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古主の帰還 14



 メディオクレ山地。

 元ネコの故郷で、今は村がすっかり無くなって山になってる。

 ちょっと野暮用でそこに行く。

 私用だけれど、こんなチャンス滅多にない。

 ラビの視線が痛いけど、許してください。



 馬で悠々移動し、お昼近くになった。


「そろそろご飯にしよう」


 馬から降りてご飯にする。

 ようやくこのバッグの出番だ。


 手を突っ込んでブルーシートを取り出して広げ、靴を脱いでから乗ると、ラクーも真似して靴を脱いで乗った。

 意図を理解している偉いぞ。


「ちょっと待ってろよー」


 バッグから食べ物を次々に取り出して並べていく。

 サンドイッチ、ハンバーガー、ジュース。


「おい」

「うん?」

「要領おかしくないか?」

「そう?」


 無言でやってきたラビが、ずずいと近付くと鞄を開けられる。中に入っているのは普通のものと書類だが、、その横のチャックを開けると、大きな折り畳みの鏡になっていた。


「………………ニックの鏡か」

「バレたか」 


 お前……、って顔された。

 ちゃんとこれも対価払ってます。合法です。


「ニックに頼んでオレ専用の空間を作って貰ったんだ。その中に色々入れておけば、鏡を使って取り出すことができる」

「昔から思ってたけど、ニック万能過ぎるな」

「だよなー」


 鏡能力を得る前から結構なオールマイティーだったけど、能力を得てからはチート過ぎてやばい。

 管理人のオレよりも万能なんじゃなかろうか。


「……なぁ、ニックと今繋いでくれないか?」

「え、別に良いけど。ラビは個人的に連絡とってないの?」

「取ってない。前は取ってたんだが…、それ専用の鏡を粉々にしてしまってな…」


 確かラビの使ってた鏡はコンパクトタイプだったっけ。

 何して割ったんだろうか。


「食べて良い?お腹すいた」

「いいぞ。どんどん食べろ」

『ネコも食べる!』


 踏んだのかもしれない。

 二人には先に食べさせて会話を続ける。


「そうなのか。言えば連絡取って繋いでやったのに」

「俺もそう思ってたんだけど、また今度と思ってたら気付いたら何年も経ってた」

「それはわかる」


 凄いわかる。不老故のあるあるに全力で頷いてしまう。

 命の期限がないゆえに、優先順位の低いものはつい先伸ばしにしてしまうのだ。

 しかし、ニックを使えないと不便だったろうに。スマホを取り出し、ニックに繋いだ


『「なんだ?後処理か?」』


 すぐに出たニックはめんどくさそうに応答する。

 しかし第一声がこれか。いや、よく考えたらこういう系でしか最近呼んでいなかった。


「違う違う。今回はラビが用なんだって」

『「あいつようやくか。わかった、渡してくれ」』


 ニックは即座に察したようだ。ラビにスマホを渡す。


「落とさないでね」

「気を付けるよ」


 ラビはこちらからちょっと離れたところ連絡を取り始めた。

 連絡手段の交渉以外にも何かあるのだろうか。

 もしやこの収納用の鏡の交渉か。

 確かにこれは便利である。


「オレも先に食べるか」


 サンドイッチを手に取り食べる。

 これは城下で有名なタマゴサンド。ふっくらしていて美味しい。


 ニックに払う対価は様々だ。

 オレの場合は、まずニックの暗黙の遣い化。

 こいつは既に死んでいて肉体がないし瞬間移動もできるし強力な魔法攻撃も、というか、色々チートで遣いとしての報酬を全て自分で手に入れている感じになってしまっている。

 というわけで、それとは別の報酬を与える為にニックだけの特別な役職を与えた。


 神の“指先”。


 誰よりも早く、誰よりも出来ることが多いことが由来だ

 最もニックは神の部下ではなく、オレの補佐(気が向いたら)ってなっているけれど。


 あとはオレの魔力での支払いと、回収した神具を優先的に渡したり、肉体を作ったりと様々。

 実はこの人形実験もニックの新しい肉体を作る為のものでもある。

 やっぱり肉体は一つはあった方が便利らしい。


 さて、ラビは何で取引するんだろうな。

 そう思っていると、連絡を終えたラビが戻ってきた。


「ありがとう」


 スマホを返された。


「何か契約でもしたの?」

「普通に連絡先を登録しただけだ」

「なんだ。そうか」




 馬で一週間走らせ、遂にメディオクレ山地へと到着した。

 ここはネコの、いや、かつてのテレンシオの故郷だ。

 故郷といっても、オレが来る以前の人魔大戦に村は焼けて無くなって、今はこの自然豊かな山しかない。


 でもこの山にネコの親父さんが眠っているから、ついでに墓参りすることにした。といってももうお墓の跡すらないから、恐らくここら辺だったという記憶を便りだけれど。

 でも同じ木が生えているから、ここだろう。


「思ったよりも暖かいなここは。ラクーも上着必要ないな」

「ちょっと暑い」

「緯度的にはマテラに近いしな」

『そうだっけ』

「後で地図見せてやる」


 手を合わせたあと、近くの地面を魔法陣で掘り、鞄から布に包まれた細長いものを取り出して埋める。


『埋めちゃうの、それ』

「うん」


 勿体ないけど、仕方がない。


「何埋めてるんだ?」


 ラビが訊ねてくる。


「ん?んー、保険、かな」

「保険?」

「よし。これで良いだろう」


 しっかり埋めて、魔法陣を張る。

 これで墓荒らしには合わないだろう。


「ありがとう、野暮用に付き合ってくれて。退屈だったでしょ」

「ううん。綺麗な景色で楽しいよ」

「そりゃあ、良かった」


 連れ回してしまったお返しに、今度はラクーが楽しめそうな所にしよう。


「ラビ、リオンスシャーレでおすすめの場所とかある?」

「それなら中央にあるテーマパークとかどうだ??結構面白いらしいぜ!」


 そんなところあったのか。

 でもラクーはこの前の急激落下も楽しそうにしていたし、気に入るだろう。


「じゃあ案内よろしく!」

「こっからスタートかよ」


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