魔王ライハは勉強中である.2
私用で小説の更新が1~2週間ほど途絶えます
「なるほど、それでここに派遣されたという訳か」
「お忙しいところ本当にすみません」
やって来たのはノアだった。
いやオレが呼んだんだけどね。
「いーよいーよ。君が全部背負ってくれたんだ。このくらいの手伝いもしなかったら本当の意味で天罰食らう」
ちょっと笑った。
管理人の権限を受けるとき、本物の神様と会うことになったのだが、前に会った時よりも明るくなっていた。
初めて会ったときは絶望のドン底にいたらしいからね。
そうそう、天使も戻ってて、神様の後ろに控えていたんだけど、ウロさんと姿も形も違うはずなのに仕草が似ているものだから思わず「ウロさん」と声を掛けるところだった。
そんなことお見通しなのか小さくニコリと微笑まれた。
「で、えーとどんな感じなのかな?」
「それが…」
頭の整理をするために纏めた書類を引っ張り出した。
かなり大きな紙に書いたので畳んでいるのを広げたら結構な大きさになるのだが、その紙一杯に文字が書いてあって「うっわ…」とノアが分かりやすく引いていた。
「えー…文字だらけで気持ちわる」
「気持ちは凄いわかります。ちなみにこれは問題が上がっているのを書き出したものなんですけど、問題点が多すぎて何から手をつけたら良いのかお手上げ状態で…、って基本食料問題なんですけど…」
「……確かに、これだけ見たらわけわからんな」
「オレの頭の中とおんなじ状態です」
「大混乱しているじゃないか」
大混乱してます。いやもうホントに。
取り敢えず問題の半数が食料問題。しかもこの食料問題はオレの知識不足が主な気がする。
「煌和って、魔獣や魔物の飼育ってどうやっているんですか?」
「…どうって、普通魔物の飼育はしてないぞ。魔獣はしてるが」
「魔獣でいいです。なに食べてます?」
「なにと言われても」
しばらく考えているノア。
「主に草食わしているが、そもそもそんなに頭数飼ってないし、というかなんだ?食料問題ってのは半人の方じゃないのか?」
頷く。
「今、家も服もあるんですけど、食料関係が凄い不安定で、半人達って基本何でも食べるんですけど長年世話していた魔物の世話もしたいらしくて許可したんですよ。ほら、なんか牛みたいなのとかいるんで放牧みたいな感じで出来るのかと思ったんですけど、あの、思ったよりも食欲旺盛で草を根こそぎ食べる勢いで追い付かなくて…」
「あーー、なるほど…」
確かに戦闘用に改良されたやつは良く食べると理解してくれた。しかもそうやって人間を食糧難に追い詰めようとしていた計画もあったらしく、実行はされなかったんだが、今になってオレ達がそのとばっちりを食らっている感じだ。
「……うーん。あ!ちょっと待っとけ」
と、ノアが出ていく。
ノアが戻ってくる間にタゴスが持ってきていた書類に目を通していると、ノアが戻ってきた。
「ちょっとその魔物達を見せてくれや」
視察にいくことになった。
「あ!ノアじゃん!久しぶりー!」
「ネコくん久しぶり。変わらないね」
「ノアもね!」
ネコ同伴で。
馬車に乗り込み、近くの魔物牧場へと向かう。
今ネコは城の中を彷徨きながら城に就職する新人研修をしたりしている。といっても基本癒し担当で、職員たちのストレスゲージを下げるのに大きく貢献している。
まぁ、たまにネコと戦場で会ったことある半人はビビりすぎて泣きそうになっているが、そんな人も半日経たずにネコ同好会に進んで入りに行くそうなのでうまくやっているっぽい。
話がそれた。
「ところで何でネコくん?」
「ネコは魔物の言葉が少しわかるらしいです」
うっすらとだけど、簡単な意思疏通はできるらしい。
「へえ!凄いね!じゃあ交渉は上手くいきそうかなー」
「交渉?」
「そう。もしいい感じにいけば煌和の人達の役に立ち、そして魔物の食料問題解決に貢献できると思うよ」
「それは楽しみですね。ちなみにどんな感じですか?」
魔物が相手だからあまり使い勝手は良くない。それでも役に立てるものとは一体なんだろうか?
「ものは試しって感じだけどね。実は今度、うちの国に大きな建築物を建てようとしていて、その為に大量の土地の雑草とかをなんとかしないといけないんだ。もしその雑草とかを食べてくれるのなら助かるなって」
「え、めっちゃ助かります」
「ついでに労働力ほしいなって、魔物力強いからさ、ちゃんと躾られているのなら是非とも完成までの期間貸し出して欲しいと思って」
なるほど、そういう使い方が…。
いやまて、そういえば戦時中盾担がせたり壁にしてたりトラックみたいにしてたな。
なんで忘れてたオレ。
「ノアさん流石です。この交渉全力で頑張りますね」
「君が頑張るのかい。王様なんだから命令すればいいだろうに」
「いやいや、一応ちゃんと説明とか許可とってからやりますよ。もしオレの知らないところでなんか使っているんだったら考え直さなきゃいけないし」
「君王様なのに知らないことあるの?」
「あります。めーーーーっちゃあります。もう本当に知らないことだらけで勉強中なんですよ色々と。いくら王様でもまだ信用されてないので」
実際何回か襲撃や毒物混入や暗殺未遂などがあった。
ほら、やっぱりさ、オレ戦時中は敵だったわけだし、そう簡単に信頼は得られないわけですよ。
「そうか…、大変だな」
「まぁ、信頼とかはいずれなんとかなると思いますけどね。何よりもまずは皆の生活を安定させないと」
生まれたときから不遇な生活を強いられていたんだ。
自由になった今、のびのびと生活してほしい。