古主の帰還 3
「ということです」
「……」
ラビがなんとも言えない顔をしている。次いでに言えば口の端から飲み掛けのコーヒーが滴っていた。
「…………」
ラビは額に握った拳の指を当て、唸る。
「……………………ちょっと待ってくれよ。思考が追い付かない」
「いいよ。待つから」
しばらくその姿勢のままラビは考え込み、ようやく顔を上げた。
「創世記というものは、作り話かと思っていた。いや、というよりも、ルキオ王が初めの13柱の1つというのも凄く驚いた。驚きすぎてもはやどれから突っ込みをいれたらいいのか分からない」
「まぁね。オレもビックリして聞き間違いかと思って再度確認したし仕方ないよ」
コーヒーに角砂糖を入れて溶かす。
神からの記録で知ってはいたが、いざ本人からカミングアウトされれば思わず二度聞きしてしまうものだ。
甘くなったコーヒーを飲み込んだ。
少し砂糖を入れすぎた。
「これは、俺に話してもいいことなのか?」
そう思うのも無理はない。
この世界にとって、とても重大で重要な話だ。
だけど、これに関してはルキオ王が許可をした。全てはラ・クーを天に返すために必要なことならばと。
「さすがのオレもね、一人だとちょっと大変でさ。ラビに手伝って貰いたいんだよ」
「はっ!神の目のお前が、何が一体大変なんだよ」
笑うラビ。
確かに管理人として長いオレには様々な権利や力がある。やろうと思えば一日足らずでラクーを天に帰すこともできる。
だけど、今回はそれではいけない理由があった。
「帰還ともう1つ依頼をされている。それがオレ一人だと大変な理由なんだよ。それに絶対に後悔させないから一緒に来てくれないか?」
「……」
ラビは盛大にため息を吐く。
「お前が強引だって言うのは知ってる。すぐに死ぬはずだった俺をこんな体にしてまで生き長らえさせたくらいだもんな。
いいさ。地獄の果てまで付き合ってやろうじゃないか」
「行くのは世界の果てだけどな。ありがとう、感謝する。
んじゃ、三日後、メークストレイスのここの駅で待っててくれ」
ポケットから紙片に書いたメモを取り出して渡した。
「……駅?」
「たまには三人ぶらり旅しようぜ」