古主の帰還 8
汽車がノーブル国のウサラ街へと到着した。
ここはこの世界のなかで一番錬金技術発達が目覚ましい所だ。
いまだに魔法技術はギリス・グランドニアが総なめだが、科学、ここで言う錬金術はこの国がトップを走り続けてている。
人魔大戦の後、各国から集まった技術者達はそのままノーブルへと居着き、大戦中に得た知識と技術を使って大発展を遂げたのだ。
街の様子だってパッと見だけなら少し古いが東京の町並みと変わらなく見える。
違いがあるのは、車の造形と、いまだに馬も歩いていることと、魔法陣があちこちにみられるくらいだ。
「足元気を付けて」
「ん!」
ホームと汽車の間が空いているので、ラクーが思い切りジャンプをして飛び越えた。
ラクーの次にネコを方に乗せたラビが降りてくると、ラビが駅内を見渡した。
「相変わらず世界が違うなここは」
『すごいよねぇ』
整備された駅内に、小さな売店が本屋飲み物を売っていた。
「お菓子でも買うか?」
ラクーに聞くと、「ううん。大丈夫」言われた。
「朝、いっぱいたべたから」
『お代わりしてたもんね』
確かに観光すると聞いて、ラクーはいつもの二倍食べていた。
「たくさん歩くんでしょ?」
なるほど、メークストレイスでは歩き回ったからそれを踏まえて対処したと。頭良い。
だけど残念だけど今回は車移動である。
でも折角準備してくれたしな。
「そうだな。ちょっと歩くか」
「うん!」
良いよな?と笑顔でラビとネコに魔力通話すれば快くオーケーされた。
「しっずかなこはんのもりのかげっからー、もうおきちゃいかがっとカッコがなくー」『しっずかな湖畔の森の影からー』「カッコ~、カッコ~カコカコカッコー」『もう起きちゃいかがとカッコーが鳴くー』
見事な輪唱だった。
何処で覚えた。
「何の歌だそれ」
ラビが訊ねると二人が答える。
「カッコーのうた!ネコに教えてもらった!」
『ライハが歌ってた!』
「え」
歌ってたっけ。全然覚えてない。
「いつ歌ってた?」
『書類地獄で死んでるときとか、これ歌いながら仕事してるよ。タゴスとかリゼとかサルアンとかホーマスとかスアンとかリアッタが、この歌でるとライハが限界を向かえているって指標にしてたって言ってた』
「…………そうなんだ……」
まさかの歴代側近兼秘書の名前が出てくるとは思ってなかった。
そして1000年目にして自分の知らない癖を教えられるとは……、そうか……。
「……ストレス発散は大事だぞ」
「…ほんとうにそう思うわ」
ラビに言われた。しかも珍しく心配そうに。
これからはもっとこまめに脱走しようそうしよう。
午前中はブラブラと適当に歩き回りながら、ラクーが興味深げに眺めるお店に積極的に向かった。
ラクーの興味は幅広で可愛いものから機械的なものまで様々だったか、共通としてキラキラしているものを好んでいるように思える。
これなら、もしかしたら飛行機にも興味を示すかもしれない。
そんな感じで歩いていると、ラクーがお腹をさすり始めた。
「どうした?」
「ちょっとお腹すいた」
ようやくお腹が空いてきたようだ。
時刻もそろそろお昼。良い頃合いだ。
「なにか食べてから車取りに行くか」
「だな」
ラビが同意する。
その間はラビにラクーを任せることにする。
何せ車が置いているところが駅の近くだから。
「なに食べたい?何が好き?」
ラビがラクーに聞くと、ラクーは目をキラキラさせてこう言った。
「フルーツ!」
「フルーツはご飯じゃないよ。デザートにパルフェか、ポンチでも食べるか」
「うん!」
ルキオ育ちのラクーはとにかく甘いものが好きだ。
あの国は砂糖の名産地であるし、南国フルーツも毎日のように食べていたからだろう。
ちなみにメークストレイスもリンゴの名産地であるわけなので、メークストレイス観光もリンゴばかり食べていた。
栄養面云々はルキオ王曰く、そもそも人間ではないから関係ないとのことなので自由に食べさせて良いと言われたけど、オレが個人的に人間らしい食事を摂らせたかったので、きちんとご飯を食べてからおやつとして与えるようにしている。
「ラクーは好き嫌いはあるか?」
『無かったよ。何でも食べる良い子』
「そりゃあ素晴らしい」
ラビに誉められてラクーが得意顔になっている。
「んじゃ、あそこのお店にでも入るか」