目的は.5
おや?
思ったよりも長くなってるな。
より自発的に活動して貰うように、ウローダスに指令と、仮初めの記憶を与えた。
小さな主君の魂は『神』に取られ、『勇者』の中に捕らえられていると。それを捕らえ、魂を戻せば甦ると。
幸いにもエルファラの脱け殻は綺麗にしてチヴァヘナが保存してある。これからの戦争で、めぼしい者かいれば、好きにして構わないという取引をして一時的にエルファラの体を取り戻し、ウローダスに見せた。
天使の力を宿すウローダスには、すぐさまエルファラの魂が何処かで生きているのを感じ取ったのだろう。
すぐに信じた。
信じなくても洗脳すれば済む話だが。
神は絶対に何らかしらの手を打ってくる。
手っ取り早いのは、刺客を送ってくるだろう。
それに『勇者』や『エルファラ』の魂が入っているかどうかはともかく。せっかく“世界の膜”とやらを貫いて干渉する力を手に入れたんだ。使わない手はない。
それからは、まずチヴァヘナの能力を使ってホールデンの王を手中に納めた。ただでさえ男は女に弱い。それに妃の居ないホールデン王が拒む理由もなく、チヴァヘナの魅了も相まって即落ちた。
そして夜な夜なホールデン王を洗脳し、少しずつホールデン国内を改造していった。
周りの国に悟られないように結界を張り、中毒性の強い神聖魔法で満たした。
魔族にとって神聖魔法は毒だが、幸いにも前戦争時に手に入れた反転の魔法を使える者を解析し、身に付けておけば多少は動けるようになる魔具も開発した。
そして建国記の伝承とスティータ神信仰を利用して『移動』属性の魔術師を集め、優遇した。
勿論異世界からモノを呼びやすくするためだ。
同じ属性が集まれば、自然と成功確率が上がっていく。
そんな中、ウローダスが紛れていてもなんの違和感もなかった。
むしろ、魔法の技術が高く、天使の気配もあってかすぐに宮廷魔術師に配属されても文句を言うものはいなかった。
後は、研究や国の発展に必要という名目で、近くの異世界から『人間』を『勇者』と称して召喚した。
殆どランダムだったが、基準は居なくなっても気付かれない。むしろ、居なくなった方が良いとされている人間や疎まれた能力を持つ人間、この世界と波長が近い人間が多かった。
例外もいたが、少数だ。
召喚した勇者は色んなこの国にはない知識を持っていた。それをホールデンは吸収していきながら、成長していく。
小国だったホールデンは周りの都市国家を飲み込んで、南リューセ地方で最大の国になった。といっても、リオンスシャーレ国には及ばないが、目的は国の領地を広げることではなかったから大した問題はない。
先の作戦で、生け贄とする人間を、戦争する為の戦力を駐留させるのに必要な土地を確保できればよかった。
人間界でも少し異変が起きていたが、魔界と比べたら微々たるものだ。
益々濃くなっている魔力が原因で魔物化している生き物を勇者に駆らせながら、魔物の強化実験を行った。
魔界のマクイ木の種は、こちらの生き物にとって覚醒剤のようになるらしく、種を長期的に食べさせると魔力に異常をきたし、強制的に強くなることが判明した。
これは使えると、種を生産しつつ、実験体を野に放った。
本来の原種そっくりな容姿の覚醒体はすぐにこの世界に馴染んで活動範囲を広げていった。
これは面白い、人間に使っても効果があるのかもしれない。
ある程度育った勇者を実験体として活用した。
勇者もマクイ木の種を食べさせれば少しずつ魔物化の兆しが見える。
しかし、やはり途中で黒斑の病が始まるので、その症状が出れば喰った。
味は極上。
これはいい。
戦闘面では使えないが知識面で使える勇者は特別に長生きさせた。銃というものは革命的だ。
魔法の応用が狭められるが、魔力がそんなに無いものも扱えるのがいい。
召喚した銃を産み出した勇者の二人のうち一人に逃げられたのは誤算だったが、そんなの些細なことだ。驚異にはならないが、次の召喚からは簡単に逃げられないよう細工をしておくか。