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魔王ライハは勉強中である.8

カコンと、ししおどしの音が聞こえる。


一歩足を踏み出すと、決戦前のホールデン場内とはまた違った圧に包まれた。

ピリリとした視線。

これは警戒の視線だ。

軽く気配探知するだけで、この誰もいないはずの通路に20近くも何かの気配を感じた。


こんな大昔の日本の館みたいな所だから隠れる所はあるのだが、そんな所に隠れている訳ではないみたいだ。


もっとすぐ近く。

光彩魔法なのか、忍者みたいに屋根裏とかに隠れているのかはしらないが、一つ気になることがある。


警戒はされているんだが…。


……どっちかっつーと、これは…。

オレが何かやらかさないかを心配して見張っている、に近いか?まぁ、そうか。

この国も魔族の血が混ざっている人が多いとはいえ、異国だし。なんなら作法もこの世界でも結構異質な部類になる。


「ノアさん」


「なんだ?」


「今更なんですけど、煌和の礼儀作法をあんまり知らないです」


日本っぽい雰囲気とシラギクさんの行動見てたからなんとかなるだろうと、割りと軽く考えていたけど、もし階級ごとに作法が違うのだとしたら逆に失礼なことになりそうで恐い。


内心冷や汗を流していると、ノアが突然「ブハッ!」と吹き出した。


え?何です?


そんな風の視線を向ければノアは明後日の方向を見ながら必死に笑いを堪えていた。「そういや君は変に真面目だったな」とのコメント付きで。


「いやホントなんですか?」


ようやく笑いの波が去ったノア。


「いやー、ほら、この世界を救ったにも等しい勇者さんがそんな事心配しているんだと思うと、面白くて」


心外過ぎる。


「礼儀は大事だと思うんですけど。特に今回はこの立場になって初めてお会いするんですから」


いわゆるトップ会談だ。

正式ではないとはいえ、下手なことは出来ない。


「大丈夫大丈夫。今回の君は客人だ。楽にしていてくれて構わない。と、いうか、本当ならさっきの攻撃もオレが対処しないといけなかったんだが、つい…」


「つい?」


「つい、鈍ってないかのテストに使ってしまった。すまないな。後で王にめっちゃ怒られると思うから許してくれ」


へらりと言う。


まじかこの人。いや待てオレ、思い出せ。

こいつはこういう奴だった。


まぁ、別にいいけどさ。

オレも癖で撃退しちゃったし。

今頃鬼畜ニックの元で悪夢を見せられている頃だろう。


「で?結果はどうなんですか?」


「合格だよ。むしろ前より更に強くなっててビックリしていたところだ」


そりゃそうだ。

まだうちの国では上に立つものは強くなければならないという風潮が強いからな。

今でも定期的にニックに頼んで修行させてもらっている。


「さて、ここだ」


扉の前に来た。

両開きの扉だが、デザインがまたすごい。

豪勢でどことなく和風チックなデザインが細かく掘られている木製の扉。


「あれ?ノアさんは行かないんですか?」


気付けば隣にいたはずのノアが少し下がったところで立ち止まっている。


「こっから先は俺は入っちゃいけないんだ。訳あって禁止令出されててね」


「なんかやらかしたんですか?」


「はははは、まーね…」


図星。

というか、あの視線はオレじゃなくてノアに向いていたのか。


ノアが離れた瞬間に感じなくなった。


「というわけで。ささ、遠慮なく」


遠慮なくって…。


「!」


扉が開き始めた。


仕方なくそのまま進むと、扉をくぐった瞬間に結界を通過したような感触。

扉の外から見た風景とは違う。


泉か?


足元の木製の廊下は滑らかな岩となり、苔蒸した中に大きな泉が湧いていた。

転移したような感じはなかったが。


「よく、いらしてくれました。 メークストレイスの王。ライハ殿」


泉の上で腰かけた一人の男がいた。

濡れる様子もない。


それはそうだ。

立った感触でわかった。

泉の上にガラスが敷かれているのだ。

結界なのかもしれないが。

あまりにも透明度がありすぎて、泉の上に座っているように見えているのだ。


原理が分かれば怖くない。

というより、東京タワーで経験している。


そのまま王の近くまで来ると、煌和の王、アサギリは驚きつつも嬉しそうな顔をした。


「まさかここまで臆さないとは思わなんだ。他の王達は一部を除いておっかな吃驚だったというのに。いやはや、ますます気に入った」


「恐れ入ります。…煌和王」


「アサギリでよい。私もライハと呼ぶが良いか?」


「構いません」


シラギクにどことなく似ている。

もっと背を大きくして、髪も伸ばした感じだ。


「座ってよいぞ。座布団等は勝手に作ってくれるから、好きな感じに座るとよい」


「それでは失礼して」


座ってみると、フワリとした感触。

ガラスじゃなかったか。

それにしても動きに連動して泉に波紋が広がるのは面白い。


おまけにいつの間にか目の前にお茶が置かれていた。

香りからして緑茶だが、いつの間に置かれていたのか。


気配もなかったし…、少し恐いな、ここ。


「あの会議以来か。君には色々お世話になった。一度ゆっくり話してみたかったのだ」


歳は幾つくらいだろう。

顔を黒い薄布で覆っているから分かりにくいけど、四十位に見える。


「ええ。私もです。裏で色々と助けていただきありがとうございました」


「ホッホッ、やはり感謝されると嬉しいものだ。この空間は時の流れがゆっくりだ。さて、何から話そうか」

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