった。
けれど他の地域と比べれば変化は緩やかだ。
ソレばかりは仕方ないなとは思う。
何せ、精霊と強制しているのだから。
ラビが大きく深呼吸した。
「ここは相変わらず魔力が高いなぁ」
「流石は魔法大国って感じだよね」
『ネコここ好き。空気美味しい』
ネコは体が魔力でできている分、こういう魔力の濃い場所を好む。
もちろんオレもだけど。
手を繋いだラクーの歩みが遅い。
「ラクー、大丈夫?」
振り替えって確認すると、ラクーがボーッと上を見上げていた。
「精霊がたくさんいる…」
なるほど精霊を見ていたのか。
そういえば初めてここに来た時、自分も見上げたな。
上を向く。
疎らに日光が射す葉っぱの空を精霊たちが飛び交っていた。
少なくなったものの、ここらはまだ多く存在している。
気が付くと、ラビも見上げていた。
見えない筈だったが。
「見える?」
「気配だけわかる」
「そんな感じか」
ラビは元々見えなかったのだが、オレの魔力が入ってからは気配のみ分かるようになったらしい。
『でも結構減ったね』
「うん」
「ところで何でギリスに寄ったんだ?」
そういえば言ってなかった。
「ああ、一応マーリンには教えておこうと思って。彼は大陸の西側を守っている人だし」
東側はルキオ王だ。
オレが管理を任されているとはいえ、流石に手が回りきらない。
「あと、教えてあげれば何か手助けしてくれるかもしれないし?」
「お前、結構がめつくなったよな。ニックの影響か?」
「かもしれないね!」
嬉しくはないけども!