表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
706/745

ようこそ人魚の国へ!④

 その日、国中でお祭り騒ぎになった。

 凱獣から人魚を外の人間が助けたという前代未聞のニュースだったからだ。

 通常、海中において人魚はほぼ無敵だ。人間は伴侶及び保護対象なので、助けられるという事は大事件だった。


『ピトゥーサァ!!』


 乾杯の意味の言葉を叫びながら伊勢海老をグラスに見立ててぶつけ、人魚達は二つに割ってボリボリ食べている。顎の力強い。


 もちろんそんなこと出来ないので短剣で割って食べた。

 なるほど、海中では水が要らないからこうなるのか。


 熱水噴出口で蒸された伊勢海老は美味い。バター炒めしたらもっと美味いけど、そんなことしたら大変なことになる。

 ちなみに現在、人魚達に囲まれております。八割方女性の方なのですが、みんな見事にお腹が縦に割れてて、やっぱり尾びれは腹にくるんだなとしみじみ感じています。

 実際オレもお腹が久しぶりに筋肉痛になりそうな予感が。


『ブライニクル食べてるー??』

『ブライニクルこっちも美味いぞ、食べなさいよ』

『凱獣のお肉がくるわよ!誰かブライニクルにも分けてあげて』


 そう言いながら凱獣の蒸し肉を大量に手渡してくる。

 海面に浮かんでいった凱獣を巨大人魚が回収していたやつだ。見た目に反して美味しい。


 ところで、さっきからオレの事をブライニクルと呼んでいるのは何でだ?


「ブライニクルってなんですか?」

『海の中の氷の妖精の事よ。触れたものみんな凍らせてしまうの』


 え、こっわ!


『あなたの攻撃の仕方がブライニクルっぽかったからって、スイアが』

『あ!ちょうど来たわよ!』


 指差された方向に目を向けると、助けた人魚の子供、スイアがアウソと一緒にやって来た。

 後ろからは子供の友達らしい子達も離れたところからこちらを見ている。


「?」


 なんだ?


「ほら、スイア」

『うん。あ、あの!助けていただきありがとうございました!!』


 頭ペコーー!!っと下げるスイアちゃん。呆気にとられるオレ。

 おや?お辞儀?

 文化圏煌和寄り??


 と思ったら反動で後ろまわりしそうになったのでアウソがさりげなく体制を戻していた。

 違うっぽい。

 

「こいつがどうしてもお前の作法でお礼がしたいってんでな。さすがに海中では無理だな」


 アウソが笑って言う。


『私も!あなたみたいに強くなりたいです!!がんばります!!』

「お、おう!頑張れ!応援するぞ!」


 スイアは満面な笑みを浮かべてみんなのもとに戻っていった。


『ひゅうー!これでサァバラ初の能力持ちの戦士が生まれるわね!』

『楽しみね!』


 わいのわいの人魚達がめでたいめでたいと騒ぎ始めた。

 なんのこっちゃわからんが、とにかくめでたいらしいので海中でのお酒であるルクプスの実をここぞとばかりに口に放り込んだ。





「……………食い過ぎた…」


 ルクプスの実を。頭いてぇ。


 今日は帰る日だ。アウソの宛がってくれた城の一室で休ませてもらったのだが、夜は海蛍や光クラゲで明るくて変な感じだった。

 浮きながら寝るのも初体験で、アウソが寝るときはロープか布必須って言っていたのが良く分かった。体を固定するためなんだな、あれ。


 名残惜しいが、仕事が待ってる。あと、なんだか猛烈に嫌な予感がする。

 主にリゼさん関係で。


『これお土産に持ってって』

『あとこれとこれも。陸では焼き魚ってのがあるんでしょ?それで食べてみてよ。王様がお酒似合うからって』

『凱獣の甲殻もね!高く売れるんでしょ?』


 ドサドサと大量のお土産を網に包んで渡された。魚は生きてるし、伊勢海老もワシワシともがいている。


『キレマグロいるかー?』


 極めつけは珍しい男性群が大きなマグロを持ってきた。


「すっげぇ、超でけぇ…。ありがとうございます!」


 さすがに手で持っていくのは不可能なほどになってきたので、申し訳ないがニックの鏡の中に収納させてもらった。


「んじゃ、またな。いつでも遊びに来て良いからな」

「ありがとう、オレも出来るだけ頑張って休暇とれるようにするよ」


 その為には早く国の安定化させないとな。


 またおいでー!!と嬉しい見送りをされ、オレは鏡の洞窟へと戻った。


「ふぅ、なんだか脚で立つのが変な感じ」


 次いでに薬の効力も弱くなって苦しさは無くなったけど、水中に鳴れたのか空気がやけに濃く感じられた。


「ははは。何回か繰り返せば慣れるさ。さて、例の件よろしく頼むな」

「うん。完成したら今度はこっちが国をあげて歓迎するよ」


 アウソとハイタッチしてオレは鏡の中に飛び込んだ。









 鏡から出て、最初に見たものは怒り狂ったリゼさんだった。


 あまりの怒気に思わず鏡の中にUターンしそうだったのを堪えてゆっくり近付くと、リゼさんがオレを確認するなり何処からともなくホワイトボードを引っ張ってきて、オレがいない間に起こった勇者教過激派の襲撃事件の詳細を事細かに説明された。


 どうやらオレが城を開けた数時間後に同時多発テロが国中で起きたらしく、ネコとタゴスが大慌てで指示出しと鎮圧に飛び回っていたらしい。

 だからネコがソファーでぐったりしてるのか。お疲れ様。


「魔王様。さすがに私堪忍袋の緒が切れる寸前です。タゴスとも相談しましたが、これは大規模の国内整備を検討するべきです」

「うーん、確かに…」


 オレ一人だけ狙うならまだしも、周囲の者が巻き添えで怪我とかは勘弁してほしい。

 ま、言われなくても整備はするつもりだったから良いんだけど、これは更なるテロ対策も必要かも。


「今城にいる幹部は何人?」

「五名ほどです」

「一時間後に対策本部立ち上げるから、みんなに会議室に集合って言っておいて。あとこれお土産」

「え」


 赤珊瑚と真珠の髪飾りを渡す。

 リゼは予想外のオレの行動に怒気が収まったのか角が消えた。

 オレと髪飾りを交互に見て「え?え?」と言っている。


「残りのお土産はまた後で渡すから。さーて、ひと風呂入ってこよう」








 その後、魔王による大規模の国内整備が行われ、世界初の人魚が観光できるように淡水エリアと海水エリアが分けられた川が首都を中心に張り巡らされた。

 防衛に関しては、ルキオを参考に風精(フーシア)が過ごしやすい環境を整える事で自然と集まってきて、何か異物が入り込めば真っ先にオレに連絡が行くよう風龍に頼んだ。


「ようこそ!メークストレイス国へ!!」


 大陸の真ん中で人魚が見れると話題になり、ますますメークストレイスが発展していくのだが、それはまた別のお話。



作者が多忙で発狂寸前だけどどうしてもハロウィンネタをやりたかったと供述しており──




↓↓↓


今回どうしてもハロウィンに参加したかった完全復活のカリアさんがサウィンモードでメークストレイスにキリコさん&グレイダン率いるドラゴンズと共に突撃してきて花の雨を降らしたり、迷宮帰りのアレックスの体にまたしてもいらない付属品(今度は狼の耳と襟巻きと尻尾)がくっついていて泣きながら解除のお願いをするためにニックには内緒でこそこそ魔王城に不法侵入してきたことで誤解が誤解を呼んで大パニックになった話ってもう書きましたっけ??




続かない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ