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ようこそ人魚の国へ!②

 見渡す限りの珊瑚の山。

 しかも大きさがオレの知っているものと比べて桁違いに多くて、まるで高層ビル群に囲まれているような感覚だ。


『王様!』

『王様ー!』


 人魚達がこちらに手を振っている。

 髪の毛の色は様々で、尻尾もカラフル。ただ、パッとみた感じ多いのはアウソと同じイルカ型だ。その人達の髪の毛は水色か緑か灰色。それにどことなく顔つきが違う感じがした。

 いや、イルカか?どっちかっていうとシャチ??

 まぁ、どっちでも良いけど、なんだろうな。同じ人魚なのに変な感じだ。


「変なこと聞くようだけどさ、人魚にも獣人とか巨人みたいに種族が違ったりするの?」

「ん? ああ、そうだ。あっちの鮮やかな鱗持ちはサァバラ。向こうの海蛇みたいな奴らがサゥティザン。青灰の鱗無しがティタセゥで俺みたいな模様持ちがサラトゥチョって言うんだ。他にも大型のティルンタラとかいる」

「……へぇ、めっちゃ種類あるんだね」


 そして覚えられない。サァバラとティルンタラしか覚えられなかった。なに?人魚語って水精スーイ語が標準語なの?


「でもだいたい鱗のとか、模様のとかで通じるから心配いらんさ」

「オレそっちにするわ」


水精スーイ語はのちのち覚えていこう。








 真珠の畑に昆布や海藻の森、水流を使っての水車、果ては小魚の養殖場と人魚の国ではさまざまなものを見学した。特に驚いたのが海底火山の熱を使った蟹の養殖場。


「あれさ、ルキオから輸出している高級蟹じゃん?」

「お!気が付いたか!そうそう、その蟹はこっからルキオに渡してるんさ。物々交換ってやつだな。海底だと布やガラスが貴重品だから」

「そっか、海のなかだと蚕とかいないもんな」

「そーそー。かといって他所の国と貿易も難しいしな」

「海のなかじゃなぁ…」


 どうやったら水深200メートルの国と貿易できるよ。むしろよくルキオは出来てるな。


 そこからは観光案内みたいだった。

 城を案内されたり、市場に連れていかれたり。

 にしても意外だったのは食べ物が生だけではなく熱か加えられた物もあった。

 地熱を使ったらしいが、まさか海底で茹で玉子を食べることが出来るとは思わなかった。


「味は塩だけだね」

「そこはなぁー、どうやっても良い案が浮かばん」


 ちょこちょこと不便さを痛感する。


「ん?」


 視線を感じて振り替えると、模様持ちの男の人魚達がこっちを見ていた。


「あの人達ってもしかして…」

「ああ、俺と同じアケーシャさ。つっても同世代じゃないぜ。みんな相当の爺さ」

「え?」


 どゆこと?


「人魚は長命でな、だいたい13年に2人~5人くらい浜下り(陸を捨てる事)するんだけど、そのあと500年は生きるし見た目が若いままだからよく間違える」

「そういえば老いた人魚は見てないな」


 全部若い、最高齢が40歳位のはいたけど2人だけ。


「人魚は老いると泡になる。そして死ぬんさ、骨も残さず」

「そうなのか」


 なんだかもの悲しいな。


「他に見たいものとかあるか?今日なら何処にでも連れていけるぞ」


 見たいものか。

 国は一通り見てみたし、国内じゃない外海ってのも見てみたいかも。

 ここには有名な海溝があるって聞いたことがある。

 海溝という言葉は聞いたことあるけど実際に見たことはない。生で見るまたとないチャンスだ。


 「外海の海溝が見てみたい」


 するとアウソはマジ?と言いたげな顔をした。


「いいけど、そのままだと万が一の時があったら大変だな。仕方ない、ライハ足貸せ」

「?」


 なんだろうと足をアウソの方に向けると、懐かしの槍が水の中から浮かび上がるようにして形作られた。それを手にもって足の方へと向けると、とたんに水が渦巻いて足が飲み込まれた。


「うわっ!?」


 慌てて足を引き戻すと、違和感。


「え!?なにこれヒレになってる!!」

「ふふふーん!海の王の力の一つで人魚に変える能力。つってもお前の場合一時的だがな……って、聞いてないな」

「あ、ごめんごめん」


 あまりにも面白いから半分しか聞いてなかった。

 海溝周辺は海流が強いから今までだと流されて大変なことになるということで変身させられたのだが、いや本当にすごいなこれ。安定感が凄い。


「思ったよりも習得が早いさ」

「一応水泳習ってたからな」


 息の問題さえなければ結構泳げる方だと思う。


「じゃあ早速行こうか」


 と、アウソが言い掛けたところで一般人魚が慌てたようにアウソの元へやって来て何かを話した。

 するとアウソが血相を変える。


「なんだって!!?」

「なに?」

「凱獸の群れがこっちに向かってきているんだけど、危険予想域で子供が一人行方不明になってる!」


 凱獸は人魔大戦後、野生化してしまった魔物だ。

 海龍ほどではないが、それなりに凶暴で怪我人の被害も発生していた。


「しかも最悪なことに子供が行方不明になったところはヒビキスイ(特定の周波数の振動を消してしまう石)の丘だ。そこだと人魚のクリッキングは消されてしまうから音で探すことも出来ない…」


 アウソは人魚に向き合い言った。


「すぐに向かう。先に行ってくれ」


 人魚が頷き去っていく。

 すぐさま槍をトリアイナ形状に変化させて近くの岩へと打ち付けて何かを叫んだ。

 ギイイイインと鐘みたいな音と共に人魚にしか聞こえない音でアウソが指示を飛ばす。


 その指示で一斉に動く周囲の人魚達。

 大変なことになった。


「ライハ、悪いが手伝ってくれ!」

「わかった!」





結構時間が掛かってしまいました

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