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隊員は隊長で遊びたい③

翌日。


『戻ってない…』


ネコが器用に顔に前足を乗せて天を仰いでいた。


食欲は昨日の夜に落ち着いたが、体は元に戻らず。

それを見た三人の隊員がこそこそと部屋に侵入した。


『?』


なんだろうかと顔をあげたネコの目の前に差し出された魅力的な玩具達。


ゆっくり揺れるそれに思わずネコは釘つけになっていた。


「ネコさん。せっかくなので遊びませんか?」

「ネコさん用の猫じゃらし作ってきました」

「なんなら猫化には堪らない魔法陣開発してきました」

「どうぞ許可を下さい」


明らかに怪しい誘いだが、ネコはごくりと喉を鳴らした。


『いく!許可する!!』


よっしゃあ!!許可が下りたぞおおお!!!

と、隊員一同雄叫びをあげながらネコ連れて広場へと大移動。


他の部隊がなんだなんだと見守るなか、遊撃隊はネコと遊びまくった。

大きい猫じゃらしを振りまくり、猫パンチで吹っ飛ばされても結界を展開してたので即復帰。

魔法陣からはダミーの小鳥が飛び交い、それをネコが飛びかかり、興奮しすぎて隊員達に衝突しても結界のお陰で何事もなく遊び再開。

ネコはストレス発散でき、隊員達は思う存分ばか騒ぎして遊びたいという欲望を達成。

戦争中だというのにまるで楽園のようであった。




というのは遊撃隊だけで、外から見ている他の部隊達はというと。



「……新たな訓練?」

「本当に狂ってるな、さすがは狂撃隊…」



遊びの次元を越えた遊びに若干引いていた。


そしてその様子を静かに見守るラビ。


「………俺も混ぜろよ」


怒られると思った隊員達にハブにされてたラビがポツリと呟いた。












さらにその翌日。

昨日同様ネコさんと遊ぼうと、フィランダーが破壊された遊具のストックを持って医務室の扉を開いた。


「ネコさん!!お待たせいたし──」


ネコではなく隊長がお目覚めしてた。


『ああ、おは』

「ラビ副隊長おおおおおおおおお!!!!隊長がお目覚めにいいいいいい!!!!」

『えええ!?ちょっと!!?』


慌ててラビ副隊長を連れてきて診断してもらったが、なんと隊長が目覚めたわけではなかった。


「目覚めてない。これはネコだ」

「ネコさん?」

『ネコだよ、もぉー』


ユエを見やる。


「ネコちゃんだねぇ」


お墨付きをもらった。


フィランダー、少し後ろに下がり他の隊員と相談。


「え、どうする?続行していいのかこれ?」

「体は隊長ですけど中身ネコさんですからね」

「いやそれいうなら昨日も体は隊長でしたよ」

「そう言えばそうだな」


相談終了。


遊び続行の決定が下された。


「では、また何かあったら」

「ええ、よろしくお願いします」


ゆっくり立ち上がるユエを助手二人がサポートする形で帰っていく。

それに続くラビ副隊長。


ぽんとフィランダーの肩にラビ副隊長の手が置かれた。


「遊ぶのは結構だが、建物を壊すなよ」


バレてる。


瞬間的に血の気が引いたが、それ以上なにも言われなかった。

意外だ。


部屋に戻ろうとしているラビ副隊長の背中を見送る。


そのラビ副隊長の腕をピノが掴んで引き留めた。


「なん」

「よろしければラビ副隊長も一緒に遊びましょう!!」

「いや俺は仕事が」


断ろうとしているラビ副隊長の前に隊長(ネコさん)が現れた。


『今日はラビも一緒に遊んでくれるの!?やったあ!』


声が完全に隊長だったが(当たり前である)、なんだかんだと隊長とネコさんに弱いラビ副隊長が折れた。


「い、一回だけだからな!」


その後、ラビ副隊長交えて遊んだのだが。


「これ遊び?これ遊び?」

「なんか訓練になってない!??」

「結界甘いと通過するぞ!!気を付けろ!!」


隊長の体の性能が良いのか、ラビ副隊長が本気なせいなのかもはや遊びの次元を突破してもはや訓練になっていた。




それを遠巻きに見守る他の隊員達。


「やっぱり狂ってるなぁ…」

「だな…」


そんな感想を溢していた。











更にその翌日。


破壊し尽くされた猫じゃらしをピノと新しく製作し、みんなで医務室にやって来た。

全身ぼろぼろだが、遊びの代償だ。仕方がない。


「ネコさんおはようございます!隊長おはようございます!」

「お加減はいかがですか?」


だけど、今回は反応がおかしい。


『…あ、あの、ラビ呼んできてもらえる?不味いことになっちゃって…』

「あ、ネコさん」


いつものネコさんがいた。

とするとあの隊長は隊長か。

でもなんか違和感。


「どうしたんですか?隊長どっか痛むところでも?」


するとネコさんは首を全力で横に振る。


『エルファラに体の所有権移っちゃったの!!このままだとライハの体のままホールデンに突撃しちゃう!!』

「ははは、なんですかそれ。てかエルファラって、だれ──」


びくりと肩が跳ねた。


隊長からとんでもない圧が掛かる。

あ、これ隊長じゃないなと秒で察した。


くるんと隊長がこちらを向いた。


やばい。


「早く誰かラビ副隊長を!!!!!」


言い終える前に隊長が拳構えて突撃してきた。


「ぎゃああああああ!!!!」

「隊長!!落ち着いてください!!」

『ゲルダリウス殺す!!!!』

「隊長おおおおおおーーっっ!!!」






こうして、天国のような三日間が終わり、今度は地獄のような四日間が始まったのであった。





完。

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