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魔王ライハは勉強中である.6

挿絵(By みてみん)

外伝宣伝画

なんだこれ。


と、思わず思った。


車にしては妙な形をしているし、馬車にしては駿馬や馬、爬竜馬も走鳥馬もいない。


「どうぞ」


「失礼します」


普通の車のように乗り込んでみる。

内装は馬車だった。


向かい合う長椅子に腰掛ければ、それぞれ腰掛ける。

隣にはタゴス。

目の前にはノア、横にリゼ。


後ろを見てみれば、駿馬付の荷車にバッフォキラーが乗せられていた。


「出発してください」


ノアが合図を出すと車が動き始めた。

カチカチカチと音がする。

何の音だ?これ。しかも魔力を感じない。


「ノーブルの魔導車と違いますね。なんですか?これ」


ノアに訊ねるとクツクツ笑いながら座席を撫でる。


「これはカラクリの車。動力はバネ」


「バネ!?」


まさかカラクリ人形の車バージョンとは。

はぁー、この世界や元の世界で色んな車を見たけど、カラクリは初めてだ。


「どうやってバネを巻いているんですか?手動?」


「風力です」


と、リゼ。

風力??頭のなかにカラカラ風車が回るがどうやって回しているのかわからない。


「国内にカザヤという所がありまして、そこにたくさんの風車を建てています。風が羽を回すので、それを歯車で力を倍増させ、バネを巻き上げて道の端にあるあの建物に設置します」


示された方向にシンプルな建物があった。


「あそこでバネをこの車に着けて貰って、それを動力にして走ります。先の戦争で駿馬が足りなくなってしまったので」


モントゴーラが戦場になって壊滅してたもんな。

だいぶ復活してきているが、駿馬を育てるのも時間がかかるし、軍にも徴収されまくってたから仕方ないのだろう。


ゲートが設置されたとはいえ、あれは空港みたいなものだし、ホイホイ作れるものではない。

現在でも世界に七つしかないのだ。


その貴重な一つを所有させてもらっているオレの国。

ホールデン改めメークストレイスなのだが、いやはやあれ維持するだけでも本当に大変。

主に動力源の魔力補充がね、うん。


「最近じゃルキオからの輸入が多いな。あそこは風の国なので、今じゃ良い貿易相手だ。凄いぞ、風でも波でも何でもエネルギーにする。羨ましい」


ノアが頬杖着きながら言う。

確かにあそこは風が凄いから風車が大活躍だろう。


「アウソの言ってた新しい技術開発ってこれのことか…、今度詳しく聞こう」


海の中でも有能過ぎる親友に頭が下がる。


「あれ?でもそれならバッフォキラー必要ないじゃないですか?」


「バネやカラクリでも限界がありましてね…。まぁ、着けば分かるよ」
















着いたのは巨大な倉庫が並ぶ施設だった。

車から降りて案内された部屋に見覚えのあるものが並んでいる。


「重機あるじゃないですか」


目の前にあるのはショベルカーに似た機械だ。いや、カラクリか。


「これもバネが原料なんだが、力を使う分どうしても起動時間が短くてな。バネもただじゃないから金が飛ぶ飛ぶ」


「お金は大事ですよね…」


うちでも問題のひとつである。


向こうの世界では油使ってたんだったか。

かといってもこの世界では石油が少ない。なにせ例のスライムが喰いまくってしまっているから。

かといってあの蟲を養殖するのも抵抗がある。

危ないんだもんあいつら。


「で、やっぱり力仕事には駿馬が必要なんだが、数が足りない」


「そうしてうちのバッフォキラーを活用しようと」


「そゆこと」


確かに力だけ見れば象だもんこいつら。


「そういえば魔法とは、魔法陣とかどうなんですか?」


「はっきりいって良いか?」


「どうぞ」


なんだろう。


「うちは基本的に結界術しか使えないのばっかりでな。購入するにも──」


「金がですね。オーケーです」


個人的なら良いけど、大規模になると外せない問題だ。


オレもバッフォキラーレンタルで稼げるのは喜ばしいので止めはしない。どんどん使ってくれ。


「ということで、さっそく実験をさせてもらいたい」


わかりましたと返答し、バッフォキラーを荷車から下ろして指定の場所に移動させてもらった。


結果はかなり良かった。


細かい動作は出来ないが、物を運んだり、ロープと滑車を使って重いものを上げたりの仕事は重機を圧倒した。

何よりエネルギーは草なので、実に良い。


「あとは糞問題がなければな」


「そこは考えます」


生き物だし。

でも転移の簡単な魔具ならあるはずだから依頼すればなんとかなるかも。


とりあえずタゴスにそういう魔具探しをお願いしておいた。すると、レンタル量上乗せの提案をしてきた。

そうね、それは考えておくわ。


「せっかく来たし、国王に会っていくかい?」


「そうですね。前に会ったのはオレが国王になるって立候補したときの会議の時だったな」


バタバタしてて大変だった。


「そそ。実はもう連絡は入れているんだが…」


「先に教えてくれません?バカンス気分で来ちゃったんですけど」


一応礼装はタゴスが持ってるが。


「君なら良いと思って」


「せめて報連相はちゃんとしてください」


「ほうれん草?野菜の話かい?」


そして何だかんだと国王に会うことになり、タゴスにバッフォキラーと飼育員さんたちをお願いして、後で宿で落ち合う事になった。

その際。


「魔王の自覚で行けよ。へますんなよ。変なことするなよ!」


と、タゴスに念押しされた。

努力はします。


「じゃあ行こうか」


施設から出て車に乗り込もうとしたときだった。


事件が起こる。



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