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赤い薔薇の花束を君に.1

挿絵(By みてみん)


激しいノノハラとコノンの猛攻が繰り広げられるマグマの海は、地獄と化していた。

フリーダンから貸してもらった魔具、空道(カラミチ)によってマグマの海に落ちることなく、人体に害の無い空域に道を作り立ち回ることができているが、それでもコノンの攻撃は容赦なくノノハラの体力を奪っていった。


ノノハラの使える魔法属性は火焔、爆発、そして追加された浮遊であるが、今や火に耐性のついたコノンには通じるものではなかった。


一方、ノノハラは使えはするがそこまで耐性はあるわけではなく、せいぜい迎え火で威力を殺し、魔力の防壁で耐えるのみだった。

それでもダメージが完全に押さえられるはずもなく、ノノハラの体のあちこちには、火傷や出血が見てとれた。


それでもこうしてコノンと対等に戦えているのは、後方でノノハラに全力で支援魔法を掛けてくれているナナハチと、リューセ山脈の魔力に当てられて魔獣化してしまったコマの助けがあるからだ。


「コマ!!防御!!」


『ヴォウ!!』


攻撃型の獅子の姿から狼の姿に変化するや、迫り来るコノンの鍵爪に向かって遠吠えを発する。

音波壁と言うらしい魔力の波がコノンの攻撃に耐える数百枚にわたる盾となり、ノノハラ達に到達する前に動きを止める。


だが、この音波壁は遠吠えが続く限りでしか発動せず、強度もあまり無い。


ミシミシと音を立て、盾が外側から貫かれ、破壊されていく。


「ノノハラ、あのヒビいけるかも知れませんよ」


後方から聞こえるはずもない距離を魔法を用いてナナハチが伝える。


示したのは先程の攻撃によって生じたコノンの肘のヒビだ。幸いなことに、腕を守る布はノノハラの蔓火によって炭となって消えた。


そこから見える、僅かなひび割れ。


ナナハチから飛んできた魔法が着弾し、瞬く間に傷が回復していく。


「コマいくよ!!」


最後の音波壁が破られる瞬間、コマに合図を出しながら離脱する。コマもすぐさまその場から逃れ、遠吠えを止めた瞬間に獅子の姿へと変わると、ノノハラを追う。


空道を解除し、空振りしたコノンの腕に着地し駆け上がる。


ナナハチから強化の魔法が飛んでくる。

その力を全て腕に回し、ひび割れた箇所に切っ先を突き刺し、瞬焚(マタタキ)を発動する。


ズドンと音を立てて大爆発を起こし、ひび割れの内部が吹き飛んだ。ひび割れは広がり、コノンの腕は半分は崩れ落ちる寸前だ。


「!?」


コノンの腕から刺が伸び、ノノハラへと向かう。

それを横から獅子型のコマが刺に噛み付き、噛み砕いた。


「コノン!!」


声を上げる。だが、やはりコノンは何の感情を出さない。

ノノハラが何度も名前を叫んでも、ノノハラへ攻撃を仕掛けても、腕を断とうとしても、コノンは一切の感情を浮かべない。


巨大化している箇所は全てゴーレムと同じもので、コノン(本体)は別の場所に隠れている可能性も無いわけではないが、それでもこんなにも感じない。


怒りも、憎しみも、殺気さえ放たず攻撃を仕掛けてくる。


全てを捨てたコノンは、人形のように淡々と動いているだけだ。


悲しい。

そんなコノンを見て、ノノハラはずっと胸が痛かった。


コノンを置いてきてしまったという後悔が、ずっと心を蝕んでいた。


優しい子だった。

気遣いができて、みんなから愛される子だったのに。


ライハが消えた時のコノンも深く沈んでいた。

コノンのせいではなかったのに、何も出来なかったと泣いていた。


「はっ!」


長い尻尾が唸りをあげ、マグマの海に叩きつけられた。

大きくうねり、マグマの海に津波が発生した。


『ガルルルル!!』


長い尻尾は津波を発生させるだけにはあきたらず、そのまま弧を描いてノノハラへと放たれた。

尻尾はマグマの膜が張られ、音波壁では防ぎきれない。


「コマ!回避!!」


コマだけ先に退避させ、ノノハラは出来るだけの高質量の魔力の塊を前方に打ち出した。

赤い複数の魔力の塊は尻尾の軌道上へ配置され、ノノハラの着火にて連爆を引き起こした。


肌を焼くほどの高温の熱が、衝撃波となって襲い来る。

尻尾が爆発の衝撃を受けて僅かに逸れ、ノノハラの頭上を薙いでいった。


このまま戦い続けてもコノンは助けることができない。

焦りが募る。


首に下げてある、一つの神具が熱風を受けて煌めいた。


シンソウの鏡。

呪いを受けた相手の深層心理や過去へと潜ることのできる神具だ。

これを使えば、コノンの奥底へとノノハラは潜ることができ、真の意味で話し合う事が出来る。


だが、それには相手の心の揺らぎが必要だ。

心の揺らぎを波と見立て、飛び込んでいくのだ。


なのに、今コノンの心は凪いで、波一つ立ちはしない。


ここままでは、ノノハラやナナハチの魔力が尽きて終わってしまう。


その時、何処からか濃い魔力がコノン目掛けて飛んできた。

良い魔法の気配ではない。呪いの類いのものだ。


それがコノンの胸元へと当たり、ノノハラの視界一杯に見たこともない魔法陣が展開された。


赤く激しく瞬く魔法陣が突然コノンの中へと吸い込まれ、一瞬の間の後。


「ノノハラ!」


体に防御魔法が施されたと同時にコノンの体から衝撃波が放たれた。

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