魔王城事件簿⑥
「……あの、なにこれ??」
ライハの居るらしき部屋の扉がガチガチに拘束されていた。
つまりは監禁状態。
魔王だよね?王様なんだよね?
なんで監禁されてるの???
アレックスが困惑していると、タゴスが苦笑い。
「リゼ、遂に強行手段に…」
「なにその含み笑い。いっつもライハこんな扱いなのかい?」
「…………いや、ここまでヤバいのは初めてだ」
これ以下ならやられているんかい、って言葉は飲み込んだ。
タゴスが扉の拘束を解いて、気が付かなかったけど張られいたらしい結界も解いてから扉をノックする。
「ライハ!開けるぞ!」
タゴスが扉を開けると、部屋の中で監禁されていたのにも関わらず寛ぎきったライハとネコがいた。
ライハがこちらを向くと、やっぱりアレックスだったかと漏らした。
もしかして全部視られてたの?
「なに??どうしたのその格好?今回はどうしたの??」
『すっげー!!フサフサじゃん!!ネコと良い勝負!!』
ネコがアレックスに飛び付き、フサフサの体に埋まる。
「実は──」
こうなった経緯を説明しようとした時、アレックスはライハの後ろにある物に気が付いた。
「ゲェ!?」
ライハの背後の鏡にニックが意地悪い笑顔を浮かべて手を振っていた。
「よおアレックス、大活躍だったなぁ?」
全部視られてた!!!(確信)
コボルト姿でも、顔が真っ赤になるのがわかった。
よりにもよって一番視られたくない奴に…っ!!
「なんつーか、ドンマイ」
タゴスにそう声を掛けられ、思わず叫びだしてしまったのは仕方がないと言えよう。
その後、人間でもいいからうちに所属しないかとの勧誘が殺到した。
この事件を切っ掛けに、アレックスはライハに呪い解除の魔方陣を真面目に学ぶ事にした。
これで今後“また”犬化しても自力で戻れるようにしたいとの事。
そしてその例の神具なのだが。
「……なんでオレが保管することになってんだ??」
ライハが保存することになった。
神具名【人狼遊戯】、すべての生物をたちまちワーウルフやコボルトなどの二足歩行する犬へと変える神具。
本来なら解除用の神具も付いていた痕跡があるのだけれど、土に埋まっていたせいか紛失していたのでアーノルドに頼んで類似品を作って貰うことになった。
これでまた誰かが被害にあっても戻れるだろう。
「ふぅ、またこの倉庫も拡張しないとな」
指紋と魔力認証で解錠し、扉を開ける。
そこには棚いっぱいに神具が保管されていた。
この世界で神がばらまいた神具達は、一旦ここで眠り、何かあれば観測者や必要な人に渡す。
とても面倒だけど、これも管理者の仕事らしい。
というか、解除できる道具を付け直したら、アレックスに返していいかな。
「……怒られるか」
君も犬扱いするのかー!って。
しょうがない。今回もオレがきちんと管理しますよっと。
空いたスペースに人狼遊戯を置き、倉庫の扉を閉めた。
リゼ『今回銃ごときに突破されたのが悔しいので多重結界で覆って良いですか?』(アレックスが犯人と教えた)
ライハ『(オレが息苦しくて発狂しそうになるから)絶対にダメ』