復活!!魔王のクリスマス!!③
「おーい!ライハこれどこ持っていくんだ??」
七メートルもあるもみの木を一人で担いだシンゴが訊ねてきた。
「向こうの方にコノンとノノハラが設置する土台を作ってくれているから、そこの方にお願い。持っていけばコノンが固定してくれるから」
「わかったー!」
軽々と持っていくシンゴを見て、レーニォが燃えた。
「負けてられるか!!」
言うやもみの木の幹を掴んで持ち上げようとしているが、いくら神具があるからといっても体は人間である。
危うく倒れそうになるのを側にいたラビがすかさず浮遊の魔法陣で重量を軽くした。
「兄貴無理すんな。腰にクるぞ」
「おーきに、せやけどまだそんな歳じゃないわアホ」
「レーニォ。実はぎっくり腰って無理したら20代でも起こるらしいよ」
「それはあかん。道具屋のに笑われてしまうな」
よいしょと、ラビの魔法陣で軽くされたもみの木を指定された所へとレーニォが運んでいく。
その後ろを頭の後ろで腕を組んだラビがめんどくさそうに付いていった。
「ラビ」
「んあ?」
ラビが振り替える。
「ニックが少し話があるから仕事終わったら鏡に合図送れってさ」
「うええ、マジ? もー、めんどくさいな。わかったよ、伝えておいてくれ」
煌和から仕入れた重機もフル活用してもみの木設置に取りかかる。
勿論バッフォキラーも大活躍だ。
「言われた通り設置したが、飾りはどうするんだ?異様にデカイ星とかあるが」
タゴスが頼んでおいた大きな星を運んできた。
この星は勿論クリスマスツリーには化かかせない天辺に飾るやつ。
「これは後でネコに運んでもらうよ。どれどれ」
受け取って見てみる。
「…………細かっ!!」
カミーユがこの星を作ったのだが、あまりの細かさに手が震える。落としたら割れそうだ。
中にある魔具にオレの魔力を接続しないといけないのだが、なんというか、怖い。
少しのミスで台無しになりそう。
「入れないのか?魔力」
「入れるよぉぉぉ」
恐る恐る魔力を注ぎ込む。
「…思ったよりも入るな」
小瓶かと思ったら、実はプールでしたって感じの要領のでかさ。
どんどん入る。
「ニックが中に鏡入れているんだと」
「ああ、どうりで」
入るわけだ。
「こんなもんかな」
結構入れたから、魔力不足で停止することはないだろう。
あとはオレがちょちょいと細工。
「ネコー!!」
「んー??」
クリスマスツリーに飾り付けしていたネコが戻ってきた。
「これお願いできる?」
「ん!わかった!」
尻尾で星を固定して、クリスマスツリーの天辺に飛んでいくと器用に固定した。
「魔王様。各ツリー配置完了。飾り付けもあと二時間ほどで終わりそうです」
指示を飛ばしていたリゼが戻ってきた。
「サンタやトナカイも用意完了です」
「ありがとう」
虎梟が空から飛んできてタゴスへと着地。
脚の紙を見詰めている。
「ケーキやクッキーは大丈夫そう?」
「そちらもきちんと前日には揃うな。あとアンデルセン様から参加のお知らせだ。というか、周辺国みんな参加するみたいだぜ」
「うおおおお…、どえらいことになりそう…」
「ライハ!エルファラ達が来たよ!!たくさん鶏持ってきた!!何処に案内すればいい??」
「西の塔に素材班がいるからそっち案内して!!」
「わかったー!!」
みんなもぞくぞく集まってきたらしい。
さーて、もうひと頑張りだ!
クリスマス当日。
曇天を見上げ、久しぶりに精霊に話し掛けた。
勿論この時期といえば氷の精霊だ。それと水の精霊にも声を掛け、打ち合わせをしていく。
「よろしくね」
ささやかなプレゼントだけど気に入ってほしい。
「アールヴの資格があるという噂は本当だったのか」
城の屋上の扉が開いて、アンデルセンさんが外へと出てきた。
昨日来て、ケーキ作りをしている方面へずっと出掛けていた人だ。そうとう好きなんだな。ケーキ。
「風龍と縁がありまして」
「ははっ、まったく警戒していた私が馬鹿みたいだな」
隣にやって来たアンデルセンさんは塀にもたれ掛かり、クリスマスに彩られた城下を眺めた。
「招待してくれたこと、感謝する」
「いえ、こちらこそ。あんなに立派なもみの木をありがとうございました。おかげで素晴らしい祭りができます」
城の前の広場にはたくさんのクリスマスツリーが並べられている。
ドルイプチェのおかげで、国の隅々にまでツリーを配置することができた。これでみんなが同じようにクリスマスを楽しむことができる。
「君の事を誤解していた。魔族を束ねて王になるなんぞ正気の沙汰ではない、とな。しかもそれが勇者だったものが、だ」
「まぁー、それが普通の感覚ですよ。でも、そうですね。あの戦争で魔族側との関わりもありましたし、半人の方々も放っておけなかったんです。オレも人間ではなくなっちゃったってのもありますけど」
「………」
「未だに世界からの目は厳しいけど、それでも少しずつ改善されていえばいいと思います。だって、彼らは被害者だったわけですし。魔族側にも良い奴はいた。そういう人たちの受け皿になりたいんです」
いつか煌和のように過去の出来事みたいになればと思う。
混ざりものが当たり前になって、昔はこうだったんだよ、って教科書のページに掛かれる程度に。
アンデルセンは何かを考えている様子だったが、小さく笑い扉に向かって歩き出した。
「そろそろ私はケーキを準備しに向かうとしよう。君の企画したこのクリスマスを大成功させるためにな」