古主の帰還 12
散々飛んで遊んだので、ラクーはご満悦になった。
そろそろ時間だと、駅に戻るためにみんなに挨拶して車へと向かう。その際、みんな見送りに出てきてくれた。
「ばいばーい!」
ラクーが手を振ると、みんな振り返してくれる。優しい世界だ。
「戻るか」
「うん!」
車を戻して駅に戻る。ホームに行けば次の汽車がやってくるまで5分程だった。
「ラクー」
「ん?」
「飛行機どうだった?」
「凄かった!空飛ぶのも楽しかった!すごく楽しかった!」
「そうか。そりゃあ良かった」
喜んで貰えて何よりだ。
「ラビもどうだった?」
「……うん。なかなかかっこ良かったが、一つ不満がある」
「へ?」
不満?なんだろう。
「折角だから川から飛び立てるようにもした方が良いんじゃないか?話を聞く限り地面は平らじゃないと離陸が出来ないんだろ?水面なら問題ないじゃないか」
「あー、なるほど飛行挺…」
確かにそれは画期的ではある。だけど問題も一つ。
「案としては良いけど、まだそれをするには重量問題が…」
今の飛行機もできる限り削って軽くしているのだ。
まだ無理だ。
「そうか…」
「でもその内進言してみるよ」
何だかんだとオレも飛行挺好きだし。
勿論あの某豚の影響である。
そうこうしている内に汽車がやってきた。
再び乗車し、個室へ荷物を置き、ご飯を食べにいく。
ラクーがアクビをしている。
興奮しまくりだったからご飯食べながらラクーがうつらうつらと、今にも眠りそうになっていた。
「疲れたみたいだな」
ラビが言う。
「だな」
『ずっと叫んでたもんね』
「つまりはオレのせいか」
調子に乗って急降下し過ぎたな。反省反省。
「……うー…………」
「もう限界みたいだ。悪いけど先に戻ってるよ。ラクー、ほら」
「んんんん……」
ラクーを抱き上げる。
ついでに夜中にラクーが空腹でお腹が空いた用に、パンと果物を持っていく。
『ネコも何か持っていこうか?』
「じゃあ、パン」
「ラクー食べさせ過ぎじゃねえか?」
「違うオレのオレの」
「なーんだ」
後で持っていくと約束し、ラクーを抱っこして部屋に戻ると、既にラクーはスヤスヤと夢の中に行っていた。備え付けの毛布にくるんで寝かせてあげる。
「ふぅ…。さて、今のうちに仕事するか」
しばらくして二人が戻ってきた。
「ただい──うげっ!なんだその書類の束!?」
『うっへええええい!!』
入ってくるなり二人は凄い顔をした。
気持ちはわかる。
部屋に戻ると友人が辞書みたいな書類の束を持っていたら、そりゃ顔もしかめたくなる。
なのでオレはその書類達を纏めると、鞄に仕舞った。
「…まさかその鞄の中身、半分書類ってことはないよな?」
「いやそれはさすがに……」
そこまでワーカーホリックではない。
ネコがやってくる。
『はい。パンだよ』
「ありがとう!」
しかもジャムまで持ってきてくれた。
早速そのパンを食べる。やっぱり食べるのって最高。
人形だけど、それはそれ、これはこれって感じ。
ネコとラビが椅子に座る。
「で?次はどこに行くんだ?」
「んー。とりあえず、リオンスシャーレなんだけど、折角だから馬で移動して、首都からギリスまで転移門移動しようかと思って」
「さっきまで車で移動しといて何故馬??」
「……たまに乗りたくならない?」
「……なるけど…、なるけどさぁ」
そこは同意してくれるのか。
「折角だからラクーも体験させたいなって。あ、勿論飛ばさないよ」
「当たり前だバカ」
2日掛けてメークストレイスまで行き、ビッツ街で降りる。
駅からでも見える、街中に佇む巨大な建造物は移動用ゲートの一部だ。
初代機のゲートは結構な大きさで、軍の移動を考えて作られたものだった。
高さはだいたい8メートルほど。
今使わせているのはもう少し小型でせいぜい3メートル
多くの初代ゲートは老朽化によって解体され、最新ゲートへと変わっているが、このビッツのゲートは記念としてゲートの枠組みを作り直し、光彩魔法で転移膜と同じ色彩を作り出している。
勿論起動してないので転移できないが、今は貴重な遺跡として、または観光名所として大事に保管されている。
それを眺めるラビ。
「どした?」
「いや、神に言われて定期的に調整しているんだけどさ、あんなでっかいの今後使う機会なんかあるのかねと思って」
「あるんじゃない?一つぐらいでかいのが残ってた方がかっこいいし。それに──」
見てみたい光景がある。
「──あのゲートから大きな乗り物が転移してくるとかロマンじゃない??」
SFの実現はいつだって見たいものだ。
「……お前のそのロマンっつーが、時折わからん」
『ネコはわかるよ!』
ネコにはアニメ知識を植え付け済みだから同意してくれる。
「ラクーはネグストロンガがあれから出てくるの見たい!」
「なるほど…、それはそれでかっこいい」
ネグストロンガは、首長竜のような見た目をしている
そんな恐竜みたいなのがゲートがやってくる。
良いな。
凄く良い。
「採用!」
「やったぁ!」
「なんだこのやり取り」