表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
711/745

魔王城事件簿⑤

「助太刀しに来た!!」


そう言って、新人らしきコボルトが物凄い速度で我々を追い抜いていった。

あまりにも早い。

コボルトは確かに足が速い方ではあるけれど、ここは砂漠。

砂に足を取られてまともに歩くことすら困難な階層だ。

なのにどうしたことか、あのコボルトは砂に沈む暇も与えない程の速度で駆け回り、侵入者を翻弄していた。


「なんだこの犬っころ!?」

「やだ!なにこの動き、狙いが定まらないわ!」

「ぬううううう!!!あえて攻撃範囲外に居続けるとは、卑怯ではないか!!」


謎の板で新人を引き剥がそうとしても先回りされて、その場に留められている。

それにだんだんと焦り始めるハンマー男に向かって、がたいの良い男が話し掛けた。


「勇者!このままじゃあ埒が明かない!一旦地面を爆発させて目隠しを──」

「そうはさせないんだぞ!」


新人が銃を射ち放つ。

がきんと三人の前で弾が結界に阻まれて動きを止めたが、すかさず同じ場所に二発目を着弾させて結界を破壊した。

バリンと割れる音と共に女が悲鳴をあげる。


「そんな!あんな安っぽい銃なんかに私の結界が破られるなんて!!」

「ジャスティスをバカにしたな!」


怒る新人。


「トーマス!何とかしろ!!」

「い、いや、こんな場所じゃ俺は何も…っ!!」

「いやああ!!!イアンなんとかしてよぉお!!」


三人の板に弾が撃ち込まれ、盛大にヒビが入った。


「くそっ!!調子に乗るんじゃ、ねえええええ!!!」


イアンと呼ばれたハンマー男が、新人の弾を跳ね返そうと振り回し始めた。

まずい!あれでは跳ね返されたときにとんでもないスピードで戻ってくる!!


「新人!!気を付け──!!」


新人はニヤリと笑っていた。

そして、同等と銃を構えるとイアンのハンマー目掛けて目にも止まらぬ速さで乱射した。

跳ね返しは、されていたと思う。

けれど、その新人は跳ね返ってきた弾も含めて更に弾き返していた。

そしてハンマーの跳ね返しの反動が耐えられなくなったのだろう。

イアンの手から弾かれるようにハンマーが空高く飛んだ。


「ひっ……」


か細い悲鳴がイアンから漏れる。


「チェックメイトだぞ」


新人がそう言って、地面に恐ろしい数の砂の竜巻を生み出し、気が付けば侵入者三人は地面にぐったりと気絶していたのだった。


「よし!任務完了なんだぞ!」


かっこつけて愛銃をクルクル回してホルダーに仕舞うと、背後から「ウオオオオオオオ!!!!!!」と雄叫びみたいな声が上がった。

振り替えると魔族達がアレックス目掛けて迫ってきていて、


「!?、!??!!!?」

「ウオオオオオオオ!!! ワッショイ!!!ワッショイ!!!ワッショイ!!!ワッショイ!!!」

「ぎゃあああああ!!!?」


あれよあれよと言う間に担ぎ上げられ、全員で盛大な胴上げをされていた。

しかし忘れてはいけないこの人達。

魔族である。

筋力からして人族の数倍あるので大人数で胴上げをされたらどうなるか?

答えは明確。アレックスは3メートルほど投げあげられては落ちるを繰り返され、あまりの恐怖に思わず悲鳴を上げていた。


胴上げをしている魔族の誰かが言った。


「アハハハハ!!!君凄いな!!ところで何処の所属なんだ?」

「さぁ?うちには名簿に載ってないが」

「草原層じゃないのか?もしくは岩石層とか??」

「え?新人入ったなんて情報無かったぞ?」

「どちらにしても有能なやつがここにいるのは事実だ!」

「そうだ誰でも良い!即戦力だうちにこい!!!」

「そうだ!!こいこい!!」


空気が怪しくなってきた。

慌てたアレックスが泣きそうになりながら声を上げた。


「そもそも俺魔族じゃないよ!ライハに用があって来たんだ!」

「「()()()??」」

「げふう!!?」


アレックスの発言に突如として胴上げが中断され、アレックスは落ちた。


「え?魔王様の御名前だよな?」

「もしかしてお客様だったとか??」

「おおおお俺幹部呼んできます!!!」


デマーシェがどたばたと幹部を呼びに去っていった。





タゴスが来た。


「……お久しぶりです。面白い姿になってますね(笑)」


こちらを見るなり笑いを堪えている。

そんなのは自分が一番よく分かっているとプルプルしていると、すまんすまんと謝られた。


「ところでなんでここに?」

「迷子になりました…」

「正面から来ないからですよ。さ、案内しましょう」


関係者専用通路への扉を潜ると、リゼが幹部の一人であるドウといた。


「リゼ、ドウ。すまないが片付けをお願いする」

「…はい。」

「もちろん一発殴ってからで良いですよね?」


リゼが笑顔で拳を見せる。


「……いや、やめとけよ、お前力つよいんだから。後処理するのライハだぞ」

「ちぇ」


リゼが残念そうに砂漠層へと歩いていく。


「何をするんだ?」

「侵入者をリオンスシャーレ最北端へと飛ばんすんだ」

「なんで最北端」

「リオンスシャーレの北部から大陸中央まで帰るのは大変だろ?ちょっとしたお仕置きだ」

「なるほど」


そこからいくつか転移魔方陣を経由して、ライハの生活エリアへと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ