メークストレイスのハロウィン祭誕生秘話②
「あの男、魔法は凄いが色々荒い…」
あっという間に地上に辿り着いたリゼだが、空中酔いで気分が悪くなっていた。
隣で二角駿馬が楽しそうにスキップをしていた。
つい先ほど、遥か遠くに見えるあの山から、この二角駿馬に使い捨ての風の翼をくっつけて飛んできたのだ。
ライハの駿馬に付けた翼の簡易版といわれたが。
「魔王様はよく酔わないでいられる…」
近くの木陰で魔族専用回復薬を服用して動けるようになると、風の翼が消えた二角駿馬を連れて王都へと向かった。
門で簡単に検査を受けると通してくれた。
「ルキオは特殊と聞いていたけど、予想以上ですね…」
こんなんでよく暴徒が暴れない。
まだまだ国は完全復活していないというのに。
「さて、城は、と」
視線を巡らすだけですぐにわかる赤瓦の城。
その下の塀の中に目的の人物がいる。
ザラキからの証明書も合わせて見せれば、あっという間に中にはいることが出来た。
もっとも武器も二角駿馬も預かりされたが。
「カリア・トルゴを探しているのですが」
「ああ。師範ならあそこの方です。今ちょうど訓練中だと思いますよ」
ここのルキオ人達は、角のある私を見ても何も驚かないし反応もしない。
獣人が多いせいだろうか。
「良い国ですね」
いつかはメークストレイスもこのように寛容な国にしたいものだ。
言われた場所に近付くと、水の音と共に、「はっ!はっ!」との声が聞こえてきた。
「武器の先まで意識を向けるよ!」
「「「はい!!」」」
そこへ行くと、紺色の髪を持つ義手のウォルタリカ人らしき大女が兵士達の訓練を見ていた。
もしや、この人が。
「お忙しいところすみません。カリア・トルゴさんでしょうか?」
その人が振り替える。
「ああ、こっちがカリア・トルゴよ。何か用かい?」
短く切り揃えられた髪が風で吹かれて揺れている。
その髪は腕の義手の中に織り込まれて、動きを補佐する魔力回路や神経の役目を果たしていた。
それにしても木製の義手とは、潮風の絶えないルキオ独特のものなのか。
「あっははは!そーか、ライハは元気よ?」
「ええ。少し忙しいですが、たまにネコさんと組手をしたりしているのをよく見ています」
「そうか、そうか。なかなかルキオを出なくなってしまったから、どうしているかと思ってはいたけど。元気なら良かった。やっぱり手紙だけだとねぇ、結構あいつ隠すから」
「わかります」
今でもたまに大切な書類がファイルの山に沈んで、みんなで掘り起こすことがある。
「それにしてもサウィンねぇ。うーん」
「思い当たりませんか?」
「いんや、サウィンはドルイプチェ周辺の、この時期にやるお祭りの事よ。あそこは季節が二つで、ちょうどその祭りが一年の終わりと始まりを祝う祭りなんよ」
「ドルイプチェのなんですか」
「でも、あの子ドルイプチェを彷徨いていた時にそんな祭りをしていた話は出てこなかったけどねぇー」
頭を捻るカリア。
ドルイプチェと言えば、ノルベルトとシェルムだが、現在どこにいるのか不明である。
スーパーノヴァの動きはバラバラ過ぎて追跡できないのだ。
「よかったらノルベルトとシェルム達が近くの宿にいるけど会う?」
とんだ棚ぼたである。
「お願いします」




