目的は.6
召喚を重ねるごとにウローダスの力は強くなっていく。
だが、そちらの方に意識を向けているせいか、磨耗しているのが見てとれた。
めんどくさいが、使い魔でも与えてやるかと、死にかけていた二羽のオウムを手渡した。それに、風の精霊でも下ろして使役しろと命じた。
風の精霊を使えば、更に負担が減ると見越してのことだ。
だが、融合した天使の影響か、風龍というものが宿り、更に人の形を取った。嬉しい誤算だった。龍という種族は凄まじい魔力を持つ。前回の戦争で大損害を与えた竜とは違うが、並の使い魔よりも役に立つ。幸いにも記憶というものは持っておらず、使い魔として下ろされたために、共感の力も失っていた。
好都合だ。
意識が朦朧としているなか、こちらに都合の良い記憶を植え付けた。決して裏切らないようにするには、それなりの繋がりが必要だからだ。
と、そんな軽い気持ちでいた。
それを、何を思ったのか、ウローダスは本当の弟子のように使い魔に接し始めたのだ。
瀕死の双子を拾い、弟子にして育てているという仮初めの記憶に従っているのかは分からんが、壊したときに消えた筈の感情が戻ってきていた。
以前のとは少し違う別人格の様であるが、用心はしなければならない。
万が一にと、不要な記憶には鍵をかけ、合図があれば切り替えられるように細工をした。そして使い魔の体にはとある魔法を掛けておく。
勇者の隷属の魔法の杭となる魔法を。
それによって使い魔はホールデンから出られなくなったが、不都合はあるまい。
そしてこの世界にこれから張り巡らすための魔方陣の核を。
どんなに消されても、この使い魔が生きていれば何度でも復活出来るようにした。発動してしまえば必要ないが、これも実験の一つ。まさか体の中に核があるなど思いもしないだろう。
着々と準備を進めていく。
魔族の寿命は人間に比べて長い。
先の戦争での記憶が人間界で風化しているのを肌で感じながら、嘲笑った。
人間を売買する鷲ノ爪と取引し、人間の女と子供を山ほど手に入れた。
男は実験体と食料に、女は過去の記録を元に孕ませて半魔人を作らせた。
人の形に近い魔族と交わらせれば成功率は上がった。残念なことに魔力も力も純粋な魔族に比べれば使い物にならないが、使い捨ての駒にするにはもってこいだ。
弱体化した部族の子供を拐って洗脳し、こちらも前線に送り込んだ。そちらを陽動に、人間界の南の大陸を占拠して体制を整える。
魔界の方も崩壊の波が近いのを感じてか、一部を除いて全て協力的だ。あとは、切っ掛けが欲しいところだが。
そして、
「いったぁ…。んだよ、これ……」
そして、遂に、待ち望んだ存在が現れた。