魔王城事件簿②
「!?」
厳重に仕掛けた魔王捕獲システムのひとつが壊されたことにリゼが感付き書類から顔を上げた。
こんな夜更けに脱走を??
リゼは部屋着から素早く通常服へと着替えると、早足で転送装置の元へと向かう。城にある居住区から、魔王の部屋のある階層へと素早く飛んで、扉を開けた。
ベッドの上でネコと寛いでいる魔王がいた。
……ん?と、魔王様がこちらを見て困惑している姿をマジマジと見つめる。
以前使われた囮ではない。
魔力の感じから見て本物だ。
リゼの異様な雰囲気のまま顎に手を当て考えているのを見て魔王様が身を起こした。
「なに?どうしたの??記入漏れ??」
「ネコは何にもしてないよ!」
それぞれ思い当たる案件を口に出しているが、今回はそれではない。
魔王様がここにいる、ということは侵入者か。
「いえ、問題ありません。失礼致します」
パタンと扉を閉めた。
閉めると同時に魔王様には内緒で取り付けた外鍵を掛ける。
魔王様が犯人ではないということは判明したけれども、魔王様は時折こんな感じの陽動で秘密裏に脱走をしたことがある。
今回もそうだといえないけれど、万が一にという訳である。
すぐさまイヤリング型の通信機で幹部達へと呼び掛けた。
「リゼから幹部へ緊急連絡、侵入者です。数、武器共に不明。侵入箇所は城の地下三階。ただし私の結界を一撃で破る威力はある模様です」
──「『タゴス、了解。すぐさま城内警報を出す』」
──「『オローラ、了解』」
──「『ドゥナ、了解』」
──「『クロウリー、了解。対自称勇者用通路解放しますか?』」
「お願い。各自、捕獲用意。ドゥナは私のところへ」
──「『分かりました』」
廊下の緊急警報の赤い信号が点灯した。今頃各階層の責任者へ通達がいっている頃だろう。
「さて、私も準備しなければ」
《幹部達サイド》
ズンズンと幹部であるタゴスとクロウリーが管理室に向かっている。先ほど侵入者て警報を出した二人は、すぐに城の緊急時通路を開くために管理室に向かっているのだ。
「最近は自称勇者(笑)の突撃も無くなってた(リゼの捕獲システムのせい)のに、一体どこの誰だ?」
「なぁ、タゴス。本当に魔王様では無いんだな?」
「一応リゼが確認していると思うが、おそらく違うだろうな。しかし、懲りない奴らだよ」
管理室に到着した二人は、手慣れた様子ですぐさま対勇者用の通路を解錠する。
魔王城に張り巡らされた魔方陣に魔力が装填され、すぐさま転送装置が発動。各階層の責任者へ連絡を入れて、武器庫を解放した。
今頃警備兵達は各戦闘員配置へついていってる頃だろう。
「全く誰だって良いが…、ここ数日俺らの魔王は働き詰めなんだ。虎穴に入り込んだアホは我々で捕獲して送り返してやる」
タゴスの言葉にクロウリーは「ああ!」と頷いた。