復活!!魔王のクリスマス!!①
オレがこの国のカレンダーを作り上げ(といってもこの世界では365日ではないし、二月は必ず30日ある。おもしろい)それを配布した時、つい、日本の時の同じようにイベントの記載をしてしまった。
カレンダーを見直して気付いた時に、後ろで書類の再チェックをしていたタゴスに気付かれた。
「クリスマス?聖火日ではなく?」
「えーと、それは…」
この国には元々聖火日というイベントがあったが、それは宗教で国を纏め上げるための作られたイベントで、今はもう無い事になっていたイベントだった。
「オレの元いた所の世界各地でも大きなイベントで、毎年やってたからつい書いちゃったんだ。消してくれて良いよ」
「いやいや、せっかく国を盛り上げるイベントならならないとだろ?で?どんな奴なんだ?またカボチャか?」
「いや、これはケーキだな。クリスマスケーキと鶏肉を用意して、ツリーを、えーと、ここもみの木あるのかな。とにかくこんな感じの木を飾り付けて、てっぺんに星を飾るんだ」
「ほうほう」
こんなと、身ぶりを交えての説明恥ずかしいな。でもタゴスは真剣に聞いている。
おそらく前回リゼに活躍されたから今回はとか思っているんだと思う。
「それで?」
「本来のものとは結構違っちゃっているんだけど、24日の夜に盛大にお祝いして、子供が寝静まったあとにサンタクロースが」
「サンタクロース?」
「赤い服着た小太りの白髭が凄いおじいさん」
眉をひそめられた。不審者じゃないよ?君どんな想像しているんだい?
スマホに写真あったかな?探してみよう。
「で、そのサンタクロースがトナカイに引かせたソリで空を飛んで世界中の子供達にプレゼントを配るんだ」
「………」
めっちゃ考え込んでる。
まぁ、聞いたこともないお祭りなら仕方ないよな。
「この前のハロウィンもそうだが、子供にお菓子とかプレゼント配るの多いな」
「確かに。でもオレも結構好きだったよ」
あの日、彼女にフラれるまでは。
今はよくわからない。
「とりあえず大きな木と飾りと鶏肉とケーキ、そして小太りの白髭男とソリが必要なのはわかった。探してみるが、お前ももう少しこう、イラストとかで分かりやすく教えてくれ。そうすればそのクリスマスとやらがきちんとできると思う」
「わかった」
というわけで、スマホに残った画像を漁りつつイラストをなんとか描きあげた。正直、ちょっと悲しくなったけど。
家族との写真と彼女との写真と友達との写真。
軽く鬱。
なんで単独で撮らなかったんだろう。
その必要なかったからな。
知ってるさ。
数日後。
「ねぇライハ。さっきタゴスがリゼに捕まっているの見たけど何したの?」
人型になったネコが扉を開いて困ったような顔でそう伝えてきた。
「え!?」
こそこそ動いていたタゴスであったが、そういうことに敏いリゼに捕まってしまった。
なんとなく、そんな気はしてたんだよね。
落ち込むタゴス。
「すみません見つかりました」
「いーよいーよ。多分遅かれ早かれそうなってたと思うし…」
リゼさん。オレが城を抜け出そうとすると何故かバレるんだよね。
どっかに監視カメラとかあります?
そんな感じでリゼが強制的に参加し、面白いとネコも参加してきた。
もう好きにしてくれ。
「それでは、クリスマス会議を始めます」
デデン、とそんな感じの効果音が聞こえた。
現在どこにいるのかって?会議室です。
総勢14名のこの国の上の方々。
それぞれ仕事があるのに引っ張り出してしまって申し訳ない。
「えー、それではクリスマスというものの説明を始めます」
今回はタゴスが指揮を執っている。
暗くした部屋の壁に写し出されたクリスマス資料。
いつの間にこんなプロジェクターみたいなの発明したんだろうか?
いや、わりと似たのあったからそれの応用か。
そこでタゴスが説明をしつつ、リゼがサポートを務め、ネコが返信しながらサンタクロースの姿を見せたりとしてなんとかオレの知っているクリスマスの内容をみんなに理解してもらうことができた。
「もみの木は見つかりました」
「ほんと!?」
あったんだもみの木。
「ただ、生産地がドルイプチェです」
「ああーー……」
オレと同じく部下から漏れる悲しい声。
そう。まだこの国はドルイプチェによく思われてないのだ。
未だに世界会議(年に数回ある連合や防衛に関わった国の環境やら経済やら魔物関連の会議をするやつ)で会うたびに睨まれているんだ。
怖いよ、アンデルセンさん。
ノルベルトさんとシェルムさんが混ざったみたいな人がずっとこっちガン見してるの。怖いんだよー。
第一回会議の時に喧嘩しちゃったしなー。多分それも原因…。
「……どうされます?小ぶりでも良ければパルジューナとかもありはしますが…」
リゼが訊ねてきた。
「……………………、あのさ、アンデルセンさん、何が好き?」
「え?」
「何がですか?」
汚い手だけどもうこれしかない。
「好物で釣ります」