復活!!魔王のクリスマス!!②
扉が叩かれた。
部屋のなかにいる蒼銀の男はダルげに机の上に並べられた書類から顔を上げ、扉に向かってどうぞと肥を掛けた。
扉が開かれ、秘書であるピットが入ってきた。
「アンデルセン様、あの…」
「なんだ?」
いつも冷静なこいつが珍しい。
「メークストレイス王から、お手紙です」
なんだと?
思わず眉を潜めてしまい、それを見たピットが「ひっ」と小さく怯えた。
差し出されたそれを受け取り、封を確認する。
「万が一の為に呪い避けは致しました」
余計なことをとは思ったが、これも部下なりの気遣いだ。
封を開き、中の紙を手に取った。
僅かなざらつき。
荒い紙だと思い掛けたが、紙の中の銀色に光る欠片を見つけ、これは煌和の和紙だと気が付いた。
ふん。煌和と交流があるのか。
深く椅子に腰掛けながらコーヒーを飲み、丁寧に折り畳まれた手紙を開いて目を走らせた。
そこに書いてある文章を見て、アンデルセンはコーヒーを軽く吹き出した。
「アンデルセン様!!?」
慌てて近付いてきた部下を手で制止ながらアンデルセンは思いきり笑った。
なんだこれは。
あの野郎、始めてみたときから変なやつとは思ったが、これほどとは思わなかった。
腹を押さえながら笑い切り、ようやく収まったときには部下はどうすればいいのかオロオロとしていた。
「はぁ、まったく笑わせてくれる」
そこに書いてあるのはメークストレイスで行われる祭りへの招待状だった。
クリスマスという子供のための祭りで、そこでクリスマスケーキとやらの展覧会を開催するのだそうだ。
その時に使う一番の出し物に使うもみの木が欲しいという。
どこで俺がケーキが趣味で好物だと嗅ぎ付けたのか。
交通費&材料費は全てあちらさん持ち。
こっちはもみの木持って楽しいピクニックときた。
「取引内容が幼稚だな。まだ外交に慣れてないのか」
それはそうか。
アイツは確かフリーハンターの出だったはず。
まったく、よお。
「突き返しますか?」
「いいや。すぐに返事を返す」
「なんと?」
アンデルセンはニヤリと笑う。
「てめえらに本物を味会わせてやるってな」
ドルイプチェからとんでもない大きさのもみの木が二百本近く届いた。
「でっか…っ!?」
「ねぇ、あのもみの木」
ネコが示す方には白い物体。
「うわ…、あれユキサイもみの木(※葉っぱが秋頃から青白く染まる種類のもみの木。とても珍しい為輸出されない)じゃないか。なんつー貴重なものを…」
そのなかで三本ほどそのユキサイもみの木が紛れ込んでいた。
「魔王様、大成功ですね」
リゼがうきうきとしている向こうで、タゴスが裏があるのではないかと怯えていた。
「魔王様、こちらアンデルセン様からお手紙です」
「ん。どれどれ」
「ネコにも見せてー」
部下からドルイプチェ国王のアンデルセンからのお手紙が渡された。
羽根ペンと剣とトンカチが合わさったドルイプチェのマークが捺された蝋を割って中の手紙を取り出す。
「何て書いてあるの?」
「お前の民に本当の焼き菓子がなんたるかを教えてやるってさ」
「本当に作ってくれるの!?わぁー!嬉しいな!!」
紙にはケーキ代がズラーリ。
わぁー、頑張ろー。
「ささ!早く準備と飾りつけを!!時間はあまりありませんよ!!」
リゼが手を打ちてきぱきと指示を出し、タゴスが算盤片手に手紙にある材料費を計算始めた。
「よし、なんとか予定内に収まった。お前は中央広場に飾るモノを選んでおけ。お前しか本物を見たことないんだからな」
「分かった」