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INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~  作者: 古嶺こいし
第八章 駆け抜けた先
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第三の門番.16

前方、天井の出口付近に魔力の塊がある。

それはとてつもなく大きな鏡で、十枚以上はある鏡が出口に蓋をするように立ち塞がっていた。


「シラギクさんいけますか!?」


「………。この大きさ…。一枚ならいけそうではありますが、複数枚ともなると、少し難しいです…」


「ですよねー!!」


そうこうしている内に壁と化した鏡は近付いてくる。


── 雷に光印の指定をしてみろ!!今のお前なら飛べるはずだ!!


と、再び突然のエルファラ助言。


「え! 弓矢以外にも適応できんの!?」


早く教えてよ!!

慌てていつもの矢に施すように、己の魔力へ“印”を刻み付けるように光印ノ矢の魔力を組み込んでいく。


本当にこれでうまくいくのかという不安もあったが、思案している時間などない。


「はっ!!」


手から放たれた雷は真っ直ぐに飛んでいき、扉の目の前で複雑に枝分かれしながらいくつもの鏡を大回りし、裏側へと辿り着く。


飛べ!!!


次こそは、と、いつもより多くの魔力を流し込んだ。

体が突然目も眩む程に輝き、パンッと軽い破裂音と共に景色が一変した。

あんなにも明るかった景色は夜空に放り出されたのかと言わんばかりの深い紺色とラメが散りばめられた空間にいて、後ろを振り返ってみると、あんなにも神々しく煌めいていた魔力の溜まり場であった浮遊体は、黒ずんでベコベコに凹み、いつかテレビで見た隕石の展示物へと成り果てていた。


(ハンマーでボコボコにした鉄塊みたい…)


まぁ、そうしたのは主にオレなんだけれども。


『───!!!!』


獣の唸り声にも似たピエロの声。


「!!!  うぉおおおおお!!!!??」


突破した巨大鏡が何千にもバラけ、それぞれが独立した鏡となって、物凄い勢いでこちらへと突撃してきた。

咄嗟に前方へと雷を飛ばしつつ叫んだ。


「ネコ避けて!!避けて!!」


『わかってるっつーの!!!ライハも何とかしてよ!!!』


「飛べるようになったら飛ぶから!飛べるようになったら飛ぶから!!」


鏡を視認した瞬間から、もう一度飛ぼうとしたのだが、まさかの発動が出来ないという。飛んだ距離が長すぎたのか、それとも発動するまでにチャージする時間が必要なのか。


「しつこい!!」


すぐ隣でアレックスの攻撃による大爆発が発生。


そして今気が付いたが、鏡からはびっしりと黒い子供の腕が生えていて、それらがネコを捕まえようと手を伸ばしていた。


「きもちわるっっ!!!」


石を裏返したらおぞましい数の虫を見付けてしまった気分だ。


「あ、こいつら俺の魔法効くっぽい。よかったー」


と、アウソが言う。なんだと思ったら、アウソが手に向けて海水を放つと、手は『アッー!』みたいな仕草をして消えていっていた。


なんで?


「え、俺のは効かないんだけど」


ユイのは相変わらず効果が薄いらしい。

なんでだ?塩が効いているのか?


「……あ。おいアイツが来るぞ!!早く飛べるなら飛べ!!ライハ!!」


「ニック!?」


突然ニックが顔を上げて警告を発した。その時、ニックの目に違和感。だが、もう一度確かめようと思ったその時、すぐ近くの鏡に人影が写ったのを視界の端で捉えた。

水から飛び出してくるように、ピエロが影から飛び出してこちらへと迫る。


だが、ピエロの手がオレまで届く前に、その姿は光に飲まれて掻き消えた。


「良かった飛べた」


心臓がドッドッドッと、早鐘を打ってる。ギリギリだった。


鏡の群れは遥か遠方。

まだこちらの居場所は把握できていないらしい。


「ネコさん!私を前に! 穴を穿ちます!」


『ん!』


シラギクが前方へとネコが連れていく。目の前には鏡の壁だ。

先程のピエロの鏡とは違う。こちらの空間へと来るときに突破した壁だった。


「せやっ!」


シラギクの奮った白い刀から斬撃が飛び、正三角形に切り目が入る。そして再びシラギクが通常の刀と白い刀で勢いよく突き刺さすと、意図も簡単に壁は砕け散り、穴の中へと移動した。


懐かしの全方位万華鏡空間へと戻ってきた。

が。


「…あれ?ちょっとこれヤバくない?」


きらびやかな景色が、一瞬暗闇に包まれ、次の瞬間にはギョロリと見渡す限りの鏡面にピエロの目が。


『そう簡単に逃げられると思うなよおー!』


そしてまたしても歪な腕が生えてくる。ホラーだ。


「あわわわわわ」

「どどどどどーするのコレェ!」


双子がパニック寸前に陥っている。

アウソに至っては苦手なホラーの登場で顔色が青。


「ちょっと静かにしててもらえませんかい?」


とはいえ、雷で一掃した後何処に逃げれば良いのか検討もつかない。正直飛ぶにしても扉の前が理想的なのだが、まだ飛べる気配はなく。そして来るときはニックの魔力を頼りにしていたため、帰り道が分からない。


とするならば一体どうすれば。


「双子!!杖寄越せ!!」


「あ、はい!」


双子が投げた杖をニックが掴み取る。


腕越しにニックの怒りが伝わってきた。

物凄い激怒してる。


「よくも俺の体を好き勝手に弄くり回してくれやがったな!!だが…」


「!」


ニックの右目の色が銀色になっている。

いや、あれは鏡か?瞳が全て鏡へと変化していた。

口許には悪人かよと突っ込みを見れたくなるほどの笑みが浮かんでいる。


「おかげで面白い物が手に入った。覚悟しろよ、お前は自分の能力で追い詰められるんだ」

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