隊員は隊長で遊びたい②
医務室に大量に運び込まれる食料をペロリと平らげるのを、隊長一同はなにも言わずに眺めていた。
先程スキャバードのリーダーだというユエに、猫化するのは問題ないと言われたので仕方なく見守っている状態。
本当は疑うのだが(昨日隊長の胸に剣を突き刺しやがったから)、ラビ副隊長に止められてしまっている。
それに、ラビ副隊長とユエの意見が一致したことも重要。
いわく、ライハが目覚めるに十分な魔力がまだ足りないから一番単純で楽な体に魔力が形作ってる。元に戻るには魔力を溜め込まないといけない。これからとんでもない量を食べるだろうから覚悟すように、とのこと。
いや、でもこれ以上食われたら備蓄が…。
他の隊長もハラハラとした様子で見守っていた。
しかしそれはネコさんも分かっているようで、突然スクッと立ち上がる。
『よし、動けるようになった』
スタスタと何処かへ向かうネコさん。
「あの、ネコさんどちらへ?」
『外』
ネコさんの後を付いてくる遊撃隊一同。
端から見たら異様な光景だが、目を離すわけにはいけない。
「あ」
そこで何かに気が付いたラビ副隊長が何故か皆の前に結界を展開した。
「ええ!!なにするんですか!!?」
「副隊長!!?」
悠々と罠に嵌まった魔物の死体の方に歩いていくネコさん。
「えーと、今から言っておくが、これからネコはあの辺りの魔物を食い尽くすだろう。見た目結構グロいから見ない方がいい」
いやいやいやいや。
ネコさんは平気でも隊長の体でしょあれ!!
「ちなみにライハも魔物食ってもなんの問題ない」
「さすが隊長」
「痺れます」
「俺達もっと頑張らないと」
隊員達の隊長株が上がった。
「お前ら食ったら死ぬから禁止な」
「副隊長読心術使えるんですね」
なんでやろうとしたことわかるんですかこの人。
流石ですわ。
ついでに隊員達の副隊長の株も上がった。
魔物を食らい尽くして満足したネコさんが戻ってきた。
『魔力が結構溜まったよー!』
「良かった良かった。あとは俺に任せて寝とけ」
『はいはーい』
丸くなって寝ているネコさんを見張り交代で見守る。
良いな。
やっぱりネコさんはこの部隊の癒しだ。
いつもの小さいフォルムも最高だけど、この大きいのもなかなか。
「フィランダー班長。あれ、見た目ネコさんですけど隊長ですからね」
「わかってるよ、ガス。だけど堪らないだろ?あれ」
「ええ、堪りませんね」
「ピノ班長!?」
いつの間にかいたピノ班長がネコさんを見つめている。
「あの…ピノ班長、その手に持っているのは?」
「ああ、これですか?」
左手を上げるピノ。
そこには見たこともないほどの大きさの猫じゃらしだった。
「いつかやってみたいと思って、作っていたのです」
「………」
「………」
いつそんな暇があったんだろう。
そう思ったが、フィランダーもガスも口を閉ざした。
何故なら二人も心の奥でやってみたいという願望があったからだった。
「明日もこのままなら、少しネコさんに聞いてみましょう。きっと許可を下さる筈です」
「ラビ副隊長には?」
す…、と顔を逸らすピノ。
「わかりました。明日を楽しみにしてましょう」
「ええ!楽しみですね!」
そう言えばピノの顔が輝いた。